~第6幕~
夕焼けが街を染め始めた頃、エレナたちの作戦が遂行されるなかで零たちは公園のブランコに乗って会話を交わしていた。
「で、その死神が集まる場っていつあるの?」
零が本題を切り出すようにして美奈に問いかけた。この案件は同盟を結んだ際に奈美が切り出した話にもなる。今、彼の心中の大半を占めているトピックになっているようだ。証拠に今日のデートでは手は繋げども、ひとときも浮かれた表情を見せなかった。
「たしか11月の17日、今度の日曜日になる……」
「そうか、美奈は行くのか?」
「う、うん……一応能力が使えるからね。零君は?」
「行くさ。もうこの理不尽な世界にも慣れたし。そして、警察にすらも睨まれてしまっている。何かが一気に解決できるのなら、俺はそこに尽力したい」
「あの、聞いてもいいかな?」
「何だ?」
「その……零君とエレナさんの願いって何?」
「さぁ? 俺は突然巻き込まれた。姉にそっくりだけど、エレナが何者なのか俺にはわかってない」
「何それ?」
「本当のことさ。俺には何もわかってない。ただ、突然こんな事に巻き込まれたって話だ。今はただ『死ぬ』ことを避けるのに必死になっているだけさ」
美奈の方を向いた零の目は虚ろで、どこか切なさを滲ませていた。
「そうなの……私、私ね……」
美奈もどこか本音が言えそうな気がしだ。
「最初、奈美が現れた時に、驚きしかなかったの。幽霊が現れたようにしか見えなくて。だけどね、それまで一人でずっと施設でやってきた孤独感が救われるような気がして、奈美に教わるままにこの世界のことに慣れたの。でも、でもね、何だかそれもしんどく感じはじめた時に零君と出会えたの。それで……」
美奈はもうどこか止まらないようだった。
「君と出会って、君と私はどこか似ているなって感じたの。それから、気づけば私は零君のことで頭が一杯になって……!」
美奈はそのまま自身の唇と零の唇を重ねようとした。
しかし零は手でそれを止めて、首を横に振った。
「ありがとう。気持ちは受けとめている。でも、今は目の前の事に集中しよう。“全てが終わったら”さ、真剣に美奈の気持ちも考えてみるよ……」
そう言って微笑む零は美奈にとって誰よりも優しさを持った人間に見えた。
「じゃ、じゃあ、せめて1つお願い聞いて」
「お願い?」
「帰りも手を繋いでくれますか?」
「ああ、それぐらい。喜んで」
零の笑顔はやはり誰のそれよりも、美奈にとっては眩しかった――
夕焼けが沈む頃になって、奈美は権藤元太の遺体のあるマンションの一室へやってきた。エレナから「遅イゾ~」と言われたが、エレナに腹を立てた腹いせに、スーパーで盗み食いをしていた事は彼女だけの秘密にした。
奈美は病院でコピーした車椅子をマンション玄関より具現化して持参した。
エレナと2人がかりで車椅子に元太の修復した遺体を乗せる。
その時に感じたことがあった。
「エレナさん、アンタ結構力持ち?」
「ソウカ? 自分デ意識シテナイガ」
「うん、まぁ、いいや。それで? これをどこに運ぶの?」
「アア、運ブ訳ジャナインダ。“演ジル”トイッタホウガイイナ」
「演じる?」
どうやらこの計画は曖昧なものではないらしい。この会話をする中でまたも奈美は異変に気がついた。
「ねぇ? この部屋にあった血痕はどうしたの?」
「アア、消シタヨ」
「消したって!?」
「アア、詳シクハ教エラレナイ。教エテ欲シクバ、貴女ノ能力ヲ教エルコトダ」
「あははは、1本とられちゃったなぁ。じゃあ、この車椅子は私が押してくよ」
「マテマテ」
「え?」
「車椅子ガ寝テイル(死んでいる)人間ヲノセテ勝手ニウゴクノハ不自然ダ。ダシ、ココカラ街ノナカヲ移動シツヅケテモ、オカシイダロウ?」
「それもそうか……あ!」
「ドウカシタカ?」
「あなたたちの考えがわかったかも! 私にもできることがある。紙くれる? あと、彼が書いた書類か何かあれば、私にも協力できることがある!」
そう言って厭らしく微笑む奈美には妙な確信があった――
∀・)心ごと、止まらない。もう、あなたにドラマはじまっている、ジ~ン、ジ~ンな美奈ちゃんのパート&エレナの能力が何だ!?な回でした。エレナ&奈美ちゃんの発想とはいかに!?次回乞おうご期待を☆




