〜第11幕~
零はゆっくりと青風園近くにある路地裏に向かった。
空いているマンホール。まるで彼を誘っているかのようだ。
唾を飲みこみ、ゆっくりとその穴の中へ入っていく――
拓海の母から追い詰められたトラウマが蘇る。
梯子を降りたその先、河村がいた。彼は不自然な形で生えている木に縛られていた。木は下水道のいたるところに根を生やしていた。
「河村!? お前は!?」
河村を縛りつける木の木陰より一人の腰を曲げた老人が現れた。
「ほっほっ! 久しぶりだな! 若造よ! 達者にしていたか?」
林原晴美の襲撃後、手を差し伸べた老人だった。まさか彼が死神だったとは思ってもみない結果が待ち受けていた。よくみると河村を括りつけている木は老人の左腕そのものだった。河村は悶え苦しみ続けていた……
「河村を離せ! 糞ジジイッ!!」
「年寄りを相手に糞ジジィだとは生意気な小僧だな。交渉する気がないのか? ならばこの小童を始末してくれよう」
「うがあああああああああああ!!」
河村の悲鳴が下水道にこだまする。
「やめろ! やめてくれ!!!」
「くふっ……はぁ……はぁ……」
「ふふ、交渉に応じてくれると言うのかな?」
「何だってする! だから河村だけは救ってくれ!」
「ならば条件をだそうか。今、この場で貴様が儂に殺されろ。さすればこの者は生かしてやらんでもないぞ~?」
「俺が死ねばいいと言うのか?」
零は両手を広げて無抵抗を示した。
「もともと生きていたって苦しい未来しか待ってない命だ。河村を救うのなら、安いモンだ。勝手にしろよ」
老人は高笑いをしてその右手を鋭利な剣状の木材に変形させた。
「ぬははは! 救うワケがなかろう! 小僧同士仲良く逝け!!」
「!?」
老人死神の放った木剣が零を貫通しようとした時だった。老人の腕でもある、木剣は黒い鎌によって両断された。
「マッタク、世話ノ焼ケル御主人サマダ」
零の目前に現れたのはエレナだった。
「エレナ!? お前は綾間についていったのじゃあ!?」
「零ガ今朝アッタ河村、アレハアノ爺サンガツクッタ人形ダヨ」
「何だと!?」
「ヨク見ロヨ。零ノ友達ナラアソコニイル」
零が指さしたその先、そこにあったのは虐殺された友の死骸だった。
「河村!? かわむらああああ!?」
とっくに死体と化していた友に駆けよる零、しかし傷を負った老兵は更なる攻撃を零に仕掛けた。しかしエレナによって、またもその木剣攻撃は砕かれた。
「ぐはっ!? 小癪な真似を! ぬ? 消えた?」
老人の視野から零とエレナの姿が消えていた――
A;)河村くん、とっくに死んでいたの巻でした!木材変化の爺さん死神との戦い!どうなるのでしょうか!?また来週!!




