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ライト・ボア

今回はルール説明回です。

わからない場所が有ったら質問してください。


2021/04/24 体力の管理が大変だということに気がついたので、カードから体力の表記を消しました。

私の名前は(シン)「Cast World Online」のゲームマスターをやっている者だ。何?一人称がなぜ僕じゃなく私なんだ、だと?そんなものロールプレイの一環に決まっているだろう。だいたいこのゲームは私が19歳の頃にAIと共に作り上げてそこから7年が経った、つまり今の私は26歳。20代後半の大人の一人称が僕では格好がつかないじゃないか。


まあそんな事はどうでも良いんだ。それよりも今私はこの世界に誕生してから3番以内に入る程の危機に瀕している。私とマキナのアバターにノイズが掛かり始め、それがだんだんと酷くなっていった。もはや挑戦者が何かを言っているようだがそれも聞こえない。調整時にはこんなバグは存在していなかったと断言出来る、もはやアバターとしての形すら失っているように思う。そして突然浮遊感が体を襲ったと思ったら次の瞬間には森の中に立っていた。


「は?」


そこはコロッセオの闘技場の姿はなく鬱蒼と生い茂った木々の姿、目を擦ってもその事実は変わらない。


「おいおい、どうなってんだよこれ !?こんな何の変哲もない木の生えた森なんかCast World Onlineに存在しないぞ…いや、確か始まりの都市の近くにあった森が成長すればこんな感じになるか?つまり世界の反対側までバグで飛ばされたって事なのか?」


慌てて運営側に連絡を取ろうとシステムウィンドを開いて連絡を入れるが、何度コールしても繋がらない。しびれを切らしてログアウトボタンを押すが一向にログアウトする気配が見当たらない。


「勘弁してくれよホント、運営側に連絡がつかずログアウトもできない。こんな異常が他のお客様に出たら大変だぞ。戻ったらシステムの確認だな…」


その時、目の前の空間にノイズの掛かった黒い穴が開く。敵か、と身構えると中から銀髪の美少女、マキナが出てきた。


「ご主人様!大丈夫でしたか!それにしても一体どういった攻撃を受けたのでしょうか?先程までのコロシアムでは無いようですが…」


マキナが慌てて駆け寄ってきて、私に怪我がない事を確認してホッとしていた。


だが私はそんな事がどうでも良いくらいには驚愕していた。何故ならマキナには会話用のプログラムを持っていない。つまり人の心配をして会話をするはずがないのだ。それに試合は中断されているはずだから実体化しているのにも説明がつかない。

外部と連絡の取れずログアウトすら状況、何故か成長しているマップ、喋らない筈のカムラッドが会話をして実体化をしている。馬鹿みたいな話だけど、これじゃあまるでよくあるライトノベルのゲーム世界に転移してしまった話のようではないか……


とりあえずマキナと会話してみるのが一番わかりやすいのでは無いだろうか。これが誰かに意図された状況の可能性もある、とりあえず情報を集めて考えよう。


「それが僕にも分からないのさ。コロシアムでマキナを召喚したところまでは覚えてるが、その後どうなったのかが全くわからない。マキナは何か覚えているか?」


「はい、コロシアムでご主人様に召喚されたました。その後ご主人様の体にノイズのようなものが掛かりまして、黒い穴に吸い込まれていきました。助けようと手を伸ばしましたところ、私も巻き込まれてしまいまして、そこからここに来るまでは覚えていません。」


声は完全にマキナのものだ。Cast World Onlineには声を変える機能は存在していないので、誰かの悪質なイタズラの線もほぼ消えた。しかも記憶の最後が私の記憶と一致している。先行1ターン目にマキナを召喚する事は確定していないので事前に誰かが分かるはずがない。


「ご主人様、どうやらここは特に危険がない場所のようなので戦闘状態を解除したらいかがでしょうか。もし何かありましたら私が盾となりますので。」


そんな事を考えているとマキナに提案された。たしかにこんな森の中で長い羽根を広げいるのも邪魔だろう。「そうだね」と答えながらシステムウィンドウを弄り、羽根などの派手な装備を外してアイテム欄に仕舞う。


「マキナ、ここがどこだか分かるかい?」


「おそらく始まりの都市アイン・ベルの近くにある、ライトベルの森かと思われます。」


「そうか、ならここは低レベルゾーンだから安心だけど一応デッキをセットしておくか。」


デッキをセットしようとシステムウィンドウを開いて《神従者》のデッキを選択するが、“デッキ枚数が足りません”という表示が出てセットできない。慌ててデッキの中身を確認するとマキナ以外のカムラッド全てが白い空白のカードになっていて、マキナのカードは色が無く、白黒になっていた。原因は不明だが使えないものはしょうがない。マキナは外に出ているからカードの中に居ない扱いだから色が無いのか?とりあえず別のデッキを選択しておく。


