~第17幕~
横浜刑務所に向けて護送車が走る。車内には零の破滅のメンバーが乗車していた。彼ら専用に作られた戦闘服を着用し、その説明を羽藤がおこなっていた。
「デザインが普段私たちの着ている物と違うのはあります。ただその素材にも特殊加工が施されており、防御に役立って動きやすい物にもなっております。あ、ここで報告が入りました」
羽藤の「報告」という言葉に全員が反応した。
「野神晶子容疑者、黒崎零との関与を自白したそうです……!」
全員が「やっぱり」といった反応を示しているので、力也もそれに合わせた。しかしそれを彼女が自白したということは何かしらの目的があるという事だ。彼女はいま拘置所にいるということで、皮肉にも格好のマトになっているのだ。彼女の雇う死神が彼女の救出に動きだすのは安易にイメージできるが、それは同時に罠である可能性も考えられる。力也は冷静に思考を深めた。
そうこうしているうちに彼ら一行は横浜刑務所に到着した。
「到着しました。皆様、くれぐれも“規約”をお忘れないように」
「今さらですよ。ねぇ、明神隊長?」
「あ、ああ……」
臨時特殊部隊『零の破滅』には特殊な規約があった。それは任務遂行まで白崎創を殺害してはならないというものだ。その任務とは黒崎零の捕縛、あるいは殺害を指す。この規約を破った者には当然それ相応の処罰が課せられ、部隊は即解散となる。誰もそんなことはしないと思うが……
やがて零の破滅メンバーは横浜刑務所の地下深くにある牢屋に到着した。
少年は牢屋の中でゆっくりと腰をあげる。「大勢で何だよ? 今さら俺を殺しにでも来たのか?」と余裕を持った微笑みをみせた。
久喜の眼力が血走っているようにみえた。力也が彼の肩をポンポンと叩くと、彼が「すいません……」と言ったので力也の見立ては違いなかったようだ。
「私たちは臨時特殊部隊『零の破滅』です。白崎創、今から提示する条件を呑むことで貴方を解放することをここに告げます。応じられますか?」
「おや? 何か懐かしい顔をみているような感じがするなぁ……」
「近づくな。話に応じないのならば私たちは撤退する」
「柵越しだから減るモンじゃないだろ? それはそうと、何だ? 零の破滅? 何だよ、何かの駄洒落か? あっはっはっは」
「お前の兄貴に関する事だよ。白崎創」
力也の一声に創の飄々とした表情が一変した。
「へぇ……あの兄貴か。いいだろう。興味がある。話を聴かせてくれ」
力也の目をみて創は決めたようだった。
史上最年少にして国内最凶の名を冠するとされた極悪人は幽閉1年余りにて保釈された。彼の身体は手錠と縄で頑丈に拘束されて、その同行を高沖隊員がおこなった。
「1年ぶり……いい空気だなぁ……。それでこれからどこにいくの?」
「治安部隊総本部だ」
零の破滅はこうして始動した――
残る4体の死神も始動し始めた――
ゲームの支配人達はある議題をもとに議論を重ねていた――
闇の中で行われた闘いは終わりを迎えて、そして新たな火蓋が切られようとしていた――
∀・)読了ありがとうございます。これにて第6巻終了です。新たな戦いは始まる予感がしてきましたね!第7巻からも引き続き宜しくお願い致します!




