~第4幕~
遂に死神“エレナ”が登場!!
零は無我夢中で走って青葉台のデパートのトイレに入った。安全な場所などあるのだろうか?
携帯電話も何もない。警察にいって事情を話しても信じて貰えそうにない。それどころか、佳奈美の事故の件で散々な事情聴取でもとられることだろう。学校も休んでしまっているのだ。心あたりがないなんて言えない。
思えば、何故家をでてしまったのだろうか。今一番信頼がおけるのはメールの件で理解者となってくれている真人たった一人だ。ショックが大きかったとはいえ、彼を頼るしか方法がないのだ。
だんだんと家を飛び出したことを悔い、落ち着きを取り戻そうとした時だ。
頭のうえに何かがのった感触があった。メモが降ってきたようだ。
『コノデパートノ屋上へ来イ 全テヲ話シテヤル』
とても汚い字で読みづらいが、確かにそう書いてあるようだ。
行くべきかどうか。零はトイレの天井を見上げた。このメモを彼の頭へと乗せた人物はもういないようだ。ゆっくりとドアを開けて、零はトイレの外へとでることにした。得体のしれないものに殺されるかもしれない。しかし、この時は何故か嫌な予感はしなかった。
デパートの屋上につく。ここでは夕方になるとビアガーデンが催されるが、日中は誰もいなく、静かで寂しいスポットと化す。
そこに見覚えのある後ろ姿をした女性が立っていた。彼女は白いブラウスに黒いウエストコート、黒いショートパンツという奇抜な格好はおいといても、その癖毛の入った髪型に背中に両手をまわして繋ぐポーズ、彼女が振り向いたときにそれは確信にいたった。
「姉ちゃん……!」
振り向いて微笑んだ顔はまさに死んだ姉の絵里奈にそっくりだった。
「ヤァ、マッテイタヨ、『エレナ』ダ。ヒサシブリダネ、レイ」
「待て、姉ちゃんでないな、エレナ……お前は誰だ!?」
「ワスレタノカ? ソウカ、ワスレサセラレタノカ……」
よく見ると、首には首輪をつけていた。そして咄嗟に零は思いだした。
『首輪をつけた女の言うことはきくな。きけばお前が殺される』
思いだした途端に彼はエレナと名乗る女の胸座を掴んだ。
「お前か! 俺にメールを送って脅迫したのは! 佳奈美を殺したのは!!」
胸座を掴んだところで零は違和感を得た。エレナが掴み返しているワケでもないのに、胸座を掴まれた感触に襲われたのである。
すぐに零は手を離した。
「何だ? これは……お前……俺に何をした!?」
「ナニモシテナイヨ? イヤ、コレガコノセカイノルールナノダヨ、レイ」
「この世界のルール? 何を言ってやがる? 俺を殺す気なのか!?」
「タンテキニイエバ、ソノキモチハマッタクナイ。ムシロ、コレカラミカタニナラネバナラナイ。レイセイニ、ワタシノハナシヲキイテクレルカ?」
まるでアジア系外国人との会話だ。だが、零を攻撃しようと言う意図は感じられない。零は「わかった。話せ」とエレナに命じた。
「マズヒトツ、コノセカイハ“死神ゲーム”ノタメニツクラレタ、カクウノセカイダ。ゲームガオワルマデ、ゲンジツニモドルコトハナイ」
「は? いきなし可笑しいこと話すなよ。俺は現にこうして生きているぞ? ほら、頬だって引っ張ると少し痛いぞ」
零は頬を引っ張ってみせた。
「デモ、ワタシノムナグラヲツカンダトキニ、ムナグラヲツカマレタカンカクガアッタノダロウ?」
「それは……」
「ソレガウゴカヌショウコダ。ワタシトキミハ死神ト雇用主デアルトイウコトダ。死神ハ雇用主ガ死ネバ死ヌシ、雇用主ハ死神ガ死ネバ死ヌ。タガイニマモリ、ササエアワナクテハナラナイノダ」
「何だよ、それ、まるでどっかのテレビゲームじゃないか……!」
「ソウ、コレハゲーム、ショウシャハナンデモネガイガカナエラレルノダ。雇用主ハネガイヲコメテ、死神ヲヨンデ、コノゲームヲセイスルコトヲ、モクテキトシテイル」
「馬鹿馬鹿しい。俺はアンタを雇った覚えなんてないぞ! 第一その目的の為に何をするっていうのさ! 俺は暇じゃないぞ! 命が狙われて――」
「ワタシジャナイ死神ガ、キミヲネラッテイル」
「ぐっ……何だよ! 俺はどうしたらいいって言うのさ!」
「死神ハゼンブデ16タイ、ワタシヲノゾク15タイヲコロセバヨイノダ」
「殺す? 人を殺せば刑務所に行って裁かれるだけだろうが!」
「ハァ……ハナシガゼンゼンツウジナイオトコダヨナァ……」
「お前が言うな!」
零はエレナに遂に背を向けた。
「ドコヘイク?」
「お家に帰る。一緒に住んでいる従兄に話すさ。姉に化けてでた変な奴と出会ったって」
「ヤメトケ。アノオトコハオソラク“死神”ダ」
零の琴線に触れた。零は死神を名乗る女の胸座を痛みが覚悟のうえで掴んだ。
「勝手に他人の家族に化けて他人の家族を惑わすようなこと言いやがって! 真人ニィが何をしたっていう! お前の正体を絶対暴いて倒してやるからな!」
「レイ……」
零は掴んだエレナの胸座を離すと早足でその場を去っていった……
エレナは追いかけることはなかった。一人、寂しい顏をして佇んだ……
∀・)はい。エレナ登場しました。読みづらい感あるかもしれませんが、最後までこれで走ります。気持ちはわかるけど、彼女のことを間違ってもキャンベラと呼ばないでね(笑)果たして彼女は何者なんでしょうか?零君は真人のところへ帰るのでしょうか?ってところで次回楽しみに!!




