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1話 間違いだらけの異世界転生

第1部


 ガタンゴトンと、時折大きな音を立てて、街道を数台の幌つき馬車が進んでいく。


 行商人(キャラバン)の寄り合い馬車に拾われてから、はてさて、いったい何時間ぐらいが経ったのだろうか?初めのうちは物珍しさもあり幌の隙間から外の風景ばかりを見ていたのだが、変わり映えのしない景色にすぐに飽きてしまった。


 手持ち無沙汰になってポケットからスマートフォンの様な物を取り出す。スマホの様なといっても、似ているのは大きさと形だけでボタンも何も付いていない、只の黒い板っきれだ。


 ちなみに本物のスマホはとっくに電池切れで、今はリュックサックの中に放り込んである。


 相乗りしているおっさんが寝息を立ててるのを横目で見て(というか良くこんな揺れる車内で寝れるな)

小声で「ステータス」と呟いた。


 たちまち板は薄く光り、表面に青白い文字が浮かび上がった。


――――――――――――――――――――

【名前】七先(ナナサキ) 一路(イチロ)

【年齢】16歳

【出身】さいたま

【レベル】2

【職業】勇者


 ちから:5(1)

 まもり:3(3)

 すばやさ:5(1)

 きようさ:15

 まりょく:3

 うん:13(10)


【装備】

・D:厚手の服(まもり+1)


【所持しているポーション】

・E:無垢のポーション×1


【スキル】『ポーション・マイスター』

・ポーション作成


総評: 相変わらず貧弱ですね、ちゃんとお肉たべてますか?

――――――――――――――――――――


 ほっとけ!


 まあでも、流石にずっとこのままという訳にもいかないと思う。まずはレベル上げかな?


 皆さん薄々は気が付いていると思うけど、此処(ここ)は日本ではない。


 というか、地球ですらない。


 何でこんなところにいるのかって?

 これには深い理由があるのだ。


 きっかけは……そう、16歳の誕生日の夜だった。


――――――――――――――――――――


 世界の終わりを告げる音、オカルト界隈(かいわい)では終末音(アポカリプティックサウンド)とかいうらしい。


 なんでも『ヨハネの黙示録(もくしろく)』とかいう世界一有名な予言書によると、世界の終わりにはラッパの音が鳴り響くのだそうだ。


 ふとそんな事を思い出したのは、とあるゲームのエンドクレジットを眺めていた時だった。『ラッパの()が世界の終わりを告げる』というのなら、スタッフロールのBGMで流れているファンファーレは確かに、一つの世界の終わりを告げる終末音だと言えるのかもしれない。


 なんて臭いセリフを考えながら、画面に浮かんだコンプリートの文字に向け飲みかけのエナジードリンクを突き出す。自分が成し遂げた偉業に乾杯だろ。


「マスター☆クエスト―聖なる時の神殿」


 それがこのゲームのタイトルだ。発売日は今から6年前。当時は〇〇クエストとかいう国民的ゲームのパクリゲーか乱立していて、このゲームもそれら有象無象の糞ゲー達の中の一つだった。


 当時10歳だった自分はクリスマスのプレゼントに〇〇クエストをお願いしていたのだか、どういうわけかサンタクロースが我が家に持って来たのは、この「マス☆クエ」だったのだ。


 しかも当時の我が家には「ゲームは攻略するまで次のを買う事は認めません!」というルールがあった。そのせいで自分は途中で投げ出す事も出来ず、延々とこの糞ゲーを攻略する羽目になったのだった。


 ふふふ。あの頃の自分も、まさか1本のゲームの攻略に6年もかかるとは思うまい。以来、ひたすらに完全クリアを目指して、それこそ青春の全てをつぎ込んで攻略を続けて来たのだ。


 その苦難の日々も今日で終わりかと思うと、テンションが上がりまくって周りが見えなくなっていた俺を、一体誰が責める事が出来るだろうか?


