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SHINKIROU THE SHINIGAMI  作者: いでっち51号
第2巻~SURVIVE THE WORLD~
24/163

~第14幕~

 その夜、明神翔は青風園の食堂にいた。黒崎零は自室に入ってからというもの、まったく出てこない。名前と顔を確認するまで手間がかかったが、明らかに挨拶に対して挙動不審な行動をとっていた少年がいた。それが黒崎零だった。



「なんかお腹空いてきたな」



 翔は台所の近くまで行き「おばちゃん、カレーうどんを1つ!」と声をかけてみたが、反応がない。それもそうか。彼は一人で内心ツッコむだけだ。



「おじさん、奢ってあげようか?」

「!?」



 背後より声を掛けられた。瓜二つの女子二人組がそこにいた。



 死神と雇用主エンプロイヤーか!? とっさに構えてみせたが、女子二人組の一人が何食わぬ顔で「カレーうどん3つ」と頼んでいた。



「ま、ここでやるのはよそうよ? 近所迷惑でしょ?」



 女子二人組の一人がケラケラと笑って話した。よく見ると瞳が赤い。もう一人は茶色の瞳をしていたが、その違いで見分けるしかなさそうだ。



 翔は女子二人と三人でカレーうどんを召し上がる。何とも奇妙な光景だが、このままこの二人を放っておくワケにはいかない。



「君たち正気なのか? 敵に塩をおくるどころじゃないぞ?」

「腹が減っては戦ができぬでしょ?」

「そうそう感謝こそして欲しいもの」

「あ、ああ、すまん。ありがとう」

「真面目(笑) おじさんさ、何で死神になったの?」

「聞いてどうするつもりだ?」

「冥土の土産にするとかいうヤツ。ただあっさりと殺したくもないからね」



 妙に余裕がある死神と雇用主だ。腕に自信があるのだろうか?



「蘇生する為さ。詳しい事は話せないなぁ」

「ふうん。じゃあ私と同じだね。私も詳しい事は話せないなぁ」



 赤い瞳の少女はそう言うと汁を啜り「は~ごちそうさま!」とうどんの器を置いた。それと同時に器は粒子となって消えた。この世界では死神が消化した物がタイムパラドックスの理念に基づいて消失するらしい。翔はそれをこの瞬間に学んだ。続いて茶色の瞳を少女が汁を啜り、うどんの器を置いた。これは消えないようだ。翔が召し終えて、赤い瞳の少女が親指で決戦の開幕を告げた。



「さ、表にでなよ!」





 青風園を出て、とある河川敷まで出てきた。ここは先日、小学生3人組が殺害された現場でもある。まさかこの2人組による犯行だったのだろうか?



「せっかくだから教えてあげるよ。私は九龍奈美、こっちは美奈。私が死神で、こっちが雇用主エンプロイヤーね。見てのとおり双子になるよ。では最後に貴方の言葉を聴いて、私たちの力をお見せしましょう♡」



 舐めているのか? 翔は首を横に振って戦闘に入る構えだけをみせた。



 少女たちは顔を合わせると、苦笑いを合わせ翔の方を向いた。奈美が懐に仕舞っていた包丁をとりだして宙に浮かばせた。包丁はすぐに青い焔を纏った。



 数秒後、奈美の周囲に青い狐火が次々と浮かびあがり、そこから包丁がでてきた。数にして百ぐらいであろうか? なかなか強力な力であるがそれだけでは翔を動揺させない。しかし、彼女たちの能力はこれだけではなかった。



「なん……だと!?」



 雇用主エンプロイヤーである美奈も奈美と同じような戦闘態勢に入っていたのである。雇用主は死神ゲームの進行が最終ステージへ進まないかぎりは死神の能力を身につけられない筈である。



