表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/33

1話 アイテムをポーションに変える程度の能力

 以上が自分が異世界転生するハメになった経緯である。


 なに?くだらない?


 自分でもそう思っているんだからやめてよね。


 とにかく、女神達のワガママによって異世界に転生させられてしまった。元の世界には……多分帰れないだろう。ミルズ様も『元の世界の肉体は消滅させた』とか言っていたからね。


 この世界で生きる覚悟をするしかない訳だが。さて、どうしようか。


 まずルミナス様の設定に従うなら、『勇者』として生きるという選択肢がある。危険は大きいが、達成すれば物語の主人公みたいに英雄にだってなれるだろう。


 だが、正直に言ってこの選択肢は無いと思う。何回もコンティニューが出来るゲームならともかく、 死んだら終わり(残機ゼロ)の現実世界では勇者を目指すのはリスクが高すぎる。


 もう一つは、異世界の市民A(モブ)さんとして生きるという選択肢だ。こちらは世界を救う派手さは無いが、自分の好きなように生きる事が出来るだろう。


 僕個人としては市民Aさんを強く推したい。この世界がゲームだとして、自分の好きなように生きられるのはオープンワールドRPG(ロールプレイゲーム)の醍醐味だ。


 唯一懸念があるとすれば、世界にタイムリミットがあるパターンか。勇者が不在でもシナリオは勝手に進行していて『気が付いた時には世界が崩壊してしまいました』という場合だ。


 ただしこの可能生は極めて低いと思う。この世界を作ったのがルミナス様だとして、彼女の目的は世界を壊す事ではなく、転生者に自分の作ったワールドを攻略してもらう事の筈だ。転生者がシナリオに参加しなかったからといって、即世界を崩壊させますとは考え無いだろう。

 むしろ下手にゲームをクリアしてしまった場合、用済みとばかりに世界ごと消してしまう可能の方が高いと思う。


 現実世界でゲームクリアのファンファーレを聞くのは御免である。なんたって、クリア後にもその世界が続いているとは限らないのだから。


 もしもルミナス様が、キャンペーンシナリオしかRPG(ロールプレイゲーム)の楽しさを知らないのなら、是非とも交易プレイの楽しさを知って欲しいと思う。


 目指せ!異世界成り上がり生活!


 あわよくばルミナス様がメインシナリオを忘れてくれれば、自分もこの世界も幸せだろう。

勇者がイベントを進めない限り、世界の平和は保たれるのだ。


 その為には、まずは生活の基盤を固める事か……


 まあ、幸いにして自分にはガイゼン様から貰ったチートがある。


 胸ポケットから黒い板取り出す。このスマホっぽい板はミルズ様から貰ったもので、ガイゼン様と電話のように使っていたアイテムだ。どうやら究極鑑定とかいう魔法がかかっているらしく、人や物の鑑定が出来るらしい。


 手に持ったくたびれた雑草の束に鑑定スマホをかざすと、黒曜石みたいにツルツルした表面に青白い文字が浮かび上がった。



―――――――――――――――――――


ヨモギモドキの束


 何の変哲も無いヨモギモドキ草の束、野草として食される他に、滋養(じよう)効果があり低級ポーションの材料になる。

注 めちゃくちゃ苦いです。


【希少度】E

―――――――――――――――――――


 アイテムの説明が割と作り込まれているのは、多分ルミナス様がハマっていたゲームの影響なんだろうな。

 テキストから察するに実際に文書を作ってるのはミルズ様っぽいけどね。というかミルズ様、全部のアイテムにフレーバーテキストを入れたのかよ。


 いや、ルミナス様に無茶振りされたのか……

 あの人も割と苦労してるよな。


 ちらりと相席のおっさんを見る。(イビキ)をかきながら気持ち良さそうに寝ていて、しばらくは起きそうにない。


 深呼吸して精神を整えると、握りしめたヨモギモドキの束に向かって、「ポーション作成」と呟いた。


 すると薬草の束は一瞬だけ小さく発光して、手の中から消滅した。いや、手の中にはヨモギモドキの束ではなく、いつの間にか薄緑色の魔法薬(ポーション)が入った小瓶が握られていた。


