~第12幕~
翌日、小学生3人が銃殺されたニュースがテレビで大々的に取り上げられていた。コーヒーを啜りながら一人の警察が独り言を呟いていた。
「これも単なる偶然か? もしもアイツらの仕業でなければ、とんでもない出来事だよな。まったく」
彼の独り言は独り言ではなかった。
ソファーに腰掛けているのは白髪の男性だった。しかし彼の姿は誰にも見えなかった。父親であるその刑事を除いて――
「父さん、何でもかんでも死神の仕業だと考えるのはナンセンスだよ」
「おい、その呼び方はやめろ。上司だぞ? 私は」
「この世界じゃ死神と雇用主だよ。家族でいた方が、お互い気が楽じゃない?」
「お前なぁ……」
「ほらほら、明神さんが可笑しい感じだって周りの人たちが笑うよ?」
ケラケラと笑うのは明神警部こと明神力也の息子であり、元巡査部長にして殉職した明神翔であった。
翔が笑い終えた時に一人の男が力也のところへやってきた。綾間警部補こと綾間紳一郎だ。
「ゼロの指弾に関わる情報漏洩の件、鬼道院が処理したと今しがた」
「そうか。どこに棄てたか言っていたか?」
「はぁ、海だとしか言われてないです……」
「何だよ、それ。沖に上がったらおしまいじゃないか。始末の悪い男だ」
「ただ、彼が残したメモから興味深い名前がでてきまして」
「なんだ?」
「こないだ奇行に走って話題になった。白崎創の弟の名前がでてきたのです」
「なんだと!?」
「彼の姉を殺害した権藤紋太に義理の弟である白崎創のことを黒崎零が調べたようで」
「うむ、翔、これはどうみる?」
「あの?」
「何だ?」
「ここに翔さんはいませんよ? 警部、御言葉ですが、警部には最近変な独り言が多いです。私だけでなく、他のみんなも心配されていますよ」
「あ、ああ、済まない」
「頼みますよ。で? どうします? これから」
翔は再びせせら笑って「ほら、言わんこっちゃない」と言った後に手を組み、そこに顎を乗せて思考を巡らせた。
「………………」
ゼロの指弾、それは彼の命を奪った組織でもあった。この案件が死神ゲームと関連しているとは限らない。しかし奇妙な運命の歯車を感じるのも確かだ。
「綾間さんを動かそう。そのうえで黒崎零及び彼がいま住んでいる施設を洗う。それがいいかもしれないな」
翔は勘の冴える男だ。採用後、スピード出世で巡査部長まで上り詰めた彼の感性を、父の力也は彼の生前も含めて頼っていた。
「よし! 今回の銃撃事件の近辺でもある施設で、こないだの血痕騒動もある『青風園』をおさえろ。特に黒崎零、コイツはマークだ」
「は! かしこまりました」
綾間はこの世界が死神ゲームのヴィジョンであることを知らない。仮に黒崎零が死神の雇用主だとして、彼がそれを見破ることは不可能だろう。
「じゃあ、俺も向かってみるか」
翔が立ち上がった。
「おい、お前、万が一お前以上の死神がいたらどうするつもりだ?」
「俺以上の死神? この力に敵う奴がいるなら相対してみたいよ?」
「翔……その光は……ぬっ!」
翔は左手を眩しく光らせると、次の瞬間には全身から眩い発光を放ってその場から消えた。
「まったく、無茶苦茶な息子だな……」
そう言いながらも力也は零したコーヒーカップを拾って微笑んでいた。
∀・)警察の死神登場!!しかもその能力は!?次週期待です!!




