彼は野球を見ていました。
彼は野球を見ていた。
中学では友だちに誘われて野球をやっていたが、高校に入ってからは軟式から硬式に変わることもあり入部はしなかった。
とはいえ、野球は好きなので今はプロ野球の日本シリーズを見ている。
ハードバンクホームズファンだ。
今年はロットマーキンズがリーグ優勝を果たして、日本シリーズに出場している。
対する相手は別リーグ優勝を果たした『半神ナーバス』だ。
ここまで3勝3敗で今日は第7戦。先攻のロットマーキンズが33-0と圧倒的にリードしており、甲親園のスタンドはため息で包まれているかと思われたが、9回裏0アウト満塁のチャンスでアナウンスとともに4番パッターが打席に立つと大きな歓声が上がった。
ピッチャーがキャッチャーのサインに2度頭を振り、3度目でうなづく。
その後、キャッチャーが構えたところにストレートを投げるが、今までの疲れがあったのか、わずかばかりボールが外れてど真ん中に吸い込まれていく。
ピッチャーが投げた瞬間にまずいっと表情がこわばったが、時既に遅し。
バッターがしっかりバットを振り抜き、打球が高々と上がっていく。
「あ゛ーーーーーー」
テレビの前で見ていた彼は、完封が消えてなくなるこの瞬間に対して、思わず立ち上がり悲鳴のような声を出していく。
その打球がレフトスタンドにインする直前、彼の視界が暗闇へと移っていった――――
先程まで座っていたソファーには誰もいなかった。
服と下着と落ちたポテチの食べかすだけがそこにはあった。
彼の名は、鬼谷 掛
15歳の高校一年生はその日、行方不明となった。
続きを書くかは決めてません。
一応構想はあります。
野球、今後の話には全く関係ないものになる予定です。