~第14幕~
零とエレナは駅近くの高級ホテルをあとにして、横浜の街を練り歩くようにして巡った。緊急事態宣言が発令されたからか、人通りは普段より断然少ない。そしてどこを見渡しても自衛隊員や警察隊員が街中に配置されている。
「こんな時に電車にもタダで乗れて誰にも気づかれないなんて」
「零?」
「ん? どうした?」
「何ダカ楽シソウダナ?」
「なかなか経験できない事だからな。例え夢の中であっても、こういう貴重な体験って味わってみるものだろう?」
「マァ、ソリャアソウカ」
「それより、人目のつかない所を探すのが大変になるだろうな」
「エ?」
「やるのだろう? 仲間作り」
エレナは「アア!」と声をだして思いだした。
まだ零にはゲームの「ルール3」について何も話してなかった。しかし昨晩の死闘でエレナと零が倒した死神は一体もいない……と思っていたが。
「イチカバチカダナ」
「何が?」
「ウウン、人目ノツカナイ場所ヲ見ツケヨウ」
エレナが零の手を引っ張って先導する。「おい、どこに行くっていうの?」と微笑む零を見ると、何だか夢心地に溢れるようでいっぱいなエレナだった――
横浜市が非常事態宣言をだしたタイミングにて「横浜治安部隊2012」が結成されて、横浜市の中枢にその拠点が置かれた。自衛隊の指揮をとるは川崎一等陸佐と村上警視の2人を重点とした「横浜治安部隊2012本部」だ。
この得体の知れない戦争状態で警察サイドからは明神力也が重要部隊の隊長職に任命された。この日、彼は拠点に招聘された。
「明神力也です! 入室致します!」
久しぶりに行う作法であり、極度に感じる緊張感もあってなのか、自分でも分かるぐらいぎこちない声をしてしまった……
「ははは、まあ、お座り下さい」
「は、しかしそんなことは……」
「大佐もこう言ってくれているのだ。遠慮はするな。明神君」
「署長、私は大佐ではありません。一等陸佐です。ご訂正を」
「まぁ、でもこの部隊ではそういう話だろう? それで明神君よ、君の部隊の話は聞いているね?」
「はい、私以外は何でも自衛隊の面々が就くと耳にはしました」
「不安はあるかね?」
「いえ、ただ彼らが私の言う事を聞きやすいかどうかは分かりかねます」
「そう言うと思ったよ。安心してくれ。君に任せるのは単なる捜査でないのだ。特殊な者と事実を突き止めるチームの長を任せるというものだ」
「特殊な者と?」
「白崎創」
川崎がそう言うと力也は目を丸くし、その場は重く鎮まった。
「ふふっ、驚くのも無理はない。しかしこの世間を騒がす一連のテロ行動だが、あの『零の指弾』の白崎の義兄弟である少年が暗躍していると踏んでね。何でも彼と関わっていた綾間紳一郎が殺害されたらしいじゃあないか。それも我々が雇っていた元メンバーの手によって」
力也はただ唖然とするばかりだ。国内でも最凶犯罪者と名高い人物を釈放し、そして捜査メンバーに入れるというのだ……
「警部、気休めじゃないが安心して欲しい。我々から輩出する4名の隊員は皆、各部隊で優秀とされる将来有望な人材を確保しています。まずは会って頂き、是非判断をして貰いたい。必要でないと言われるのであれば、除籍は致します。どうでしょう?」
力也の体が震えてきた。どうなのだろうか? 今この場に翔はいない。このゲームを勝つ為にこの提案にのるべきか否か……
「しょ、承知いたしました。まずは会わせて頂きたく思います」
考える間もなく震える声で答えた。
「明神君、こういっちゃあ何だけどね……」
「はい?」
「君は何か知っているだろう? いや何か真相に近づいているのでないか?」
「知っているのでしたら、何でも話していますし、捜査を進めていますよ……」
「村上さん、ここまでにしましょう。独り言が多いとはいえ、彼があっち側ってワケではなさそうですし」
「まぁ……何にしても期待しているよ。明神君」
「は! ご期待に添う結果を残して参ります!」
力也はきちっとした敬礼をしてみせ、本部の署長室を去った。
独り言が多い警部。気をつけなければならない。そう思いながらも彼は彼と運命を共にする新たな仲間のもとへ向かった――
∀・)読んで頂きありがとうございました!
∀・;)えっと、一等陸佐やらのくだりで色々と事実と違う箇所があるかと思いますが、あくまでフィクションの作品なので笑って見過ごしてください。ちょっとめんどくさいなって思って調べ尽くすことはしませんでした(笑)さて、力也が創とチームを組む!?なんていう話になってきました。次号もお楽しみに!!




