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2ニィ

そこは、僕が住んでいたボロアパート「きのはら荘」の一階部分だった

僕の部屋は二階であり

真夏の地獄から

女子は一回に住むことが許されているが

そこに住んでいるのは

わけありの熟女のような連中であり

もしうら若き乙女が来ても

出稼ぎの異国民だろう

僕と言う社会不適合者には荷が重い

いやもしかしたら、大陸を超えた異文化なら僕と言う人間を受け入れるだけの文化があるかも知れないが

今のところそんな人種が越してきたと言う情報は無い

では、僕は、どうしてそんな事を考えていたかと言えば

目の前に黒い正装をした葬式の参拝者が、せまっくるしいすのはら荘の前に

蟻の行列のように並んでいた

喪主はうちのおふくろのようだったが

何だろう僕は、死んだのに何でこんな所に居るのだろう

本当なら今頃見ず知らずの煉瓦造りの世界で第二の人生を全うしているはずが

梅雨のせいかじめじめした濁った空の中たたずむ醜態をさらしていた

しかし、見る人間見る人間すのはら荘の連中ばっかだ

まあ、仕方あるまい

ただ飯ただ酒が、ふるまわれるのだ

つい行ってしまうのだろう

最近では、一番端の老人が熱中症で死んだ去年の事だ

あの時は身寄りがなかったせいで大変だった

通帳には骨を燃やす値段も入っていなかった

代わりに部屋を埋めるほどの成人本の山

どうしろって言うのか

「このたびは」

内のおふくろは頭を下げて参拝者のそれらに答えていた

しかし、じめじめしているな

僕は、試に、死んだ俺の顔を拝みに行って見る事にした

「あなた」

階段を上がろうとした僕に、昔聞いたことがある声が聞こえた

おふくろであった

・・・ちょっとまて

僕と言う存在は、彼女に見えているのか

押し黙る僕に

「すいません順番にお願いしますあと署名」

うしろをみると不審そうな顔をする参拝者たち

「すいません」

僕は後ろに並びながらある事に気が付いた

どうやら、生身があるらしく

そして今の僕と言う存在は

過去の僕と言う存在ではないらしく

おふくろに僕だとばれなかったことから

外見からして違うのだろう

そこで僕は、ためしに、お決まりのように

自分の胸を、引っ掴んでみたが

「ないだと」と一人小声でつぶやくことになった

徐々に、列が短くなっていく

もともと少ない人間関係であり

僕の後ろにはだれもいない

さて、何てキラキラネームにしようか

僕は、レスラーみたいな体格の男を前に思案を巡らせた


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