~第14幕~
興味が湧いたらインターネットで検索をかけて調べる。そんな何でもできる時代になった2002年でも、興味が湧いた人物が興味が湧いた直後に現れるなんてことはそうそうなかった。
目の前にいる少年は警察がマークするほどの危険を秘めた存在だ。ここまでワクワクするようなことはない。鬼道院は柄にもなく丁寧にコーヒーを客人へだしてみせた。
「ああ、いいですよ。そんなに長居するつもりないので」
零は手を振って遠慮してみせた。
「まぁ、そんな事言うなや。色々聞いてみたいけどよ、創の兄貴なのだって?」
「ええ、まぁ、らしいですね。実感してないけど」
「会ったのだろう? 刑務所でさ?」
「ええ、会いました。でも、なんか俺とは全然違う世界の生き物みたいで……」
「そうか? お兄ちゃんも警察に睨まれているらしいじゃん?」
「そうですね、あの刑事さん、なかなかしつこくて」
「どうやってここがわかった? それとさ、なんでここにきたのかな?」
「質問が多いですね(笑)答えたら俺の質問に答えてくれますか?」
「おう」
「ここはあの刑事さんをつけてきました。電話番号はこっそり携帯を拝借して鬼道院さんの電話番号をみつけました。鬼道院さんと綾間さんが繋がっているとは創が教えてくれましたから」
「なるほどなぁ」
「ここに来た理由はたった2つのことを聞きにきただけです」
「ほお、何だ?」
「俺の友達の河村って奴の従兄が探偵をしているのですが、ゼロの指弾の調査をしているなかで行方不明になったみたいで。俺の友人はその事実を探求して、何者かに殺されてしまいました。俺が発見した時には死体になっていてね……知っちゃあいけないと知っていても、知りたくて」
「そうか、その友達が死んだ件、お前が疑われているぞ?」
「そですか。構いませんよ。本当の事を話してくれたら本当の事話しますよ?」
創とは違う。だが鬼道院の直感は働いていた。コイツは只者じゃない。
賢い。何か行動を起こそうとしている。自然と彼はにやけていた。
「くくっ、まぁ変な嘘は通用しないから言ってやるよ。その従兄さんは警察の命令で始末されたよ。ゼロの指弾……あれは創が作った世の中を変えてしまう物の存在があって、内密にされている。普通ならオウム以上の脅威とされでもいいぐらいの存在だったぜ。俺達はね。だから従兄さんはご愁傷様としか言いようがないな。本当可哀想だったよ」
「アンタが始末したのか?」
「あ?」
「失礼。いや、警察自ら始末するのはないと思って。ちょっと聞いてみました」
「ああ、そうだよ。直接手をくださしたのは俺さ。ごめんな」
零は俯いた。
なんだ? この程度の事を聞きに来たのか?
鬼道院は拍子抜けした。ここでコイツを始末して綾間へ手土産にしていいのかもしれない。だんだんと彼の考えが変わろうとしたその時、彼は目にした。
零は笑っている。笑っているのだ。
「ありがとう。スッキリしたよ。お礼に教えてあげるよ。こないだ飛び降り自殺した権藤元太は俺が殺した。そしてあれは自殺に見せかける為のフェイクだよ」
「なに?」
「信じちゃくれないよな。なぁ、じゃあ2つ目の質問いいか?」
やはりコイツは只者じゃない。
「俺の後ろにいる人間がアンタには見えるか?」
「人間?」
鬼道院はポケットから凶器をとりだそうとしたが、時すでに遅かった。
「殺~し~て~や~るぅ~♡♡♡」
鎌を持った女と2丁拳銃を構えた女が零の背後にいつの間にかいた。
晴美の発砲によって鬼道院魔裟斗の脳は飛び散った。
「うふふふふふふふふ! 快感! 快感!!」
晴美は鬼道院の体に馬乗りになって、何発もの銃弾を彼の頭部へ撃ち込んだ。やがて彼の顏の原形はなくなった。零は静かにただそれを見つめた。
そして目を閉じて呟いた。
「河村、河村さん、ちょっとは報われたか……」
晴美が狂喜乱舞し尽くすと、鬼道院の血の匂いと静かな空気だけが漂った。
「あ、ごめんなさい、私ったらはしゃぎ過ぎちゃって……」
「別ニイイヨ。ソレデ、零ハコイツヲ“証人”ニシテイイト?」
「ああ、計画通りいく。だけどちょっとこの家のなかをみたい。いいか?」
零はそう言うと鬼道院の事務所内を満遍なく探索した。
「おお、これはいいな。こういうのがあると思ったぞ」
零はある物を拾いあげるといやらしく微笑んでみせた――
∀・)晴海ママ久しぶりに凶器が湧いたの巻でした!今回と次回の内容をよくよく理解するために「SHINGAMI GAME」という本作のルールブック(でも作品です)を参照してくださるといいかもしれません。何かダークな方向でも目覚めた零くん、次回何をするのでしょうか!?また来週!!




