~第2幕~
鈴木政宗は弟、鈴木太郎に憑く死神だ。
彼はこれまで死神ゲームの参戦を控えて、障碍者である太郎と寄り添う時間を大切に過ごしてきた。彼は消防士だったが、横浜市内でおきた大規模火災で救助に間に合わず殉職した。
太郎は両親と政宗の愛情を受けて育った。しかし政宗は若くして命を亡くし、両親は認知症などの病を患って施設入り。彼も軽度の知的障害と重度の下半身不随なる障害を持つことから、両親とは別の福祉施設に入所した。
とても古びた建物で衛生的に良いとは言えない。さらに職員による暴力に悩まされてもいた。そこに“自分以外には見えない兄”がきて救ってくれた。
太郎にとって政宗はヒーローで、政宗にとって太郎は愛おしい弟だった。
死神ゲームの説明をしたが太郎は何が何だかわからず、ただ笑顔いっぱい兄に抱きついた。政宗もそれを受けいれて、このまま何もせず亡霊として太郎に寄り添う生活を全うしようとした。結婚してからというもの、なかなか太郎に構ってあげられなかった申し訳なさもそこに詰まっていた。
ときどきモニターが作動して死神の紹介をおこない、死神ゲームへの参戦を促してきた。しかし彼は「このままでいい。願いが叶わないでいい」と返事するのみで何も動かなかった。
そんな平和な日常を壊したのは数匹の虫だった。
禍々しい色をした蝿のような虫が太郎を目がけて飛んできた。
政宗は懐にしまっていた小刀で害虫を駆除した。痛みが走る。ただの虫ではない。害虫はまた別方向からやってきた。政宗は能力を発動させ、日本刀を手にした。その途端に虫は退いた。そして離れた場所で話し始めた。
『ひゃ~! 凄いね! それで戦うのかい! まさに政宗だね!』
「お兄ちゃん!! 虫が喋ったよ!?」
「太郎! 動くな! 只者じゃない! 俺から離れるな!!」
『うふふふ! そうだなぁ~殺そうと思えば簡単に殺せるけどさ、チャンスをあげてやってもいい。どうする?』
「チャンスだと?」
『今度死神が一堂に会する場がある。そこに来てその刀、見事なチャンバラ披露願えたら嬉しいなぁ』
「いつ……どこである?」
『場所を記した手紙はこのお家のポストに入れたよ。じゃあね。ちゃお!』
「くたばれ!」
政宗は即座に虫を斬り捨てた。
「お兄ちゃん、その剣は!?」
「これ……ああ、驚かせたな。ごめん。気にしないでくれ」
「ううん! かっこいいよ!」
「お前なぁ……」
政宗の武器をみて目を輝かせる太郎に彼は微笑んで返すしかなかった。
この笑顔、護りたい――
彼はやはり自分がするべきことと向き合うしかなかった。そして決戦の日、紙に記された廃工場へと一人向かった――
∀・)お久しぶりです!!目途がたったので連載再開いたします!!いきなりの新キャラ登場でしたね(笑)本年も毎週土曜日23時~で更新していきます!!お楽しみに!!




