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SHINKIROU THE SHINIGAMI  作者: いでっち51号
第10巻~TO THE MORNING WHEN THERE IS NOTHING~
154/163

~第6幕~

 零が旧友と会った翌日、絵里奈がボランティアで入っている児童養護施設を零は絵里奈に紹介されるまま訪ねた。



 玄関先で園長らしき青年が彼らを迎え入れた。彼らはそのまま接待室だろう個室に案内された。



「君が絵里奈さんの弟の零君かい?」

「はい、黒崎零です」

「色々話は伺っているよ。北海道に行くのだって?」

「はい、姉が色々やってくれて」

「絵里奈さんは本当に良い人だと思うよ。無償で我々の手伝いをしてくれてね。いつも助かっているよ。本当ならここの職員にしたいほどさ」

「そんな、とんでもないです」

「俺のせいですよね?」

「ん?」

「俺が人を殺してしまったばかりに姉ちゃんは教職員の夢を捨てて、俺の為にこの街を去ることまで一緒してくれて……」

「零、それは零だけの責任じゃない。それに零は襲われて……」

「だって、本当はこんな所でこんな事なんてしたくなかったのだろ!! 俺がアイツを殺してしまったからこんな事になったのだろ!!」

「いい加減にしないさい!」



 絵里奈は零の頬をぶった。零はその一撃で俯いて黙る。しかし青風園の園長職員は冷静に話を切り出した。



「……心中察するとまでは言わないよ。お二人にはお二人の事情があるのだと思う。零君、今日は君に会って欲しい男の子がいてね。彼もまた少年院に入っていた子だ。彼は一人親のお母さんと一緒に住んでいたが、お母さんが殺されて。それでウチに来たのだけど、間もなくして学校で傷害事件を起こしてね……」

「傷害事件?」

「ああ、でも実際は被害者である男子が彼を殴る蹴るしていたらしい。それに対して近くにある消火器で反抗した結果、彼は事件を起こしてしまった」

「とんでもない奴ですね……あ……俺が言うのも可笑しいか」

「でも君も彼も根はとんでもない奴じゃない。普通の男の子だ。ただ悪い縁がたまたまあっただけだ。今、彼はずっと自分の部屋で閉じこもっている。学校に復帰するのもままならないだろう。なぁ、彼と会うだけ会ってくれるか?」

「…………会うだけなら。ただ一つ条件が」

「条件?」

「姉ちゃん、俺をぶったのを謝って」

「ご、ごめんなさい……」



 園長の青年がそっと微笑む。間もなく零は林原拓海の部屋へ案内された。



 園長が「拓海クン」と部屋をノックする。何も反応はない。まるで誰もいない部屋のようで静かだ。しかし零がそこで「ああ、俺、ずっといますよ。ここに」と園長らに静かに告げた。



 それは零のなかで何かが芽生えた瞬間だ。彼はずっと拓海の部屋で一人佇み、やがて静かにノックをしてみせた。すると静かだった部屋のドアが開く。



「何だよ?」



 出てきたのは前髪も後ろ髪も伸びきった小学生の男子だ。



「よぉ、黒崎零だ。お前が林原拓海か?」

「だったら何だ?」

「お前の名前を聞いた時にさ、ずっと昔、友達だったような気がしてさ」

「………………」

「ははっ、変な話だよな。お前も少年院に居たのだって? 俺もいたよ。1年間ずっと。年齢が違うから場所は違ったのだろうけどさ、何故だろうな? 俺はお前と一緒にいた気がする。変な話だよな? それを伝えたくてさ」

「俺も……黒崎零って名前が何故か残っている。何だろう。変な気持ちがする」

「はははっ、無理ねぇよ。これがシンパシーってヤツかもしれないな」

「かもな。本当に変な気持ちだ」

「まぁ、俺はもう帰るけどよ、お前がここにずっとひき籠ろうがどうしようがそれはお前の勝手でいいと思う。でも、いつか気が向いたら、お前の母ちゃんの墓参り、俺も一緒に行かせてくれないか?」

「…………考えておくよ」

「ありがとう。元気でな」



 拓海はそっとドアを閉めた。



 零が玄関に戻ると園長に拓海と会話したことを報告した。彼は驚いて喜んだ。そして「河川敷でサッカーしているよ。良かったら一緒に遊んでやってくれ」と話しかけられた。



「サッカーか。何年ぶりだろうな」



 零はボソッと呟くとまんざらでもない顔をして河川敷に向かった――




 河川敷では尾崎兄弟という小学生と中学生の2人組を中心に施設の子供達と近所の子供、そして職員らが一緒になってサッカーのようなボール遊びをしていた。離れた位置で女子の面々が飲み物を片手にシートを敷いて談笑している。女子組の中心にいるのはボランティアの絵里奈だ。



 零は職員から紹介を受けてボール遊びの仲間に入れて貰った――




 ある程度遊ぶと、絵里奈と零と同年齢ぐらいの女子が零達へ飲み物を渡しにやってきた。



「はい」

「ありがとう」

「美奈ちゃんって今年で16だっけ?」

「はい、今年高校生になります」

「じゃあ、零と同い年だね。友達になったら?」

「え?」

「あっ、はい……えっと九龍美奈です。宜しくお願いします」

「黒崎零です。オネシャス……」

「もうっ、お見合いじゃないのだから! 何でそんなにカタッ苦しい挨拶するのよ! あとでメアドの交換しておきなさい!」



 頬がピンク色に火照っている美奈をみて零は「可愛いな」と思った。それから彼女もまた同じように彼の事を想ったのは後日2人のやりとりで判明した――




 この翌日から拓海は部屋から出てくるようになり、施設内の職員や子供達とよく話して交流するようになった。そして職員へ零のことを頻繁に尋ねるようにもなり、後々に零と連絡先を交換して友情を育むことになる――



 ちょっとずつ零の人生にも光が射してきた。



∀・)拓海&美奈ちゃん再登場の巻でした。この2人、また登場します(笑)次号!!

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