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3話『とてつもなくめんどくさい事に巻き込まれてしまうかもしれない』



 魔女または魔法使い


読んで字のごとく魔法を使える者のことをさす。

この世界には約10人に1人の割合で魔法を使える人間がいる。

能力が高い者は国お抱えの魔法使いになるが、それ以外の者は魔法とは関係の無い職に着いたりする。

ちなみに好き好んで自ら魔女または魔法使いと名乗る者はそうそういない。

10人に1人とはいえ魔法が使える者と使えない者では使えない者の方が多い。

そして、魔法が使えない人間の中には魔法を嫌う者もいる。

もちろん受け入れてくれる人間もいるが偏った知識のせいで魔法を万能なものだと勘違いしている者が多い。

結果、魔法が使えてもそれを隠して生きている者もいる

魔女または魔法使いだと知られてる者は魔法が使えることを隠さず生きている、ただそれだけの話。



「お前が…、魔女…」

「はい」


弾んでいた声が力をなくし、乗り出した体はゆっくりと後ろに戻っていった。


「ガッカリさせたようですね。すみません」

「いやっ、違う!…その…、イメージと違っていたから…」


ポスンとソファーに座り、またもやあるはずの無い犬耳としっぽがしょんぼりしているように見える。


 どんなイメージだったんだ?


「どうしますか?他をあたりますか?魔法使いは他にも探せばいますし、王都に行けばそれなりの力を持った方もいらっしゃると思いますよ」

「王都の方は……」


イケメンは目を伏せ言い淀んだ。


 なにやら訳アリのようだな


「私には出来ることと出来ないことがあります」


そう言うと少し体を硬くし、こちらに視線を向けた。


 まるで怒られる前の子供のようじゃないか


「とりあえず話を聞かせてください、それからです」


イケメンは目を大きく見開いた。


「……聞いてくれるのか?」

「話を聞かないことには出来るか出来ないか、わからないじゃないですか」

「それもそうだな…」


ふぅと息を吐き、イケメンは自身を落ち着かせるように軽く目を瞑った。


 ひとつひとつの仕草が艶っぽいな…イケメン恐るべし


覚悟を決めたようにゆっくりと目を開き視線が戻ってきた。


「私の母を救ってほしい」

「詳しく話してもらえますか?」


コクンとひとつ頷くと手元に視線を落とし静かに話し始めた。


「1週間ほど前、母の食事に毒が盛られたんだ。幸いにも飲み込む前に吐き出したんだが…かなり強力な毒だったようで…、少しずつ衰弱していってる。医師や薬師、魔法使いなど色んな者に診せてはみたんだが……ダメだった」

「ダメだったとは?」

「魔法によって作られた特殊な毒だったんだ」


 なるほど、それじゃあ普通の医師や薬師はあまり役に立たないな


普通の毒なら医師や薬師が適切な処置を施せば、なんとかなる可能性が高いが、魔法が絡んでしまってはどうにもならない。


「今は魔法使いが毒の回りを遅らせてはいるのだが根本的な解決法が見つからないんだ」

「毒と魔法両方に詳しくなければ難しいでしょうね」


そう告げると私の顔をちらりと見て、また視線を手元に戻し、苦虫を噛み潰したような表情で声のトーンを落とした。


「魔法使いも同じことを言っていた。だから色んな魔法使いを訪ね歩いていたのだが中々見つからず困っていたんだ」

「でしょうね。魔法が使えれば解毒方法も魔法で解決してしまうのが普通ですから」


視線を落としている手元には力が入っている。


「おれ……、…私が、…貴女に逢いに来たのは…、王都で貴女の噂を聞いたからなんだ」


イケメンは決意を込めたように顔を上げる。


「貴女ならどんな病でも治せると…」


まるで縋り付くように今にも泣き出しそうな顔が私を見つめ絞り出すような声でそう言った。


 やめてくれ。そんな捨てられた子犬みたいな顔で見ないでくれ。

そんな顔で見つめられても出来ることと出来ないことは変わらないんだから


「どんな病でもは言い過ぎです」


 また、しょんぼりしたなイケメン。

仕方ないだろ。私には才能がないのだから


「はぁ…毒の解析をしてみない事には治せるとも治せないとも言えませんので、とりあえず解析してみましょう」

「いいのか!?」


沈んでいた声が弾んだ。


「何かその毒に関することの情報はありませんか?」

「!、毒の入っていた小瓶を持ってきた!役に立つだろうか?」


ガサゴソと来た時に腰に付けていた小物入れから小さな小瓶を出してきた。


「失礼します」


 これは…


彼から受け取った小瓶に私は見覚えがあった。


 もしかするとこれはとてつもなくめんどくさい事に巻き込まれてしまうかもしれないな…


それでも、どんな病でもは無理だが毒や薬についてはそれなりの知識を持っている。

だから、藁にもすがる思いでこんな所までやってきた彼に少しでも力になれる可能性があるのなら私に出来ることをしようではないか。


「少し時間をいただくことになりますが構いませんか?」


小瓶には数滴ほどの液体、おそらく毒が残っていた。

小瓶からイケメンに視線を移すと希望に満ちあふれたような表情の彼に出逢った。


「どれだけかかっても構わない!いくらでも待つ!!」



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