「よし、デッキはセットできたな。ここから始まりの都市にはどうやったらいけるか分かるか?」


「はい。方角的にこちらだと思われます。ッ!!ご主人様!こちらに急接近してくる反応を2つ捉えました!気をつけてください!」


そう言われてから10秒もしないうちに声が聞こえてきた。


「うお!あっぶねっ!ちょっ誰か助けてー!ライトボアに襲われてるんだ!」


そう言って私たちの前に転がり出てきたのは中学生くらいの年齢の少年だった。そしてすぐに少年の後を追ってライトボアが飛び出してきた。


「あっ!そこの人達助けてくれ!ライトボアに襲われてるんだ!」


少年がこちらに駆け寄ってきて、ライトボアと対峙する構図になる。


「君、デッキは持って無いのかい?ライトボア程度なら簡単に倒せると思うんだけど?」


「デッキなんて高価なもの、貧乏人は持って無いんだ!」


「持って無い?貧乏人?まあよくわからないけどライトボア程度なら引き受けるさ。構わないよねマキナ。」


「はい。ご主人様の御心のままに。」


マキナから許可が出た。さっきから少年の言っているデッキが高価なものだ、と言った事から本当にCast World Onlineに似た世界に来てしまった可能性がある。Cast World Onlineではプレイヤー全員に初心者向けのデッキとゲーム内通貨を配布している。つまり少年はプレイヤーでないだろう。が、少年の様な人物が出てくるクエストを私は知らない。つまりCast World Onlineとよく似たゲームに来たか、ラノベのように別世界にゲームアバターで転移してしまったのでは無いだろうか?


「じゃあ少年、今からデッキでの戦い方を教えてあげるよ。そこで見ているといい。マキナ、デッキに戻ってくれるか?」


「はい、わかりました。」


そう言ったマキナがデッキに吸い込まれる様に消えたのを確認してから、デッキを構えるとライトボアもどうやら戦う事が分かったのか地面を前足で引っ掻き突進の構えを見せる。


「バトルフィールド展開!」その言葉と共にカードが実体化するフィールドが広がっていく。


先行はどうやらライトボアのようだ。使えるlimit(リミット)の上限が1上がりカードが1枚自動的に引かれる。


ライト・ボア

limit0→1

手札5→6


ここでライト・ボアの説明をしよう。始まりの都市アイン・ベルの近くにあるライトベルの森に生息する初心者向けのエネミーだ。初心者に対するチュートリアルの側面もあるライト・ボアははっきり言って弱い。なぜなら、普通プレイヤーのHPは20から始まるのだがライト・ボアは5しかないので、攻撃を直接喰らうだけでかなりのダメージが入る。


「そういえば少年、名前は何て言うんだい?ちなみに僕は(シン)って名前だよ。」


「マルフィル=ベルだよ。」


「そうか、いい名前だね、そうか、ベルか…マルフィル、君に今からカードゲームの戦い方を教えてあげるよ。」


そして私のlimitアップフェイズがくる。


「まずはlimitアップフェイズ、これにより僕はlimit1以下のカードを使う事ができるようになった。そして1ドロー。」


ジン

limit0→1

手札5→6


「そして僕は手札から『壊れかけの人形』を召喚。」


私の場の空中に召喚人が展開し、中から継ぎ接ぎだらけのボロボロの人形が出てくる。


壊れかけの人形 limit1

種族 オートマタ

攻撃3防御0速度1

・このカードは攻撃したターン終了時に破壊される


「く、空中からなんか出てきた!」


「怖がらなくても大丈夫だよ。このカードはカムラッドと言って僕たちプレイヤーをの代わりに攻撃し、守ってくれる仲間なのさ。」


「さて、バトルフェイズだ。『壊れかけの人形』ライト・ボアに攻撃!」


その時カードがライト・ボアの手札から出てきて薄い緑色の膜が広がって盾となる。


守りの指輪 limit1

・相手のカムラッドが君に攻撃しているなら使える。

・君が次に受けるダメージを2減らす。


ライト・ボア

HP5→4


「あ、あれは?緑色の膜みたいなのが出てきたけど。」


「ああ、あれはスキルカードと言ってね、戦いの幅を広げてくれるサポートカードだよ。ピンチをチャンスへ、チャンスをもっと有利に変えてくれるカードさ。」


「そうなんだ、でも1ダメージしか与えられてないけど大丈夫なんの?」


「大丈夫さ。まだまだこれからだよ。そしてターンエンド時に『壊れかけの人形』は破壊される。」


継ぎ接ぎだらけのボロボロの人形がとても細かいブロックに変わっていき、空気に溶けるように消えていく。


「そして僕のlimitアップフェイズ、limitが1上がる、そして1ドロー。更にメインフェイズに入るよ。」


ジン

limit1→2

手札5→6


「え、さっきまでジンのターンだったのになんでもう一回ジンのターンなの?」


「それはね、このゲームのバトルフェイズが共通だからだよ。ちょっと待ってて…あったあった、これだこれ。」


システムウィンドウのターン説明の欄を開き、可視化させてからマルフィルの前に投げる。


・ターンの流れについて


①ターンプレイヤーのlimitアップフェイズ(自分の使えるlimitの上限を1上げる※最初のlimitは0)

