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7話『この人は私の兄弟子です』



光に透かすと消えてしまいそうなくらい綺麗な銀髪。

宝石の様にキラキラと光る綺麗な緑の瞳。

20代前半くらいの中性的な男性。

竜の谷の一族の族長。


そんな彼が私たちを出迎えてくれた。


「お久しぶりです。ヒスイさん」

「久しぶりだね。元気にしてたかな?」

「はい」


優しく微笑むヒスイさんにそう答えるとヒスイさんは私からダイさんに視線を移した。


「こちらの方は私のお客さんです」

「はじめまして、…ダイと…、申します」


名前を言うのを少し躊躇ったように感じた。


「はじめまして、ダイさん。私は竜の谷の族長を務めています、ヒスイです。」


ヒスイさんは胸元に手を当て軽く腰を折る。


「族長!?」


ダイさんは驚きを隠せないと言った様子でヒスイさんから目を離せないようだ。


「ずいぶんと…、お若いのですね」

「ありがとうございます。でも、こう見えても50を超えているのですよ」


ヒスイさんはふふっと柔らかく笑う。


「50!?……見えない…」


戸惑いで声が尻すぼみになる。


 驚くよなぁ〜。見た目はダイさんとヒスイさん同じくらいに見えるもん


「ヒスイさん自ら出迎えてくれるなんて珍しいですね」

「御二人が来るって知ってね。ダイさんとは、はじめましてだからきちんと挨拶しておかねばと思って」

「知って?」


どうやらダイさんは疑問に思ったらしい。


「占いで御二人が来るのが見えたんですよ」

「竜の谷の一族の占いはよく当たるんです。その中でもヒスイさんの占いは百発百中なんですよ」


竜の谷の一族の占いはよく当たると一部の者には有名だ。

中にはこの占いを生業として生きている者もいる。


「100は言い過ぎかな?90くらい」

「充分です」


ヒスイさんの占いは本当によく当たり、私が母を亡くして師匠の元に来ることや師匠の死期も当てた。


「貴方のことも占いで見ましたよ」

「!?」

「大変でしたね」


そうダイさんに告げるとダイさんは目を見開き体を硬くした。


「ヴェル。竜に頼んでありますので、鱗を頂いてきなさい」

「ありがとうございます。助かります」

「ダイさん、貴方は私の家にいらっしゃい」

「…わかりました」


私はヒスイさんに頭を下げ竜の元に行く。

話を通しておいてくれたのだろう。人型の竜が竜の寝床の手前で待っていてくれた。


「運がいいな。先週生まれたばかりの竜がいる」

「そうなんですか」


寝床を見ると薄紅色の竜とその子である小さな小さな竜がいた。

欲しいのは生後半年以内の竜の鱗。

生まれたばかりの竜の鱗は柔らかく加工しやすいからだ

竜の鱗は古くから万能薬と言い伝えられてきた。

しかし、実際には万能ではない。

それでも人間は1世紀ほど前まで薬にする為に竜を捕まえていた。

それに怒り悲しんだ竜と竜の谷の一族は人間との交流を制限したのだ。


「母親には話をしてありますか?」

「あぁ、ちょうど昨日剥がれた鱗があるらしいからそれを持ってけと言っている」


私はゆっくりと彼女らに近づき近くに落ちている鱗を拾う。

生まれたばかりの竜は身長150くらいの私と同じくらいの大きさだった。

まぁ子竜は寝ているので実際はもう少し大きいだろう。

母親の竜に頭を下げ、人型の竜にお礼を言う。


「ありがとうございました。母親にもそう伝えておいてください」

「わかった」


鱗を持ってヒスイさんの家に向かう。

コンコンと扉をノックすると中からヒスイさんが扉を開けてくれた。


「いい鱗が手に入ったようだね」

「はい、ありがとうございます」


お互いに鱗に目をやり、ふふっと柔らかく笑った。


「すぐ行くんだよね」

「はい。時間が惜しいので」


そう答えるとヒスイさんは目を伏せた。


「ヴェル。わかっているかもしれないがこの件には彼が…君の兄弟子が関わっている」

「……はい」


ヒスイさんの言葉で予感は確信に変わった。


「気をつけるんだよ」

「はい」


ヒスイさんに心配をかけないように笑顔でそう答える。

なんとも言えない表情のヒスイさんの後ろからダイさんがやって来た。


「ダイさん鱗が手に入ったので帰りましょう」

「あぁ」


 あれ?また?


ダイさんは街を出る時と似たような浮かない表情だった。


「竜に街の近くまで運んでもらうといい」

「ありがとうございます。助かります」


3人で草原に向かうと先程の人型の竜が待っていた。


「御二人を頼みます」

「わかった」


ヒスイさんにそう答えると人型の竜は竜の姿に戻った。

体は夜空のような色でとても大きく、瞳は黄金に輝いている。

ふと横を見ると目を見開き口をぽかんと開けているダイさんと出会った。


「さぁ、御二人とも彼の背中に」


ヒスイさんの手を借り竜の背中に乗る私に続いて、ダイさんも戸惑いながらも竜の背中に乗る。


「行くぞ」

「はい、お願いします」


そう言うと翼をゆっくりと広げ飛び立つ竜。

私とダイさんはヒスイさんに頭を下げるとヒスイさんは片手を挙げ手を振り見送ってくれた。


あっという間に街の近くに着く。

私とダイさんを下ろし竜は帰っていった。


「すごかった…」


ダイさんは空を見上げながら小さくそう呟いた。


「中々できない体験ですよね」

「あぁ貴重な体験をさせてもらえた…」


私とダイさんは泉の上の家に帰るべく路地裏に向かう。

そして私は、近くの扉に魔法の鍵を挿し回す。

扉が光ったのを確認してからドアノブを回し、扉を開ける。

扉をくぐった私の目に飛び込んできたのは椅子に座る1人の男。


「やぁヴェル。おかえり」


驚きで固まる私にニヤリと笑いかける男。

私に続くよう家に戻ってきたダイさんも固まっている。


「あぁ、ディアマンテもおかえり」


男はニッコリと笑い、そう言ってダイさんに視線を向ける。


「何しに来たの、オブシディアン」


睨みながらそう言うとダイさんが驚いたように私とオブシディアンを交互に見る。

私はオブシディアンからダイさんに視線だけを向けた。


「…この人は私の兄弟子です」



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