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7話 ロロナ式

――――――――――――――――――――


 今、自分はポーション作成の為にセレナさんの家にいる。


  ()()()()()()()()()()


 あ、ありのままに今起こっている事を話すぜ?……(以下略



 セレナさんの家はこじんまりとしていて、それでいて全然不快じゃない、ログハウスのような家だった。

 蔵書でいっぱいの黒檀(こくたん)の本棚や、所々にハーブや瓶詰めの乾物が並べてあったりして、まさしく錬金術師の家という感じだった。


 それよりも、部屋全体がセレナたんのめっっちゃ良い匂いがするよぅ!そして部屋の奥のベッドが気になる!!


 というかセレナたんって家持ちだったんだね。


「元々はお母さんのアトリエだった。あまり掃除が出来てなくて散らかってるけど」


 セレナさんのお母さんは高名な錬金術師だったそうだが、かなり前に流行り病で亡くなってしまったらしい。それからというもの、セレナさんはお母さんが残した家と錬金術を継いで、一人で守っているそうだ。

セレナたんマジ健気。


 無垢ポーションは、セレナさんが調合した解毒薬を増やす為に使われる事になった。

 なんでも無垢ポは、同じ品質のポーションの効果を高めたり、複製したりする事が出来るらしい。

 凄いぞ無垢ポ!


 じゃあ無垢ポーションを量産して、他のポーションを複製すれば大儲けじゃん!とか考えたけど、どうやらそんな上手い話では無いらしい。

 無垢ポーションによる複製は、必ず一定量以上の『原液』が必要らしく、無垢ポで複製したポーションを更に複製しようとしても出来ないそうだ。


 これを錬金術用語で最大希釈率(さいだいきしゃくりつ)と言うらしい。

 低級解毒薬(レッサー・アンチポイズン)の最大希釈率は10。つまり1瓶の低級解毒は無垢ポを使って10瓶まで複製出来るという事になる。


 ちなみに、セレナたんに無垢ポーションを20瓶提供したら、めちゃくちゃ感謝された。


 そしてこれがアンチドーテのポーションか。何気なく鑑定板をかざしてみる。


――――――――――――――――――――

(オルタナ)解毒薬(アンチポイズン)(低級)


解毒薬(アンチポイズン)の効果を模倣して合成された偽薬。

効果は低級解毒薬(レッサー・アンチポイズン)と同等だが、使用する原料が安価で調合が容易。


【希少度】D

――――――――――――――――――――


 ん?(オルタナ)


「セレナさん。セレナさんが作った解毒ポーションって、普通のポーションじゃないんですか?」


「ッ! ど、どうして分かったの?」


 あれ?なんかめちゃくちゃ動揺している。


「いや、昔見た事がある解毒薬と少し違うので、原材料が違うのかな?と」


「ッ!! そ、そんなはずは!色も匂いも効果も全部オリジナルと同じはずなのに……」


 あ、やばい。これ何か地雷踏んだかも。


「セ、セレナさん!す、すみません、自分デリケートが足りませんでした!!あの、無理に言う必要は無いですよ?」


 沈黙、そして見つめ合う二人………


 ……なんか言ってよ。


「あ、あの……」


「……いいよ?」


「え?」


「いいよ。ナナサキは私の弟子だから、特別に教えてあげる。……それにしても、ふふふ。『デリケート』って、それを言うなら普通『デリカシー』だよ。

 あははは、確かに発音は似てるけど、意味全然違うよ」


 あははは、とお腹を抱えて笑う彼女に、こんな表情もあるのか、と思った。

 とりあえずは、この世界でも『デリカシー』と『デリケート』の発音が似てる事に、感謝するだろ。


 セレナさんの話を聞くと、錬金術は基本一つの素材に対して、出来上がる薬は決まっているらしい。


 だから『ヨモギモドキ』からは『無垢ポーション』しか作れないし、逆に言えば『無垢ポーション』を作ろうとすれば、絶対に『ヨモギモドキ』を使わなくてはいけないのが錬金術の基本の法則なのだそうだ。


 しかし、セレナさんの錬金術の流派『ロロナ式』はそんな錬金術の常識を打ち破ってしまった。


 すなわち、いくつかの全く別の材料から抽出された成分を調合して、オリジナルに限りなく近いポーションを作ってしまったのだ。


 控えめに言って天才じゃね?