②ターンプレイヤーのドローフェイズ(デッキからカードを1枚引く)

③ターンプレイヤーのメインフェイズ(カムラッドの召喚、スキルを使う事が出来る)

④非ターンプレイヤーのlimitアップフェイズ

⑤非ターンプレイヤーのドローフェイズ

⑥非ターンプレイヤーのメインフェイズ

⑦アタックフェイズ

⑧チェンジフェイズターンプレイヤーを交代する)

⑨エンドフェイズ(1ターンの終わり)


「うわ!また空中からなんか出てきた…」


「この表示されているようにターンは流れて行く、さっきまではライト・ボアがターンプレイヤーだったけど、チェンジフェイズでそれが変わって今度は僕がターンプレイヤーになったのさ。」


「なるほど。バトルフェイズが共通だから、場にカムラッドを出していないライト・ボアはアタックフェイズに動けなかったんだ!」


「そういうことさ。じゃあメインフェイズを続行。僕は手札から『スクラップ・リペア』を発動。自分の墓地からlimit3以下の《オートマタ》種族のカムラッド1枚を手札に加える。僕が選択するのはさっき破壊された『壊れかけの人形』を手札に加える。」


スクラップ・リペア limit2

・君の墓地にあるlimit3以下の《オートマタ》種族のカムラッド1枚を手札に加える

・『スクラップ・リペア』は1ターンに1度しか使えない


「さらに手札からlimit2の『銀ガラス』を召喚。僕のメインフェイズを終了する。」


空から鈍い銀色の輝きを放つメタリック風のカラスが降りてくる。


銀ガラス limit2

種族 オートマタ/鳥

攻撃2防御2速度3

【飛行】


「なんでさっき手札に加えた『壊れた人形』を場に出さないんだよ?出したほうが強いんじゃないか?」


「今僕のlimitは2だろ。場のカムラッドのlimitの合計は自分のlimit以上にはなってはいけないからさ。『壊れた人形』のlimitが1『銀ガラス』はlimit2だ、そして僕のlimitが2。1+2=3だろ、だから『壊れた人形』は出せないんだ。」


そんな説明をしているとライト・ボアのlimitアップフェイズとドローフェイズが終わり、メインフェイズに入っていた。ライト・ボアの手札から『ライト・ボア』が出てくる。


ライト・ボア limit2

種族 獣

攻撃2防御1速度3

・このカードの攻撃で相手のカムラッドを破壊した時、相手プレイヤーに2ダメージ。


そしてそのままバトルフェイズに入った。


「バトルフェイズなんだが、カムラッドに書いてある速度の欄が見えるかい?バトルは速度の数値が高い方からアタックするんだ。そして同じ速度の場合はターンプレイヤーが優先してアタック出来る。ターンプレイヤー→非ターンプレイヤー→ターンプレイヤーの順で同じ速度のカムラッド全てが攻撃し終わるまでこの順番を繰り返して行うんだ。今の場合『ライト・ボア』と『銀ガラス』の速度は同じだが、ターンプレイヤーが僕だから『銀ガラス』が先に攻撃できるのさ。」

「『銀ガラス』で『ライト・ボア』に攻撃!『銀ガラス』の攻撃力は2、『ライト・ボア』の防御力は1、よって『ライト・ボア』を破壊。」


「カァー」という鳴き声と共に『銀ガラス』が『ライト・ボア』に襲いかかる。必死に抵抗した『ライト・ボア』だったが『銀ガラス』の猛攻に耐えきれずに破壊される。


そして1ターンが終わり、ライト・ボアがカードを引くが、どうやらカムラッドを引くことが出来なかったようで、カムラッドを出さないままメインフェイズが終了した。そして先ほど手札に加えた『壊れた人形』を場に出して、そのままアタックフェイズに、『銀ガラス』と『壊れた人形』に攻撃されたライト・ボアはHPが0になり淡い光と共に消滅した。


《《You win!!!》》

・50ゴールド

・『ライト・ボア』


戦闘に勝利したので僅かなお金と『ライト・ボア』のカードを手に入れる事が出来た。


「ま、こんなもんだね。」


「あ、あんなにあっさりとライト・ボアを…」


そう言って振り返った先で少年はポカーンとした顔をしたいた。






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