~第5幕~
奈美とエレナは某マンションの1室に辿りついた。
「1306、ココデ間違イハナイナ」
「鍵かかっているじゃない?」
「大丈夫ダ。コノ鍵穴ガ空洞デアレバ私ノ物ニナル」
「アンタの物になる?」
エレナが鍵穴に手をかざすと「カチッ」という音がしてドアが開いた。
「凄い! 手品みたい!」
奈美はただ感心するようで、エレナが能力を使ったことを悟った。
やろうと思えば、能力をコピーすることも可能だ。
それでも彼女はしなかった。コピーをしたとして、その行為は美奈にも共有される。そうなれば黒崎零に一途な彼女が何をしでかすかわからないからだ。
今はこの死神の観察に徹するのが得策だ。そうして奈美は気持ちを落ち着かせた。少なくとも今は「同盟」にあたる関係なのだから。
エレナたちが入った家のなかにあったのは巨漢な男の死骸であった。あたりには彼の血痕が飛び散っている。
「こりゃ~また派手にやったね、お姉ちゃん」
「ヤラナキャ、ヤラレルダロ」
「それもそうか。で? どうするの?」
「ココカラガ本題ダ。コイツヲ持チ運ブコトニスル」
「持ち運ぶね……こんなでかい死体、私達2人じゃ無理じゃなくて?」
「アンタノ“光”ヲ使ウ」
「光? 何に使うのよ?」
「零ニシテイタ傷ノ治療ヲ行ウ。ソシテ移動ヲサセル」
「移動するって、私達2人で持ち上げるって言うの?」
「車椅子ヲモッテコイ。ソコニ乗セテカラ、動カシテイク」
「車椅子って? そんなもの私ら持ってないよ?」
「近クノ病院カラ盗ンデコイ。嫌ナラココデ留守番シロ」
「なっ!? 何よ!? それ!? 人使い荒いにも程がある!」
「ジャア、ナニカ知恵ヲダシテクレ」
「………………クソッ、わかったよ」
奈美は舌打ちして、その場を去った。
まんまとエレナのペースで動かされている。いや、黒崎零の手の平のうえと言った方が正しいか? こちらの能力を悟られないことも大事だが、このままだと彼女の能力もわかりはしない。
「ある程度は協力する姿勢をみせなきゃダメか……」
奈美はぼそっと呟いてマンションをでた――
∀・)奈美&エレナのコンビ回でした。なんでしょうねこのコンビ(笑)お互いに能力が悟られないようにしているこの関係性、何気に好きです。もう少しありますので、ご期待&お付き合いを。ちなみ今回でてきた死体は元太という人の遺体になります。忘れた人は前章読んでね(笑)




