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7ななな

そのまま、何事も無かったかのように

僕は、扉の鍵を開けて何か入ろうとすると

彼女は「うわぁああああーーーー」と叫んだ

僕はそのあまりの声に

急いで、扉をしめて鍵をかけた

「ふぅう」

何と言うやつだ、人の家の前でいきなり叫ぶなんて恐ろしい事を

そのまま、パソコンの前に立ってみるが

どうも気乗りがしない

なぜなら先ほどから

玄関の方で

死ねと言う言葉が乱立していた

たぶん彼女なんだろうが

何だろうか、部屋にでも入れなくなったと言うのか

「どうしたんだ」

僕は、玄関の横のお勝手に面したガラス戸をあけると

下りの中から彼女を見下ろす

そこには、薄暗い中に

真っ赤なお面をかぶった少女が

こちらを見上げている

「なななな」

僕は、無かったことにして窓を閉めた

あれは何だ

何者なんだ

このアパートに棲みつく悪霊か

しかし、その実態はつかめず

死ね死ねと繰り返す声がする

「どうしたんだ」

僕は出来るだけ平然を装って

窓を開けずドア越しに叫んだ

「死ね」

実に単純ない回答だ

会話をするつもりはないらしい

僕はネゴシエーターではないが

それでも死ね死ねコールはうるさい

「君は暇だな」

僕は、ドアへ向かい叫ぶ

「死ね」

ドアの向こうから同じ返事が

「何か気に障る事をしたのかな」

少々コールがやんだが

「死ね」とまた声が聞こえた

一体奴は何者で何が目的なんだ

一介の時給千円の俺に何を求めるんだ

「僕はもうそろそろ寝なくてはならない」

実際には、パソコンをしなくてはいけないのであるが

「君の要件を簡潔に三十秒以内に答えよ」

「30」「29」「28」

僕は、横に設置された冷蔵庫の中身を確認しながら声をかける

「27」「26」

秒数が、徐々に減ってくると今度は扉をガシガシ殴打する音が聞こえる

「25」「24」

「あんたさ」喋った

その声は、しわがれており

何か老人のようであった

「何だ」

「お人形捨てたでしょ」

お人形だと

果たして捨てただろうか

僕は、記憶の中で、持ち主不明の物品の中で冷蔵庫の中で、こちらを恨みがましく見つめ

捨てられる際もこの世の怨念を晴らさねばならないと言う目をこちらに向けていたが

しかし、所詮は、物

人間でも動物でも無い

それは無機質にして物である

「知れないな」

「嘘をつくな」

鋭い声

僕は、一人考える

あの人形は彼女の所持していたものだったのだろうか

だとしたら僕は、それを全力でかくさねばなるまい

なぜなら

僕は、薄暗い部屋の中の一角

棚にずらりと並べられたフィギュアの一角

日給千円の僕の所持金から

ヘアカラーの水色を買い

通信サイトから制服の生地を買い

わざわざ散髪用のハサミを買った僕のアレンジで

短いヘアーにイメチェンした人形が

無表情の微笑をこちらに向けていたのは無関係で済ますべきだと物語っていた

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