~第12幕~
西園寺が投げた手りゅう弾は戦況を混乱させたようだ。そしてそこに乗じて多数の命が奪われた。彼女の思惑通りでなかったが、ラッキーだったと言えば、そうであることに違いはない。
彼女はうつ伏せになったままモニターで死神達の状況を知った。大きく株が動きまわっている。しめしめ。彼女はニンマリして立ち上がった。
頬に痛みが入る。いや、立ち上がろうとした時に攻撃を仕掛けた人間がいた。首を狙ってきたのだ。咄嗟に反応できたことで間一髪救われた。
振り返るとそこに当人がいた。男子高校生か? とても若い青年だ。「はぁ、はぁ」と息を切らして割れたガラスを手にしていた。しっかり握りしめているのだろう。彼の手からも血が滲みでていた。
頬を触る。見事に切り傷が残った。血が滴り、痛みも治まらない。
「あ? 何やった? 何やったよ、クソガキ。何やったって聞いてンだああああああああああああああああああああああああああああ!!」
西園寺は激しい怒号をあげると、彼女の親指を噛み、彼女の“1度目の自爆”をした。その爆発たるや手りゅう弾の爆発に劣るものの、近くあったもの全て吹き飛ばした――
彼女は目を覚ますと、廃工場コンテナから1階に落下しているのを確認した。あの少年は今の自爆で命を奪えただろうか? すぐにモニターをたちあげようとしたその時、彼女は一瞬で凍てつかされた――
「あ~あ、呆気ないわね。これが私のランク1つ上?」
氷山由紀は西園寺の氷塊をゆっくりと指で撫でた。そして拳を握りしめる。氷塊に少しずつヒビが入っていることに気づくことなく――
西園寺は“2度目の自爆”を遂行した。
由紀はまさかの奇襲に応じることができず、その身を全身やけどに覆われた。また胸座を掴まれて持ち上げられてもいる。まったく想定してなかった光景を目の当たりにした。
「何だ! この豚野郎はよぉ! 私が単なる炎とでも思ったのか? ああ!?」
「ぐふっ……ぐっ……ぐっ……う……」
由紀は両手で西園寺を振り払おうとしたが、呆気なく息をひきとった――
西園寺は由紀の遺体を投げ放った。彼女からも光粒子が少しずつ放たれて、やがて死神としての命を亡くした。
西園寺明日香の能力は怒気爆発。怒りが高まれば高まるほど、大きな爆発を起こすことが出来る。また蘇生させた死神は勿論、10分以上触れた者に爆弾を仕掛けることも可能。主な武器はいつでも湧現可能な手りゅう弾だが、1日に3回の自爆が可能だ。しかしその都度体力を消耗させるデメリットがある。
彼女は息を切らしながらも、離脱するタイミングを見計らった。また奇襲をかけられるかもしれない。3度目の自爆は大事に温存しておいた方が良い筈だ。周囲を見わたして、警戒網を張る。何の偶然か、彼女は面白いものを発見した。そして厭らしく微笑んでみせた――
黒崎零は目を覚ました。体中が痛い。大きな爆発で即死したのかと思ったら、まだ生きてはいるようだ。次第に妙な違和感を肌にした。
「空?」
そう、彼は空を飛んでいた。横浜のネオン街をヘリコプターで遊覧しているかのよう。しかしその理由はすぐにわかった。
「エレナか。これは思ってもないサービスだな」
「サービスジャナイヨ。零ガ無茶スルカラダ!」
「助けてくれたのか?」
「当タリ前ダヨ。馬鹿」
「ありがとうな」
「………………」
零は目を閉じると再び眠りについた。横浜の夜景を楽しみながら眠りにつく日がくるなんて。これが悪夢でもイイ夢な気がしてきた――
∀・)西園寺明日香をちょっと紹介の話でした。あ、由紀さん、お亡くなりになりましたね。南無。ひとまず死神という死神は全員でてきたところで零くん&エレナは離脱です。あと多分鬼道院も(笑)でもまだどうなったかわからない死神たちがいますよね?まだこの戦いは続きます。次号。