「そうか。お前たちは“代償”を取り込んでいるのだな……!」

「ははっ、ご名答。お陰様でナンバー1になれたのよ……!」

「ナンバー1?」

「あれ? おじさんはモニターを観てないの?」

「いや、見ていた筈だが……俺はランクで1番、その筈だが?」

「うふふ、じゃあ死んでしまった後にもう一度見てみるといい」



 モニターとは死神ゲーム関係者が閲覧できる電子モニターのことだ。これを閲覧するには死神と雇用主で信頼関係を結び、締結する必要がある。モニターには自身のモチベーションと他死神の名前、ランク、生存が提示される。今朝、見た限りでは明神翔はランク1位だった。それが変動したという事は……一つしか思いあたる節がなかった。



「代償を以てして能力の向上を図ったか」



 それだ。それしか考えられなかった。しかし代償とは逆にリスクを手に入れ、弱点を強化してしまうものでもある。この2人組が今日のうちに1位になれたとして、それを打ち破る方法はいくらでもある気がする。



 翔が考えを巡らしていた時、狐火を纏った刃が彼の顔面へ飛んできた。



 とっさに翔は自身の身体を発光させた。



「うわっ!! まぶしっ!!」



 奈美は腕で目を覆った。横に視線を移すと敵に首を絞められている美奈の姿があった。奈美の首にも激痛が走る。



「かはっ! みなっ!!」



 翔はうすら笑いを浮かべてとどめをさそうとしていた。



「何の力を得たのか知らないが、たいしたことないな。ま、最後の言葉ぐらいは聞いてあげようか?」



 奈美は激痛を堪え、立ち上がった。そうだ。モニターでは確かにランク1位へ上り詰めた自分だ。出来ない訳ではない。立ち上がった奈美は渾身の殴打を敵に見舞ってみせた。



「ううううう!! 美奈をはなせえ!!!」



 翔は奈美のパンチを喰らって、100メートル先に吹っ飛ばされた。



「かはっ……が……何!?」



 吹っ飛ばされた翔は吐血をしていた。前を見ると少女たちは翔が自身の能力を発動している時のように発光していた。



「ふふ、とり入れるまで時間がかかっちゃったけど、これ凄く便利ね♪」

「食堂でもっと時間とるべきだったかも?」



 2人は会話を交わすと、視線を翔に向けて、いやらしく微笑んだ。



「殺そうか?」

「うん。殺しちゃおう♪」



 やばい。殺される。そう感じた翔は自らを発光させて早急に逃走を図った。



 しかし敵はこちらの能力を完全コピーしているのだ。「逃がすかぁ!」という奈美の罵声は高速移動する彼の背後へすぐにとどいた。




 横浜にある工場群のうちの大きな廃工場。翔は能力の作動をとめて、ダストボックスの中へ忍んだ。すぐに九龍姉妹の話し声が聞こえてきた。



「何よ~! 今度はかくれんぼでもするの~?」

「ここ大きいね。撒かれたら終わりじゃない?」

「大丈夫だって。とっくにコピーできたのだから。いつアイツがでてきてもさ、いや、誰と戦ったって優位に立てられるよ! ほら、見てよ、奈良の大仏~」

「もう、ふざけないでよ。早く始末しないと、あのおじさん厄介な敵になるかもしれないよ?」

「はいはい。ねぇねぇ、イメケンのおじさん出ておいで~」



 なんとか撒くことはできそうだ。しかし何ということだろうか。最強だとも自覚していた力が敵によって完全習得されてしまった。少なくとも彼がこの場にて彼女たちを凌駕する可能性は極めて低い。



 一瞬の隙をついて翔は退路を駆け去った。敗走以外の何でもなかった――



∀・;)九龍つえええ!!ってことで次週です!!九龍姉妹の能力はワンピース「ヤミヤミの実」を参考にしました。ただ彼女たちは複数で能力を使えるから厄介なんですよね。強力な能力を手に入れた代償とは一体??ちなみに九龍姉妹の配役は鈴木みな&まりあで!うん!バッチシ!!

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