~第8幕~
真人の葬儀は彼の親族を中心に行われつつも、彼の所属していた会社の社長、社員にその関係者までも参席した。通夜に訪れたのは彼が大学卒業するまでに親交を持っていた友人らも顔も数多くみえた
「こんなに色んな人達に愛されていたなんて……」
零は思わず呟いた。絵里奈は「そりゃあ貴方のお兄ちゃんだもんね」といって微笑む。
しかし零も絵里奈もある人物が来ないことを心配した。
零達は真人の葬儀から数日後、青葉区にある病院へ向かった。
「何しに来たの?」
真人の婚約者である真央は零達の顔をみるなり冷たい言葉を彼らにぶつけた。
「何しにってお見舞いよ? 心配だから来たのよ?」
絵里奈はそう言って、薔薇の花束を真央へと手渡した。しかし真央はそれを零目がけ投げた。そして彼に直撃して花びらが舞い落ちた……。
「何てことするの!?」
「私はそんなものが欲しいなんて求めてない!! ここに来て欲しいとすらも思ってない!! 情けをかけるぐらいなら二度とその顔をみせるな!!」
「そんなことを言わなくてもいいじゃない! 人が心配しているのに!」
真央の暴行と暴言に対し絵里奈は冷静に応じられなかった。
ポンポンと零が絵里奈の肩を叩く。彼は苦笑いしたまま首を横に振る。
「いいよ、姉ちゃん、帰ろう」
「零」
零は落ちてバラバラになった薔薇をかき集めて、そのまま立ち去ろうとした。が、病室を出る前に真央のほうを振り向いた。
彼女は「でてけ! でてけ!」と声を荒げ零達へ罵声を浴びせ続ける。だが、それと同時に零れる涙を溢し続ける彼女を零は見逃さなかった。
「俺は真人ニィのことを愛していた。真央さんも愛していたのだろ」
「五月蠅い! 黙れ! 出ていけ!!」
「真人ニィの葬式にはいっぱい色んな人たちが来てくれていたよ。みんなから愛されるイイ兄貴だったよ。それが分かち合えないなんて、本当に残念だ……」
絵里奈が病室に戻ってきて「帰るのでしょ」と零の裾を引っ張る。
「さようなら」
零の一言はそのまま零達と真央の今生の別れとなった。
田中真央はこの零達との別れから2年後、この世を去る。
零達と真央の決別を見とどけた一人の男がいた。
彼は真央に見えなければ零達にも見えない。
彼はただの亡霊だ。この現実に声をだすことができる筈もない。
彼女がこの世を去り、彼と会えたのかは誰にも分からないが、彼はただ彼女と零を見守る事しかここでは出来なかった。
運命はときに優しくも、ときに厳しい。それが変えられるものであっても――
∀・)真央、再登場も怒りの咆哮の巻でした……
A・)これ、真央の怒りを鎮めるのは真人しかいないんだろうけど、それが出来ない零くん達はこうするしかないんですよね……こういう感情のスレ違いって男と女ってところも関連してくるとどうしようもないんですよね……リアルでこういうことがあったというか、なんというか、あんまり詳しくは話せないんだけど、書いててちょっと辛かったかな(笑)零たちの物語はまだまだ続きます。次号。