 だからエンドロールが終わった後の画面に『ここから先はエクストラシナリオです。参加しますか?』というメッセージが出た時、よく考えずに『yes』を押したのは、事故みたいなものだったと思う。


 ただ、俺は今でもこの時安易にyesのボタンを押してしまった事を後悔している。もし押していなかったなら、こんな理不尽な事にはならなかったのだ。


 ボタンを押した瞬間、モニターから光が溢れ出し、俺は閃光の中に飲み込まれた。


――――――――――――――――――――


 どれくらいの時間が経ったのだろうか。光が途切れたのを感じて、恐る恐る目を開けた。


「あぶねーな!今時フラッシュ演出とか、ポ○モンショックにでもなったらどうすんだよ!」


「厳密に言えばこの空間を()たしているものは光ではありません。だから貴方が心配しているような事は起こらないですね」


 は?


 完全に独り言のつもりだったのに、突然背後から声が聞こえて飛び上がった。座椅子ごしに振り向くと、真っ白な部屋の中に真っ黒な洋服を着た女性が立っていて、微笑を浮かべている。


 って、待て待て!ちょっと待てよ!真っ白な部屋ってなんだよ!


 俺はさっきまで自分の部屋で『マス☆クエ』やっていて……


 慌てて前に向き直ると、モニターが無い!というか、モニターどころか机も無くなっている!慣れ親しんだ自室が、瞬きの間に殺風景な白い部屋に変わってしまっていた。


 あまりにも白すぎて距離感が上手くつかめないが、部屋の端の方に先程の女性が立っているのが分かった。


 年は30前ぐらいだろうか?リクルートスーツのようなきっちりとした服を着ていて、顔つきは日本人にも見えるし外国人ようにも見えた。

 青色のショートの髪の毛がとても印象的で、四角いメガネが仕事が出来るキャリアウーマンという感じがする。ちょっとキツそうな雰囲気がマイナスだが、ぶっちゃけて滅茶苦茶美人だ。


 ただ、なんとなく彼女の微笑が胡散臭いものに感じられるんだよな。


 というか、この状況は完全にアレだよな。とりあえずこの人に話を聞いてみるか。言葉が通じると良いけど……


 勇気を出して声をかけてみる。


「あの、すみません……」


「ナナサキイチロー様ですね。 おめでとうございます(^^) 貴方は畏れ多くもルミナス様発案のマーレ救済プログラムに選ばれました、『パチパチパチパチ』

 つきましてはこちらの契約書にサインか捺印をお願いします」


 しかし完全にスルーされてしまった。というか今『パチパチ』って口で言ったよな?


「あの!」


「……チッ、」


 舌打ち!いま舌打ちしたよこの人!


「……ナナサキ様、どうかなされましたか?」


「いやいや、まずは状況の説明をお願いしますよ。貴女は誰で、此処は何処なんですか?」


「はぁ……」


 彼女はまるで『無駄な時間を使うな』とでも言わんばかりの態度で、めんどくさそうに答えた。


「私は、第18世界を管理しておられますルミナス様の部下で、女神のミルズと申します。まぁぶっちゃけ貴方ごときのキャパシティだと本来の概念は理解出来ないので、人間程度の概念に合わせた説明ですけどね。

ひとことで言うと私は神様で、ここは異世界です」


 異世界と聞いて、ぶっちゃけあまり驚かなかった。まあなろう読者としては予想の範囲内だったからね。


「もしかして異世界転移というやつですか?」


「召喚の際に貴方の肉体は消滅しているので、転移ではなくて異世界転生ですね。より正確にいえば異世界再生です。……というかあまり驚かないんですね?てっきり仰け反って驚くと思っていたんですけど」


 いやいや、今めちゃくちゃ驚いているんですけど!消滅ってなんだよ消滅って!元の世界の自分どうなっちゃってるの⁉︎


 なんでも、ルミナス様とかいう異世界の偉い神様が地球のゲームに影響されてRPG風の世界を作ったけど、クリアする人がいないから地球から手当たり次第に人を拉致っているらしい。


 なんつーハタ迷惑な神様だよ!

はじめまして。

まだまだ稚拙な作品ですが、楽しんで貰えたら幸いです。

もし面白いと感じて下さったら、下の評価で★★★★をいただけると嬉しいです

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