5ゴロゴロ
立派な高床式の木造建築が出来上がった
ヤギと言う生き物は高地に住むため
比較的涼しく
又高い場所を好むらしく
そのため奴は以前から
アパートの二階に良く出没していた
しかし、あれが完成して以来
僕のような引きこもりにクラスチェンジし本能を堕落させたらしい
事あるたびに木の中でこちらを覗いたりしていた
そうだ、その調子だ
そしてむくむく太って食べられるが良い
なぜか、改築祝にその立派な高床式木造建築の前でパティーが開かれた
ヤギにはいつの間にか真っ赤な蝶ネクタイが巻かれ
奴も案外その気なのか
何時もより偉そうに地面から草を穿り返していた
しかし、こうなると雑草は無いが
餌が無くなりかねない
その問題に頭を悩ませながら
僕は部屋に引き込んだ
しかし、意外にこのアパートの周りの草は強健らしく
草に埋もれながら草を食べる贅沢物が
ようやく一周アパートの周りを食べ終えるころには
元の場所はそれなりの成長始めていた
僕は、草刈りをヤギに任せて深夜になると夜な夜なアパート内の清掃に乗り出すことにした
まず、壁の補強も目には就くが
それよりもまずは地面だ
ビール瓶が転がり
漫画が積む重なり
誰の人形だか知らないが
怖い事に日本人形が廊下に出た洗濯機の中で
微笑みの無い表情を誰とも知れず虚空へ向けている
もう、これは乗り出すしかないだろう
今まで知らなかったが先日アパートのベランダに子供の姿を見た
そうなると、ここまで魔窟にしておくわけにはいかない
行政がokを出しても責任が出たとき先輩も行政も何かしてくれるとは思えない
それどころか責任を押し付けて叱咤するだろう
僕は、地道にのろのろとカタツムリよろしく
いや逆に、雨の日は一日中引き籠り
比較的快適な日にはアニソンを聞きながら掃除に精を出す
途中 住人に叱咤されようが 怒鳴られようが 無視されようとも
僕の迷惑な掃除は続いた
中には、アンティークショップに売れそうなものもあったが
僕は、それを確認が取れるとすぐに鉄屑屋に引き取ってもらった
それはもう引きこもりとは思えない行動力と社会性だった
そして、ジンギスカンが、楽しそうに登っていたゴミとヤギの笑顔は消え去り
ただ、漠然とした汚いアパートが取り残されたのであった
しかし、依然として、子供の気配は感じるのであるが
その確認は取れず
最近見たとんでもない二大スターが共演したホラー映画の影響で
見た原作内の子供がにゃあなんてなかないかと耳を澄ませているが
今のところやはりその存在を確実に確認できない
やはりあれは僕と言うオタクが生んだ幻想と言う名の妄想なのか
僕は、漫画を読みながら眠りについた
「めぇええええええええーーーーええええ」
うるさい・・・