 そう、これがガイゼン様から授かった権能(スキル)。『ポーション・マイスター』の能力だ


 現れた魔法薬(ポーション)に、ほっと息を撫でおろす。やっぱり能力の効果に間違いは無いようだ。さっそく新しく入手したポーションを鑑定してみる。


――――――――――――――――――――


無垢のポーション(高品質)


  純粋なマナを蓄えたポーション。特に効果を持たないが、全てのポーションのベースになる。触媒によって蓄えられるマナの総量が異なる。最も簡単な触媒はヨモギモドキ草の汁を煮詰めて作ったもので、基本的な低級ポーションの材料になる。


最も品質の良い無垢のポーションは使用者の魔力(マナ)を活性化し、僅かだが肉体を再生する。


 ヨモギモドキの汁は苦いけど栄養満点!不味い!もう一杯‼︎


【希少度】E

――――――――――――――――――――


……青汁かな?


 冗談はさておき、ガイゼン様が与えてくれたチートを端的に説明するなら、『自分が所有しているアイテムを、そのアイテムに対応する薬品(ポーション)に変換する』という能力だ。


 交易プレイで異世界を生きるなら、この能力はまさにチート級だと思う。なんたってそこらへんに生えている雑草(ヨモギモドキ)から、元手ゼロで魔法薬(ポーション)を作る事が出来るからな。雑草ポーションでわらしべ長者ならぬポーション長者も夢では無いだろう。というか無垢のポーションが無ければ異世界に来てすぐに野垂死にしていた。


 ガイゼン様ありがとう!


 でも、ヤクザなガイゼン様がこの力で、どんな(ポーション)を作っていたのかとかは、聞かないほうが良いんだろうな。


――――――――――――――――――――


 幌馬車の中には自分とおっさんの他に、剣やら鎧やらがギッシリと詰まった箱が積まれていた。乱雑なように見えてしっかりと固定されてるところを見ると、キャラバンの人達もプロだなぁと思う。


 馬車が幌付きなのは盗賊対策らしい。なるほど、幌の中が積荷か護衛かが分からなければ、襲う方も簡単には手出しが出来ないというわけだ。


 こういう細かい設定は女神様が作ったというより、この世界の人たちの経験によるものなんだろうね。ルミナス様がこの世界を作ってから何年経っているかは知らないが、設定では千年は超えてるっぽいし。


 馬車は元々荷馬車だからか、乗り心地はあまり良くは無い。というかめちゃくちゃ悪い。一応板バネが入ってはいるようだけど、バネの上に荷台が乗っただけの原始的な車軸懸架(しゃじくけんか)式で、ぶっちゃけ性能は悪いと思う。


 工業のレベルは大体地球の15世紀ー16世紀ぐらいだろう。まあ中国なんかは紀元前から板バネ式の弓矢とか作っていたし、そこら辺は地域差にもよるのかもね。


 そうそう。この世界の名前なんだが、どうやら旧大陸というらしい。という事は新大陸があるのか?まあ、その辺りはおいおい分かっていくだろ。


 キャラバンの商人や相席のおっさんも、普通に日本語を喋っていたのはどういうことだろうな。この世界の言語はよく知らないが、まさか日本語が共通言語って事は無いだろう。

 ルミナス様が和RPG大好きだから日本語が異世界共通語って可能性も無くは無いが、普通に考えたら異世界の謎言語が自動翻訳されて聞こえているというのが正確だと思う。


 よくよく観察すると、口の動きが日本語と僅かに合ってないし。ところどころ意味が通じない事があるのは、多分この世界と地球で細かいニュアンスまでは一致していないからだろうな。


 世界を管理している神様、取り分けこの世界の神様は一般人にもスキルとかいう特殊能力を与えまくってるみたいだし、この翻訳機能もそういう特殊能力の一部なのだろう。


 人の脳味噌を勝手にいじくりまわすのはやめて頂きたいが、流石に言葉が分からなかったら即ゲームオーバーだっただろうから、結果的にはこれで良かったのか?


【戦利品】

アイテム

・E:ヨモギモドキの束 ×20 ←New‼︎

ポーション

・E:無垢のポーション ×5 ←New‼︎

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