~第4幕~
横浜市の工場エリアから少し離れた位置に廃工場があった。
謎の爆破事件があり、警察の捜査が暫くずっと行われていた。
しかし何もなかったことから誰も寄り付かない立ち入り禁止区域となった。
「あの虫ンコ、ここに集まるって言っていたよなぁ?」
胡坐をかいて顎に手を当て高みの見物をするは、その派手な色をした長髪をカチューシャでまとめた死神、西園寺明日香だった。
「罠かもしれない。場合によって俺じゃ対応できないかもしれないぞ」
腕を組み、西園寺の横に並ぶのは彼女によって葬られた死神、真中豪だ。彼は彼女の召喚を受け、蘇生した。しかしその蘇生における契約は恐ろしいもので、彼の肩には大きな爆弾が仕掛けられていた。
「ちゃんと働けよ? 役に立たなかったら、どうなるかわかっているだろ?」
「わ、わかっているさ…………しかし多量の虫が一斉に押し寄せてきたなら、俺じゃ手に負えん」
「そうなったらアンタがもう一回爆死するだけだろうが? ああ?」
「…………ああ、そうだったな」
元々この女と契約するつもりはなかった。
しかしいつの間にか肩についた爆弾が爆破し、この世界で経験した死を再び体感するのは耐えられなかった。彼は彼女に怯えるしかなかった。
この工場は真中と彼の仲間が働く工場だった。だが不運な爆破事故と規模のある火災が生じたことにより、会社従業員のほとんどがその命を失う。かろうじて生き残った後輩は多額の借金を背負うこととなった。
このゲームを制し運命を変える、その戦いに彼の雇用主として共戦したのは誰でもない、生き残ったその後輩だ。だが皮肉にも彼はこの世界で真中と共に爆死をも共有してしまった。
つくづく不幸な人生だ。これがどうして嘆かずにいられよう。
そんな葛藤がありながらも、真中は西園寺の援護を全うすることに集中した。自分が召喚されるまでに気持ち悪い色をした虫と友達になったらしい。自分と同じく彼女によって始末され召喚された死神か? 余り深く考えるのは止した。
「お? なんかやってきたぞ?」
ゾロゾロとやってきたのは老若男女様々な成人16人だ。
西園寺と真中には気づいていない。ゲームとは無関係なのか。真中には全員がキョロキョロと周囲を見渡して怯えた顔をしているのが気になった。
「おい、殺しにいけよ」
「え?」
「殺しに行けつってんだ! また死にたいのか! ああ!?」
「ウ、ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
真中は足元に置いていた巨大な鉈を持ち、雄叫びをあげて飛び降りた。
彼の能力は超筋肉強化。自身の筋肉をどこまでも強化することができ、またそれは時間経過すればするほど強度が増すものだった。
死神ゲーム無関係者の命を奪うことなど容易い。そう思っていた。
そう思っていた矢先。その場にいた16人の成人が全て破裂した。
「!?」
真中は血まみれになった。そしてその彼の後ろから一人の白衣を着た青年が現れた。
「初めまして。筋肉バカが相手で良い実験結果がでそうだよ。ふふふ」
「お前は?」
「久保達矢。久保先生と呼んで欲しいものだね」
「くっ、すぐにやってやる!」
そう言って鉈を振り上げた真中の身体が止まった。
「冥土の土産だ。特別に無料で講習してあげるよ。最強の力ってヤツをね」
久保は眼鏡越しに厭らしく微笑んだ。微笑んでいたのは西園寺も同じだった――
∀・;)読了ありがとうございます!先週に引き続き日曜1時更新で申し訳ないです。ただリズム的に今週もこの時間に投稿しないと整らないので、こうしました。次回からは通常どおり土曜23時~で更新していきますので、よろしくですー!
∀・)公言します。開戦しました。とくとお楽しみください☆彡




