~第16幕~
明神力也は自宅で休養をとっていた。もっとも、その夜に緊急要請の電話が鳴りやまない事態と面した訳であったが。
力也は風呂にゆったり浸かって疲れを癒した。リビングのソファーに腰かけ、テレビが連日報道している横浜の怪事件を眺めてく。いつものように妻が用意したコーヒーを手にとる――
その時に力也の左腕がもげた。
瞬時に激痛が走った。そしてバスローブがじわりと赤く染まる。だが不思議にも、激痛は一瞬で収まったのだ。力也の左肩からは不思議な光が発生し、その傷を治癒しているようだ。
この光景と遭遇した妻の雅美は青ざめて驚愕した。
「大丈夫だ……大丈夫。だんだん治ってきている?」
「大丈夫なワケないじゃない!? どうしたの!?」
「翔だよ」
「えっ?」
「このまま放っておいてくれ。後できちんと話すよ」
「そんな場合じゃないでしょうが!!」
すぐに雅美は電話を手にとる。
「電話をするな!!!」
力也は大声で妻を牽制した。そして自在に動く片手で電話機を奪い取った。この光景の異常さに遂に神経が持たなくなったのか、雅美は気を失った――
力也は家にある包帯を駆使して発光し続ける左肩を保護した。幸い利き手の右手が動くので何とかなった。この光源は熱を持ってなく、包帯を焼くという不都合も生じなかった。これで何とかなるなら医療費0の負担0だ。
問題は雅美の目が覚めた時にどう説明するべきか。力也は悩んだ。
そしてあれこれ考えているうちに電話がかかってきた。
この状態で現場にいったとしても、周囲はただ驚くばかりだろう。何よりも移動手段が使えないのだから話にもならない。電話にでることは敢えてしないままにした。
そしていたずらに時間が過ぎていく。やがて2階から物音がした。
駆け足で階段をのぼる。自室である部屋を覗くと窓が開けられており、その窓からは、ずっと会いたくても会えなかった息子が微笑んで父を待っていた。
「父さん」
「翔!!」
隻腕の父子は駆け寄ってハグを交わした。気がつくば、歳に合わず涙を零し喜びがとまらない力也がいた。
「父さん、色々ごめん……だけど」
翔はこれまでのことを話して詫びようとした。しかしそれ以上に気になって仕方ないことが反面にあった。
「まず病院にいこうか?」
力也に対して1番説得力を持った存在はずっと翔だった――
∀・)なんかこの親子も書いていて好きです(笑)力也さんってボクのなかではかなりごっつい雰囲気のオッサンなんですけど、翔のまえだとすごくチャーミングなんですよね。この章もそろそろ終盤。次号。




