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2話 異世界といえばネコミミ!

 スキルで雑草から簡単にポーションが作れるなら、それを大量生産して売りまくれば大金持ちじゃね?


 雑草ポーションで異世界成り上がり!


 そう考えていたのだが、残念ながら無垢ポーション(初級)の買取価格はかなり低かった。売っても二足三文にしかならないそうだ。


 まあ、良く考えたらそれもそうだよな。『無垢のポーション(低級)』って、要するに薬草(ヨモギモドキ)の煮汁だし、ヨモギモドキ自体も貴重って訳じゃ無さそうだしな。


「ポーションは錬金術ギルドの利権にもなっているので、個人が調合したものは市場に出回り難くて、値段も上がりにくいんですよ」


 ま、そんなに美味い話はないよな。同じ効果の薬だったら、誰だって怪しげな個人商店より、信頼のある薬局を選ぶという事だろう。


 しかも個人が大々的にポーションを売ろうとすると、錬金術師ギルドがあの手この手で妨害してくるそうだ。まあギルドって本来そういう利権を守るための組織だしね。


 しかし、錬金術ギルドなんてものがあるのか。


 この世界では薬は医学では無くて、錬金術の範疇なんだろうな。というか中世のように医学と化学(錬金術)がごっちゃになってるのだろうか?後者の方が現実味がありそうだよな。


 どこかの漫画のせいで錬金術=ものつくりってイメージが強いけど、錬金術(アルケミー)って化学(ケミカル)の語源だし、どちらかといえば薬品を扱う職業なんだよね。


 いずれにせよ錬金術ギルドか。いつか訪ねてみたいなぁ。


 キャラバンの商人はルーデンスさんといって、日に焼けた彫の深い顔と、刈りそろえられた赤系の短髪が、几帳面さとワイルドさを両立させているナイスミドルだ。整えられた顎髭がとってもダンディで、思わず男の自分でもドキリとしてしまうようなイケメンである。


 ルーデンスさんはこの商隊を取り仕切る番頭だ。商人の場合、トップの商会主人は貴族が名義を貸すそうなので、番頭のルーデンスさんがこの商会の実務上のトップのポジションという事になる。


 商会の名前はゴルデン商会というらしい。


 商会主人はゴルデン様という貴族は、この商隊の目的地のシルバーレイクという都市を治めている辺境伯だそうだ。辺境伯は貴族の中でもかなり位が高く、ルーデンスさんも実際に会って話しをした事は無いみたいだ。


 商会は頭取にゴルデン様がいて、幹部にゴルデン様の配下の貴族達、その下にルーデンスさんのような番頭がいるという構造になっている。番頭は各々が自分のお店を任されており、ルーデンスさんにも数十程の部下がいるらしい。


 ルーデンスさんは、銀行でいうならゴルデン銀行のルーデンス支店の支店長といったところかな?


 異世界の商人がどのくらいの地位なのかはわからないが、平民の中では最上位に近いポジションだと思う。つまり、交易プレイを目指す自分にとっては、ゴールとなるポジションという事だ。


 そして、彼は異世界で野垂れ死にしかけていた自分を助けてくれた、命の恩人でもある。服とポーション以外は食料もろくに持っていないような怪しさ満点の男を、旅は道連れと快く受け入れてくれたのだ。


 ルーデンスさんとの話は意外と盛り上がってしまった。自分があわよくば知識チートをしてやろうという考えで旅の学者と名乗ったのが失敗だった。色々質問されて困ったよ。ネットで拾ったウンチク知識でなんとか繋いだけど、大丈夫だっただろうか?不信感を持たれていなければ良いけど……


「番頭!このまま進めば、次の村に着くのは日の入後になりそうです」


 御者代で手綱を握っていた若い女の人が、僕達の方を振り返って言った。彼女はミラジェーンさんといって、なんと猫の獣人だ!頭の上にピョンと乗った猫耳が可愛らしい。


 ルミナス様ナイスです。


 ただ惜しくらむとすれば、出会った際に少しばかり興奮して前後不覚になってしまい「リアル獣っ娘!モフモフさせちくれ‼︎」と言いまくったせいで、若干の不信感を持たれてしまった事か……

 残念ながら今はフードを深くかぶって、トレードマークの獣耳を隠してしまっている。


「仕方ない。夜に村に入る訳にもいかないし、近くの開けた場所で夜を明かして明け方に村に入ろう」


「承知いたしました。それから、このような得体のしれない男と同じ馬車に乗るのは危険です。こんなのを番頭の馬車に乗せるなんて……」


 訂正。ミラさんには結構な不信感を持たれてしまったらしい。


「やめなさい。彼は対価を払って馬車に乗っている、歴としたお客様です。ゴルデン商会の番頭秘書が、客人にそんな言葉を使ってはならないと心得なさい」


 対価、といっても無垢のポーションを数本しか支払っていないけどね。ルーデンスさんから聞いた無垢ポーションの買取価格だと、馬車の相乗り運賃には絶対に釣り合わない筈だ。馬車に乗せてくれたのは殆ど彼の温情と言って良い。


 交易プレイをするなら、この世界の物価も後々学んでいかないとな。


 しっかし、ルーデンスさんイケメンすぎるだろ。自分が女だったらキュンコロされてたね。


 異世界の商人なんて強欲に手足が生えたような守銭奴ばっかりだと思ってたけど、おかげでイメージが変わりました。ごめんなさい。


「部下の非礼を謝罪いたします。ほら、ミラも謝りなさい」


「ぐっ……申し訳ありません」


 ミラさんが渋々と言った感じで頭を下げる。ルーデンスさんは苦笑いだ。


「すみませんね。あれでミラもナナサキ様を本気で拒絶している訳じゃないんですよ?亜人の身体的特徴は蔑まれる事はあっても、褒められる事はあまり無いので、初対面から好意的だったナナサキ様に照れてるんです」


「ち、違います!勝手な事を言わないで下さい!!」


 ミラさんは顔を真っ赤ににして、この話は終わりとばかりに前に向き直ってしまった。

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