 そして自分のポーション作成に思わぬ弱点がある事が分かってしまったわ。『アイテムをポーションに変える能力』ではポーションは『正しい材料』からしか作れない。

 能力で強力なポーションを作りたかったら相応の素材が必要になるという訳だ。

 棚ぼた的な状況だけど、セレナさんの弟子になれたのはラッキーだったと思う。


「……ごめん。ナナサキは弟子だから、本当は初めに教えるべきだった。ただ、私は偽薬を売ってお金を貰っていた時期があったから、言い出せなかった。……ごめんなさい」


 偽薬で作ったライフ・ポーションは、正確に言えばライフ・ポーションでは無い。そのポーションに良く似た効果の別の何か、という事なんだろう。そりゃライフ・ポーションだと思って買った人はいい気はしないわな。


「まあ偽薬といっても効果は同じなので、良いんじゃないですか?ジェネリック薬みたいなものでしょう」


「ジェネリック? はわからないけど、どうして偽薬の効果まで知っているの?」


 さて困った。メガネから貰ったチートアイテムの事、セレナさんに伝えるべきか。

 いや普通に考えたら、チートアイテムの情報なんて無闇やたらに教えないほうが良いんだろけど。

自分の家の秘密まで教えてくれたセレナさんに隠し事をするのは、かなり不誠実じゃ無いだろうか?


「ふふっ 、冗談。ナナサキは私の弟子だけど、弟子だからといって私に秘密を全部話す必要は無いよ。だから、ナナサキは何も言わなくても大丈夫。ただ、いつか聞かせて欲しいな」


「……お気遣い感謝します」


セレナたんマジ天使(エンジェル)


 ポーションの複製は、思ったよりも単純だった。というか、無垢ポーションと解毒薬を混ぜるだけだったしね。


 混ざりやすさによって混ぜる順番があるそうだけど、多分焼酎のお湯割りがお湯が先というのと同じ原理だろ。


「ナナサキの作った無垢ポーションはとても品質が良い。これなら安定した解毒薬(アンチポイズン)が作れそう」


「いえいえ、お役に立てたみたいで良かったです」


「ナナサキ、でもこれって……」


『バオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』


 突然、地鳴りのような鳴き声が響き、直後にズドンと地面が揺れた。


 考えるまでも無い!あいつが蘇ったんだ!


『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオ』


 ドン、ドンと連続して叩きつけるような音が聞こえた。小さいが人の悲鳴のようなものも聞こえる。

トレントの鞭のように太い枝が頭をよぎった。


 無意識に自分は、壁に掛けられていた狩猟用の弓に手をかけていた。


「ナナサキ!ダメ!私達は錬金術師にはモンスターと戦う力なんて無いよ!」


「まあ、遠くから援護に徹するので大丈夫ですよ」


 必死な顔をしているセレナさんに比べ、自分はまだどこか他人事だった。


「ナナサキ、これを持っていって」


 セレナさんが渡してくれたのは色とりどりの小瓶だ。


「セレナさん、これって?」


「お母さんが作ったポーション、きっと役に立つから」


「ナナサキは弟子だから、だから絶対帰ってきて」


 これ、きっと形見なんだろうな。セレナさんはやっぱり良い人だ。自分はこの人の弟子になれて良かっただろ。


「ありがとうございます、師匠」


「!! うん!」


「ところで、この棚にある薬草、少し分けてもらっても良いですか?」


 安心して下さいよ師匠、勝利の方程式は既に見えてます。


【戦利品】

ポーション

・D:偽・解毒薬×1 ←New‼︎

・セレナさんから貰ったポーション(いろいろ)←New‼︎

アイテム

・セレナさんから貰った薬草 ←New‼︎

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滅茶苦茶嬉しいです!!


物語もだんだんと盛り上がっていくので、楽しんで貰えたら幸いです。

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