~第16幕~
権藤一家はエリート街道が約束された一家であった。
親子代々にわたって英才教育を受け、教員の道が約束されている環境だった。しかしその流れを壊したのが権藤紋太だった。
彼は一生懸命勉学に取り組み、早稲田大学を卒業して都内の公立中学校にて教鞭をとるようになった。弟の元太も横浜市内の進学校でトップ成績を残している優等生だった。2人の孫の面倒をよくみていたのが父方の祖父である権藤山太郎だ。
全ては紋太が口喧嘩で当時の交際相手であった絵里奈を殺害した事に始まる。この口喧嘩というのが、紋太が浮気を重ねてしまい、絵里奈から別れ話をきりだされたことに始まったという。公立中学の教師である男のスキャンダラスな殺人事件はテレビの報道から数多の週刊誌までが話題として大きく取り上げた。
権藤家の皮肉な末路はここに始まった。紋太と元太の父は以前から不倫関係であった女との再婚を果たす形で妻との離婚を迫った。テレビ等のマスコミやインターネットの書きこみによる口コミ、権藤一家の破滅は一瞬だった。
追い打ちをかけるように元太達の母は首吊り自殺、その第一発見者となった元太は鬱病となった。また学校での虐めがエスカレートしたこともあり、そのまま引きこもりに。
そんな元太の面倒をみていたのが、衰弱しはじめていた山太郎だった。
しかし老いには勝てないもの。やがて山太郎はこの世を去った。
遺産は全て元太に贈る形としたが、元太はただ贅沢な暮らしに肥えていった。
全てが全て皮肉でしかなかった。
しかしこうした運命と面したからこそ、山太郎が死神として目の前に現れ、「運命を変えよう」と働きかけたのに共鳴したのだろう。
それでも敗北者には何も残らない。それも生き残りをかけた世界の真実だ。
零の目前で夥しい血が飛び散った。
権藤山太郎と権藤元太、2人の戦いは呆気なく終わった。
エレナが始末してくれたのか?
零もまたその終焉を呆然と見ていた。その手には血に濡れた灰皿があった。
一度犯した罪は消えない。
そして何かを取り戻したくても、過去に戻ることはできないのだ――
青風園ちかくの路地裏で3日ぶりに姿を現した死神がいた。
九龍奈美だ。
彼女のもとに虫が飛んでやってきていた。彼女は能力を使って、簡単に殺し続けていたが、キリがなかった。
嫌な予感を感じた彼女は青風園から遠のくように歩きだした。
やがて一人の男が目前に現れて話しかけてきた。
「やぁ、君たちが殺しかけた男から話は聞いたよ」
「誰よ?」
「ボク? 野神修也と言うよ。死神さ」
「そう? じゃあ殺すしかないわね?」
修也は人差し指でチッチッチとしてみせると話を続けた。
「アンタらコピーするのだろ? ボクの力コピーなんかされたら嫌だからさ、長居はしないよ。そのへんの話は聞いているからね。耳よりの情報をこの紙に書いてあるから。受けとりな。まぁ、来るも来ないも自由だけど、君たちぐらい優秀なら来るのが妥当だと思うよ★」
そう言うと修也はクシャクシャに丸めた紙を奈美に投げた。
奈美は疑うことなく受けとって広げてみせた。そこに書いてあるのはとある住所だ。
「そこに10体ちかくの死神が集うよ! 千載一遇のチャンスさ! 是非ともここにおいで! 君達が殺しかけたアイツもくるよ! あは! あははは!」
修也は高笑いをすると何千もの蟲に分解して空高く舞い去っていった。
「気持ち悪いヤツ」
そう言いながらも、奈美は微笑んで夜空を見上げた――
∀・)第3章これにて完結です!いや~なかなか書いていて大変な章でした(笑)でも書きたかったこと、やりたかったことはうんとできたので楽しかったかな(笑)まだまだ未登場のキャラだったり、謎だったりはあると思うので、4章も死神同士のバトルで盛り上げながらもやってこうと思います!また来週!!




