~第15幕~
見覚えのない古めいた雑貨ビルの屋上にエレナ達は降り立った。
「ここはどこだ?」
「サァナ? 知ラナイ。中ニ入ルゾ。手ヲ離スンジャナイゾ」
「ああ、もう恥ずかしくもない。でも中に入ったら離せよ?」
秋も暮れに入ってきたのか、暖房も何もないここはやや肌寒かった。1階は何かの飲食店になっているらしい。2階と3階は誰かが住んでいるか何かしら事務所になっているかのようだ。4階は空室だが鍵が掛かっていた。
エレナの闇具現術によって施錠は容易に叶った。何かのクラブだろうか? ステージがあって、バーカウンターがあるその雰囲気は零には初めての場所だ。大きなソファーに腰かける。その気持ち良さに酔いしれそうな零。だがここにきて、気になったことをエレナに尋ねた。
「どうした浮かない顔してよ?」
「晴美サント九龍タチガ死ンダ」
「そうか、鬼道院は?」
「ワカラナイ。連絡ヲシテクレ」
「ああ、もうちょっと休んでね」
「ドウシテソンナ平然トシテラレル!?」
「何言っている、お前? お前こそ動じすぎじゃねぇのか? いつ俺達が死ぬのか分からないのに」
「レイハ変ワリ過ギダ!! 仲間ガ死ンデモ何モ思ワナクナッテイル!!」
「あは、あはははは」
零は笑ったかと思うと、ソファーから起きあがってすぐエレナの胸座を掴み、怒りを露わにした。
「元々平和だった俺の世界を壊したのはお前だろうが!! 俺は親友も殺され、彼女も殺され、唯一の親戚に裏切られて命を狙われて!! 俺をこんな戦場に駆り立てたのはお前だ!! お前に偉そうなことが言えるのかよ!?」
零が怒りをまき散らせてすぐ、同じビルの人間と思われる者が入ってきた。
「あんれぇ~今日は誰も使ってないはずだけどな~? 鍵閉め忘れたのか? もう若い連中ときたらいい加減な奴らばかりだの~」
このビルの管理者なのか? すぐに鍵を閉めて去っていった。エレナの影化によって救われた。エレナが電気をつけて、冷静な自分に戻れたようだった。
「すまん。俺が悪かったよ」
零はボソッと謝ってみせた。エレナは首を横に振り、作り笑いで応じた。
「でも、このゲームを生き抜くにはもう賢くやるしかない。俺は仕留め損ねたけど、俺も戦えるなら戦った方がいい。これからのことをお前と話し合いたい。それは応じてくれるだろ?」
「アア、勿論ソウダヨ、零」
零とエレナの間には確かな絆ができあがっていた。そして彼らの願いが何か、零は少しずつ見えてきた気がしていた――
「もしもし。鬼道院か?」
『おう』
「生きていたのか? 良かった!」
『ああ、お陰様でな。赤い液体に化ける奴を倒したぜ』
「敵を倒したのか! 手柄じゃないか!」
『ああ、だからもう俺は横浜からは出るわ。さらばだ』
「え?」
鬼道院は電話を勝手に切った。間もなく着信拒否にもしたようだ。
「逃ゲラレタカ」
「エレナ。頼めるか?」
「何ヲ?」
「アイツのところに飛んでいこうぜ」
零の瞳に何一つ迷いはなかった。エレナも自然と呼応した――
∀・)いや~なんかこう漫画的というよりアニメ的というよりTVドラマ的な感じがしてきた話でした。作者個人的にはですけど。鬼道院遂に死神ゲームから逃げるのかどうか。次号です。




