~第13幕~
宿敵だった九龍姉妹を殺害した明神翔だったが、失った右腕はどうにも戻ることはなさそうだ。せっかく分散した分身も元に戻さざる得ない状況となる。野神より学んだこの能力の活用も、もはやここまでだろう。
すぐ目の前に野神修也が立っているのだから――
「あらら~みっともない姿になったね? おじさん」
「五月蠅い。来てみろ。すぐに始末してやる」
「馬鹿言わないでよ? アンタのお蔭でボクも満身創痍さ。お互いここでやりあっても、何のメリットにもならない。何故ならこれもボクの分身だからね?」
「何が目的だ? 今更交渉しても無駄だぞ?」
「勿論、アンタをつけようなんて思ってもいないさ。それをされたら嫌だろう。それにミリ単位のボクの分身だって今のアナタなら殺せちゃう」
「だから何が目的だ! 早く用件を言え!」
「五月蠅い上司だね。まぁ、いい。どうせ今の状況だとアンタがこのゲームとるだろうから、この分身を殺すのも自由さ。だけどこっちにはこっちでアンタに提供できるものがある」
「何だ?」
「西園寺明日香の情報。現在地含め全て提供することができるよ?」
「…………見返りは何だ?」
「ふふっ、言いたくはないけど、ボクたちを始末するのを後回しにして欲しい。今ここでボクを始末して彼女の情報を失うのと、ボクを生かして彼女の情報を得るのではアナタにとって大きく労力が変わる。どうだよ?」
翔は少し考えた。修也は彼らしくもなく身体を震わせている。こちらの力に対して恐怖しているのも確かだ。そして今後つけてくるような真似があったとしても、半径100メートル範囲ならミリ単位で存在の把握すらできる。彼が話すことには何か裏があるようだが……
「わかった。後日落ち合うことにしろ。ただし日時と場所は俺から決めさせて貰う。それまでにつけてくることがあったら容赦なくお前達を標的にする」
「あ、ああ! いいよ! それで! むしろ好都合さ! ボクもアンタもこのナリじゃあ戦闘に臨めない。療養期間といこうじゃないか」
今から回復する時間を得たところでどうだろうか? この右腕が生えてくるとは思えない。しかし今すぐ戦うワケにもいかない。彼は考えたが1週間後、青風園近くの河川敷で待ち合わせるように話した。
「らじゃ! じゃあお互いお大事にしよう!」
修也の分身は何百匹もの蜂に分裂してその場を去っていった――
修也の本体はすぐに野神家のモニター室へ向かい、晶子と打ち合わせた。
「姉ちゃん、聞きたい事とお願いしたいことがある」
「何よ?」
「ボクらのお家にあるドローンはあと何機あるの?」
「50機ぐらいよ……」
「わかった。可能な限りそれを機動させて、横浜市内の隻腕になった人を探しだして。明後日にはボクも出動する。まずは外科を当ろう。ビンゴなら明神翔の雇用主だ……!」
「修也、それは本当のことなの?」
「ああ、今直接会って来たところ。間違いなくその状態だ」
野神修也に焦りはあった。しかし自然と笑みが浮かぶのも違いはなかった。彼らの命を懸けた闘いがそこにあると確信したからだ。
「目にものを見せてやる……!」
廃工場での闘いの幕が下りても尚、死神達の戦いは続く――
∀・)ひゃ~しぶといぜ野神修也(笑)廃工場の戦いの幕が下りたと書かれてますが、時系列ではそうなっているということです。ほら、先週は西園寺さんが何かを見つけたでしょ?次号(笑)




