表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/29

4話『貰えるものは貰えるだけ貰っておこう』



私には魔法の才能が無かった。

私の母も魔法が使えたがそれを隠し、薬師として王都で暮らしていた。

ちなみに父だがどこぞの貴族だったらしい。

身分違いの恋というやつだ。

そして、私を身篭っていることに気づいた母は父の元から去った。

そんな母も私が7つの頃に流行病に罹ってしまい、この世を去ってしまった。

突然の事で母から父のことを教えてもらう前だったので父の顔はおろか名前も分からない。

まぁ知ってた所で向こうにも家族が居るだろうし、生活もあるだろうから迷惑はかけたくない。

その後のことだが、有難いことに母の魔法の師匠だった魔女が私を引き取ってくれた。

そこで私も魔法を学び、兄弟子の天才ぶりに心が折れかけながらもなんとか薬学だけは兄弟子にも認められるくらいには極めることが出来た。

そして、2年ほど前師匠が亡くなり師匠の跡を継いだ。

跡を継ぐと言ってもこの家と代々受け継いできた魔法書を譲り受けた程度なのだが。



「毒の解析をするので窓を開けてもらっていいですか。あと危ないのでこちらには近寄らないでください」

「わかった」


そう言うとイケメンはソファーの後ろの窓を開けてくれた。

私も近くの窓と裏庭に続く扉を開け、準備をする。


 さて、はじめますか


まず、小さな器に水を張り毒の解析をするための魔法をかける。

毒を魔法をかけた水の上に1滴垂らすと毒は魔法をかけた水の上に浮かびあがる。

混ざっていた液体は少しずつ分離し、4つの液体に分かれた。

その4つの液体にそれぞれ試験紙を漬け、しばらく放置すると最初の色とは違う色が浮かび上がってくる。

これが毒に使われた物の成分である。

この試験紙をトレーの上に並べる。

ここからは地道に毒に使われた物を見つけ出す。


ここまででイケメンが家を訪ねて来てから4時間、毒の解析を始めて3時間以上が経った。

外は陽が落ち始めていた。

ふと、振り返るとイケメンはソファーで寝ていた。

風邪をひかれたら困るのでブランケットをかけ、もう換気の必要はないので窓を閉める。

外に干していたイケメンの服を回収し、裏庭に続く扉も閉める。


 さて、続きをやりますか


毒に使われた物はわかったので次は解毒に必要な物を調べていく。

色が変わった試験紙を細かく切り、元の試験紙の色に戻る物を探していく。

解毒に必要なものが薬草だけじゃないのでそこが大変だ。

何度も何度も色んな試験薬を細かく切った試験紙に垂らしていく。


解析が終わり、外を見ると朝日が昇り始めていた。

解毒に必要な物をメモし、イケメンを起こす。


「あれ?」


 いつの間に着替えんだ?


イケメンは知らない内に着替えていたようだ。


 ずっと寝てたんだと思ってた。

声かけてくれたってよかったのに。それにしても…


「綺麗な顔してるな…」


 …むかつく

寝顔って不細工になりやすいんじゃないのかよ。

イケメンは寝顔もイケメンなのかよ


「どうしたらイケメンじゃなくなるんだろう…」


イケメンのほっぺをつつきながら考えを廻らすがほっぺをつつかれていてもイケメンなことに更に腹が立つ。


 というか、何故起きない?鈍すぎじゃない?

ツンツンツンツンツン…


「起きない貴方が悪いんですよ〜」


と、言いながらイケメンの鼻を摘んでみる。

すると少しずつ苦しそうな顔をしだしたので鼻から手を離し、声をかける。


「起きてください、お兄さん」

「ん…?」

「毒の解析が終わりました。解毒に必要な物を買いに行きますよ」


そう告げるとイケメンはガバッと勢いよく起きた。


 寝起きいいタイプか?羨ましい


「解毒出来るのか!?」

「そうですね。ここには無い物が多いので、手に入れて作ってみないと何とも言い難いですが…」

「何が必要だ!金は出す!」


言い終わる前にイケメンは食い気味にそう言ってきた。


「当たり前です。あ、あと解毒剤が出来たら+α、解毒出来たら+αで料金をいただきますがそれでも結構ですか?」

「構わない!いくらでも出そう!!」


はじめからイケメンの言動も服装もどちらからも金持ち臭がプンプンしていた。


 貰えるものは貰えるだけ貰っておこう


「ありがとうございます」


感謝を込めてにっこりと笑う。


「!」


なのにイケメンは驚いた顔をして固まってしまった。


 そんなにびっくりしなくてもいいじゃないか。私だってそれなりに笑うんだぞ


「出かけるので準備をしてください」

「!わかった」


 よかった時が戻ったようだな


声をかけるとイケメンは元に戻り、小瓶が入っていた小物入れを腰に付け、マントを羽織った。

私も必要な物をカバンに詰め、羽織を着て首にかけていた鍵を手に取る。


「準備はいいですか?」

「あぁ」


どうやらイケメンは私の準備が終わるのを待っていたようだ。


「それじゃあ行きましょう」

「どこに行くんだ?」

「竜の谷です」

「竜の谷!?」


 そりゃあ、びっくりするよな。

竜の谷なんてそうそう簡単に行けるような場所じゃないし、そもそもどこにあるのかも知らない人間が多いだろう


「まぁ、その前に別の街にも行くんですが」


手に持った鍵を裏庭に続く扉の鍵穴に挿す。

すると不思議な顔をしてイケメンが覗き込んでくる。


 そりゃそうだろうな、内扉に鍵挿してたら不思議に思うよな〜


挿しこんだ鍵を回す。

すると扉が光り出す。ドアノブを回し扉を開けイケメンの方を向く。


「行きますよ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