~第13幕~
綾間は「虎の子探偵事務所」なる鬼道院の居住する彼の事務所を訪ねた。
月に2回は通っている事務所だが、ここのところ久しく訪ねてはなかった。
「おう、久しぶりじゃないかよ」
思っていたとおりの言葉がきた。
「それで? 創の兄貴ってどんな奴なのよ?」
これも思ったとおりの言葉に展開だ。
ソファーに腰掛ける鬼道院魔裟斗という男は数年前まで凶悪犯罪グループの一員であったが、いまは警察暗部の仕事請負人となっている。この探偵事務所もいわばカモフラージュとして機能しているものに過ぎない。
綾間は黒崎零が白崎創の義理の兄であること、そしてここ最近多発している凶悪事件と関連している疑惑があるという話をした。
鬼道院の瞳は輝いているようだった。まるで少年誌に夢中になる少年のよう。派手な迷彩服に濃い髭を生やした柄の悪い青年そのものだが、その雰囲気には幼稚さがあった。
やはり黒崎零とこの男は会わしてはいけない。その直感に違いはなかった。
「だけど、何がしたくてそんなこと始めたのだろうね?」
「俺の予感にはなるが、ひとつ思いあたることがあるな」
「何?」
「お前が始末した……例の探偵の従弟が殺害された」
「ああ、あの探偵さんの」
「その付近に黒崎零の髪の毛が落ちていた」
「へぇ~じゃあ、それってさ」
「ああ、間違いなくそうだよ」
「それで? そうだとして何が思いあたるっていうの?」
「創がつくった犯罪集団と違う組織を形成する。そして何かを起こそうとしている……俺のなかではもうその仮説は固まってきている」
「ふ~ん、まぁ、本人に聞いてみないとわからないよな。案外普通のヤツかもよ。はははっ」
結局はただの談笑で終わった。
車にもどった綾間へ1本の電話が入った。明神警部だった。
『いま何している?』
「鬼道院と会っていましたが」
『そうか。署にもどってくれ。どうもきな臭いことがわかってだな』
「やれやれ……横浜の街はどこもかしこもいかれてますな」
『気を確かにしろ。我々が冷静にならなければ、この街はまだ混迷するぞ』
「わかりました。ただちに向かいます」
綾間は電話を切ると溜息をついた。
どうしても黒崎零が横浜中で起きている一連の事件の糸をひいているように感じてやまなかった。綾間は車を警察署に向けて走らせた。
鬼道院はソファーに腰掛けたままテレビを眺めていた。
綾間の話は実に興味深い話だったな。そう思っていた矢先だった。
電話が鳴った。見覚えのない電話番号だった。
「もしもし?」
『もしもし、白崎創の義理の兄です。お話できますか?』
∀・)いやぁ~盛り上がってきたなぁ。作者的にだけど。ちなみに鬼道院は2度これまで登場しています。どこかわかるかな?また次週!!




