アイスクリーム、下から食べるか横から食べるか?
その日、冷蔵庫の下の段にある冷凍室を開けるとアイスクリームがぎしりと入っていた。今は昼下がり、ちょうど冷えている甘い物が食べたいと考えていた。
そしてその、数多くあるアイスクリームの中から一つを冷凍庫から取り出した。
「何故、貴方はアイスクリームを取り出したのですか?」
僕は尋ねた。
「食べたいから、だ。」
俺は答えた。
「では、何故、食べたいのですか?」
僕はまた尋ねた。
「…食べたいから、食べたいのだ。」
俺は答えた。
「答えになっていません。もう一度質問します。何故、貴方は食べたいのですか?」
僕はしつこく尋ねた。
「…食べたい…からだ…。」
俺は答えに困った。
一体、何故俺はアイスクリームを食べたいと思ったのか?深く考えてみることにした。今日は暑い。暑いと冷たい物が欲しくなる。しかし、この部屋は涼しい。別に冷たい物は欲さないはずだ。今日はろくに動いていない。ならば血糖値はあまり下がっていないはずだ。血糖値が下がらなければ腹は空かない。アイスクリームなど食べる必要など無い。そうなるとアイスクリームを食べたいなどと思うはずがない。
しかし、アイスクリームが食べたい。では、この気持ちはどこからくるのだろうか。
俺は再び、深く考えた。
「あら、アイスクリームなんて食べるの?ただでさえ腹が出ているのに、更に肥りますよ?」
私は言った。
「アイスクリームは冷たいから体が冷えるわ。その分、エネルギーを使うからヘルシーよ。」
アタシは言った。
「そんなわけあるか。ほなら、アメ公みんなガリガリや。」
わいは言った。
「そうでござるよ。彼奴等、ブクブク肉達磨ばっかでござるよ。」
拙者は言った。
「なら、やっぱ太るのかい?」
アチキは言った。
ガヤガヤ頭の中で騒がれる中、その場所を離れ、もっと深い場所で俺は「何故、アイスクリームを食べるのか。」という、僕からの問いに対する答えを導き出そうとしていた。
そして、俺はさらなる深い深い思考の深淵に潜って言った。何故、アイスクリームを食べるのか、何故アイスクリームを食べたいのか、何故アイスクリームなのか、アイスクリームとはなにか、世界とはなにか…
そして俺は、世界の真理に気づき始めた。もうすぐで、俺は悟りを開きそうになった。
しかし、悟りは開かなかった。いや、開けなかった。止められたからだ。何に止められたか。アイスクリームだ。アイスクリームがかなり溶けてきたのだ。当然だ。いくら冷房が効いていてもずっと手に握られていたら溶ける。
仕方なく新しいのを取り出そうと冷凍庫による。
ガチャ
玄関が開き、知ら無い物が来た。そして騒ぎ出した。だから殴った。叩けば音は消えるはず。しかし、鳴り止ま無い。無視してアイスクリームを食べようとした。が、物はこちらに迫って来た。蹴った。そしたら逃げ出した。追いかけた。殴った。もう一度蹴る。すると音はようやく消えた。
そして部屋に戻り、アイスクリームが食べようとした。
口に入れようとした瞬間、後ろからポリ公が覆いかぶさって来た。
しばらくし、見慣れた場所でポリ公に何故部屋に入っていたか聞かれた。「アイスクリームを食べようとした。」と答えた。
「何故アイスクリームが食べたいか、答えてください。」
僕が聞いてきた。
「アイスクリームがそこにあったからだ。」
俺は言った。
結局、アイスクリームは食べ損なった。