~第10幕~
真夜中遅く日付が変わるその刻になっても、零、エレナ、晴美の3人は会話を交わし続けていた。いや、作戦会議というべきか。その指揮は零がとっていた。標準は今週末にある死神たちの集いにあてられた。
エレナから「証人」の話も聞いた。ランク1位の九龍姉妹の力を味方につけているだけでも、充分な戦力で迎えると思える。しかし、ありとあらゆる点で用意周到でなければいけない気が一同にあった。
「そもそも、その死神たちの集い、誰が提案しだしたの?」
「野神トイウヤツサ。ドウヤラ零ノ知リ合イラシイ」
「へぇ~零君の?」
「ああ、もう辞めたけど、バイトの先輩さ。その家族か友人か。黒いパーカーを着た男が死神だ。俺は1度目にしている。ただ、先輩の家は資産家の家系。経済的な力を以てして何かしてきそうな気もしなくはないな」
「つまりどういうことよ?」
「何かの罠を仕掛けるとか」
零は冷静に今自分達が置かれている状況を整理していた。それもその筈だ。敵になるものを集めて、自身のリスクをただ背負うだけなんてありえない話だ。
「野神ノ力ハ『虫』ラシイナ。奈美ガ話シテイタ」
「単純に敵を減らす事が目的なら自分は来ないと思うけどな……」
「じゃあ、やっぱり行くのをやめたらいいのでは?」
「罠ナラ罠ヲ逆ニ仕掛ケタライイサ」
「は?」
エレナはどこからかトランプをだしてみせた。
「今カラババ抜キヲシヨウ」
エレナの突飛的な提案に晴美は尚も呆気にとられた。何がしたいのか?
「おう、気分転換ってヤツだな」
意外にも零はエレナの提案に乗った。
この2人、ここ数日でようやくコンタクトをとるようになったと言うのだが、意思の疎通が全く問題なく、まるで阿吽の呼吸のごとくとれているのが不思議であった。もともと家族だからか? それともこれまで零が嫌煙していたとかいう話自体が嘘なのか? 色々考えさせられながらも晴美は2人と一緒にババ抜きを始めていた――
エレナが6枚、零と晴美が5枚のカードを持つ。エレナがジョーカーを持つのが目に見えてわかっていたが、何かハッタリがあるのではないだろうか?
晴美はエレナから1枚ひいた。それはジョーカーだった。
ここでジョーカーをひいてはまずいが、それを悟られるのもまずい。
今度は零が晴美からジョーカーをひいた。若い少年だからか、思わず笑っていた。するとエレナが零から1枚ひく。エレナは手元にあるペアを揃えて捨て、残り3枚とした。晴美が1枚ひく。晴美も1つのペアを揃えて残り3枚とした。エレナは残り2枚となっている。
零が晴美から1枚抜きとって、晴美のカードは2枚に。零はペアを揃えて3枚とした。なんてことないババ抜きの終盤戦だ。
ところがここからおかしかった。
そこから何周してもペアが揃わなかった。
ジョーカーが晴美の手元にもきてない。ただカードが流れているのか?
突然に零が大笑いをはじめた。
「はっはっは! こんなの終わるワケないだろ! 悪趣味にも程があるぞ!」
零は手元にある3枚のカードをみせた。ジョーカーが2枚と、クローバーのキングがそこにあった。
「何よ! このイカサマ!」
時間が無駄にされたようで晴美は怒ってみせる。しかしエレナは動じなく、淡々と説明をはじめた。
「コノゲームハジョーカーガ2枚、ソシテ『ペアニナラナイトランプ』5枚ダ。イワユル『トラップ』サ。2ツノ罠ガ仕掛ケテアッタガ、ジョーカーノトラップハ零ガ迫真ノ演技デ尚モ罠ヲシカケタ。罠ニ罠ヲシカケルトハソウイウ事ダヨ」
感情的になってはいけない。彼女が何を企んでいるのか、少なくとも晴美はここでわからないといけない気がした。
精神を研ぎ澄ます。そうだ、そもそも死神の集いの作戦を練ることから、この遊びもはじまった。そして罠を罠で仕掛けると話もした――
「まさか囮……!?」
エレナはニッコリして頷いた。
「コレデ最後マデ騙サレルヨウナラ、貴女ニソウシテモラウツモリダッタヨ。デモ、ワカッタノナラ私タチトオナジ立場ニイテクレテイイ。コレカラツクル“証人”ニソノ役目ヲ果タシテ貰イタイカラナ」
エレナの笑顔が不適な色を帯びた。
この死神、召喚したついでに相手の力量を図っていたというのか?
奇妙な緊張感とともにまだまだこの夜は続くようだ――
∀・)3人でトランプの巻でした(笑)ここにきてようやく話をするようになってきた零君とエレナの絶妙な一体感。違和感あるかもしれませんが、死神ゲーム以前から2人は親近な関係にあった証なんですよね~。おっとネタバレはしませんよ(笑)まだまだ夜は続きます。次週!!




