~第16章~
黒崎エレナの躍動。それはモニターを観覧する死神たちだけでなく、彼らの行動を水晶玉から覗く者たちの心境をも変えていた。
「どうやら、ダークホースがよもやの活躍をしそうだな」
「まだわからないわよ? ぽっと出の坊やかもしれない」
「もともとこのゲームは誰がどんな理屈で勝つかわからないものでしょう? これまでのゲームだってそう、このランクが適正な診断のもとで行われているのかもわからないのですから」
「機嫌が良さそうね、テッド」
「それは僕の推しが未だ1番ですから。マダムは素直ではないですね。推しがこんなにも躍進しているというのに」
「ええ、私のところから死神となった者は彼女を除いて全員がもういないのよ。だからこそ、過剰な期待をしたいとは思わないの」
「獅子は我が子を千尋の谷に落とすというやつか」
「それとは違うわよ」
「なぁ、ゴンゾーラよ、お主は誰が勝つと思う?」
「………………」
第1代勝者ゴンゾーラはただ悠然とその立場から水晶玉をみていた。
「王はこんなことに興味は持ちませんよ。牧師」
「けっ、面白味がないと楽しくならないだろう」
「うふふ、あっちの世界をかきまわしている男の子、貴方にそっくりね」
「ああ、私は彼が勝つことに可能性をかけているぞ。マダムだってそうだろう?」
「私は……」
第3代勝者、メアリー・ド・ゴールは天井を飾るシャンデリアを少し見上げ、こうぼやいた。
「彼が答えに辿りつけばいいと思う。勝っても負けても、それでいい」
彼女が視線を水晶玉に戻すと、そこには零とエレナが語らう姿が映しだされていた。彼女はそっと席を立ってどこかへ向かった。
「あれ? いいのですか? マダム? そろそろ決戦がはじまりますよ?」
「ちょっと外の空気を浴びたくなったのよ」
「月の光か」
「ふふふ、牧師様は何でもお見通しなのね」
誰もメアリーを止める者はいなかった。
彼女もまた月光影を用いた能力者で、最弱と思われていた死神だった。
しかし彼女の力が凄かったわけじゃない。全ては彼女を勝利に導いた雇用主である息子、トムソンの力によるものだった。
あれから何百年もの時を経て死神ゲームがはじまっている。
黒崎零がトムソンであるならば、彼は変わるだろう。
それはその世界でしかみられない彼の姿そのものに違いない。
メアリーの世界から見る満月もまた美しさに満ち溢れていた――
∀・)第4章・完!でございます!そう、死神ゲームはこれまでのゲームの勝者である死神たちによって運営されているんですよね~。そして各々から認可を受けた死神たちが戦うと言うね。今回のメアリーの心のなかで唱えた言葉は、じつは結構大事なところだったり。第5章、ついに死神が結集します!楽しみに!!




