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SHINKIROU THE SHINIGAMI  作者: いでっち51号
第1巻~THE DAY I KNOW THE REAPER~
3/163

~第2幕~

 零と佳奈美は同じマンションに住む、小学生時代からの幼馴染みだ。もっとも、同じマンションに住むようになったのは従兄がそこに住んでいるからで、このときばかしは彼もその偶然の産物に感謝するばかりだった。交際は高校に入学してから始まり、今に至っている。これまで彼女が何かに悩んでいるなど聞いた覚えもない。しかし何かがまだ間に合うのなら、いま手を打つしかない。零は少しでも家路を急いだ。




「悩み? そんなものないよ? 私は今がすごく幸せだよ!」



 そう無邪気に話したのはブランコに乗って笑顔を振りまく佳奈美だった。



「ほら、零も乗りなよ? 楽しいぞ~?」



 市内有数のお嬢様学校に通う彼女は医者の娘で家族との仲も良く、学校では生徒会で活躍する傍ら、弓道部のエースとして活躍している優等生だ。何よりも彼女の口から悩みという悩みを聞いたことなどなかった。



 零はゆっくりとブランコに乗った。そして今朝と夕方にあった出来事を話す。興奮気味に話せば信じてなどくれないだろう。なるべく冷静に話すように彼は努めた。




「これがそのメールだよ……」



 零は例のメールを佳奈美にみせた。しかし彼女は「ふうん」と言ってすぐに携帯電話を彼へ返した。



「なんていうか、私はオカルトとかそういうのは信じないからアレだけどさ、私は死なないよ! 大丈夫! 自殺したいだなんて思ったことないよ!」

「いや、だから……明日、駅に行って欲しくない。学校を休めないか?」

「なんで!? 自殺なんかしないって言ってるじゃん!?」

「違うんだ! 自殺にみせかけて襲ってくる人間がいるかも――」



 零は必死のあまり、彼女の前に立って問いかけたが、そうするやいなや彼女から押し倒された。



「人が毎日楽しく過ごしているのに、水を差す真似なんかして! 自作自演で作ったメールなのでしょうが! 気分悪い! 私とは口を聞かないで!」

「おい! 待ってくれ! これは自作自演なんかじゃない!」

「私の心配するぐらいなら、自分の心のケアでもしたらどう? 顔色悪いよ? じゃ、私忙しいから」

「……………………」



 零は去り行く彼女を眺めて立ちつくした。




 もしかしたら、何かの偶然で今朝のメールと事故はあったのかもしれない。そう思うしかなかった。そうだとしても、今の零はまともな精神状態ではない。部屋でふさぎ込む彼は明日学校を休むことを決めていた。




 ノックの音がする。返事をするとエプロン姿の真人がドアを開けた。



「おう、夕飯できたぞ?」

「いらない」

「ん? どうした? 顔色が悪いぞ? 佳奈美ちゃんと喧嘩でもしたか?」

「アンタには関係ないだろ!!」



 零は枕を真人に向けて投げ込んだが、ドアを閉めることによるガードにより、枕は地に落ちた。真人は「やれやれ」と言ってドアをゆっくりと開けた。そして改めて零に尋ねた。



「どうしたんだ? 普通じゃないぞ? その顔色は」

「………………」

「話したくないなら、無理に話さなくてもいい。夕飯は近所にいる俺の部下にでもやるよ。学校は休んでもいいけど、病院ぐらいには自分でいけよ?」

「信じないだろ?」

「ん?」

「どうせ、アンタに言ったって何も信じてくれないのだろ!」

「聞かなきゃわからないさ。内容による」

「俺は……今朝……」



 零は少し考えて真人にも奇怪な現象に見舞われていることを話した。意外と彼は真剣な眼差しで聴いていた。だが、その返事は零が期待していたものではなかった。



「お前には色んなことがあったからな……。仮にそれが偶然であったとしても、不幸な現象がたて続けに起きてしまえば、そう思ってしまうのだろう。いいさ、うんと休んで学校に戻ればいい。ただ、携帯電話は没収しておくぞ。またこんな嫌がらせみたいなのが届いたら嫌だろう?」

「真人ニィも信じちゃくれないのだな……」

「信じるも信じないも、お前の身に何も起こさせないのが俺の責任だよ。変な妄想に支配されないうちに、ちょっとでも療養しろ。明日にでも面白い映画のDVD借りてくるからよ」

「変な妄想じゃない!! 頼む! 佳奈美に明日駅には行かないように説得をしてくれ!! 頼むよ!!」



 零が真人の両肩を掴み、彼の体を揺らしている間に新たなメールが届いた。真人が手にした携帯電話をブン取り、開いてみる。



 メールの差出人は未登録のアドレスからだった。今朝と夕方に送られてきたメールのアドレスは拒否にしたから、新たなアドレスを取得して送ってきたのだろう。メールにはこう記されていた。



『首輪をつけた女の言うことはきくな。きけばお前が殺される』



 零は甲高い絶叫とともに壁へ携帯電話を投げつけた。真人は携帯電話を拾い、画面を覗いた。彼は唖然としたが、すぐに零へ語りかけた。



「何だ? コレは? 気持ちが悪いな。完全に誰かの嫌がらせじゃねぇかよ。いい、明日ダチで探偵やっている奴に俺が届けて調べて貰う。お前はこの部屋で療養しろ。まともな神経の悪戯じゃないぞ。これは……」

「な、なぁ! 信じてくれるだろ! 頼むから佳奈美を護ってやってくれよ!」



 真人は零の両肩を強く掴み、睨みを効かした。



「落ち着け! このメールを送ったヤツの特定が先だ。明日は幸い、俺が休みだから色々できる。でも、今のお前に必要なのは療養だ! 変に外に出ようとするな! わかったな!」

「………………真人ニィ」



 零は気づけば涙を零していた。もう、自分には何もできないようだ――



∀・)ん~序盤からかなりしんどい零君、どうなるんでしょうか(他人事)。関係ないけどエプロン姿の青年男性ってちょっと萌え要素ありますよね(笑)次回ご期待ください!!

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