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SHINKIROU THE SHINIGAMI  作者: いでっち51号
第10巻~TO THE MORNING WHEN THERE IS NOTHING~
153/163

~第5幕~

 零の決断には覚悟があった。




 ある日曜日の昼。約1年ぶりになるだろうか? 旧友の新城と河村、そして河村は彼女を連れてくると言う。零が出所することは絵里奈が伝えてくれた。横浜の繁華街、そのビルの展望台近くにある洋食店で彼は人波を眺めた。



 頭をポリポリとかく。出所してからというもの、髪は少し伸びたが坊主頭のソレと大差はない。野球部でも柔道部でも何でもないのにこのスタイルで再会するのだから、きっと彼らは驚くだろう。そう思うと「ふふっ」と独りで笑ってしまうのも無理なかった。



「ほんと、退屈しないな。この街は」



 人々が続々と押し寄せる交差点と次々と眩しい映像が流れる巨大液晶画面を眺め、零はどこかで聞いたことのある言葉をアレンジして呟いた。



「お、あれ黒崎じゃ?」

「お~い! 黒崎~!」



 懐かしい顔が目前へやって来た。新城と河村、そして河村と手を繋いでいる小林佳奈美だ。



 零も手を振り返した。何故か感極まった。何故かポタポタと涙が零れだした。しかし微笑んでいる彼は友との再会に喜んでいたのだ。



「泣くなって! 立派な坊さんカットにしやがってよ!」

「いや……何だろう……河村、小林さんが生きているなって……」

「は? 何言っているのよ? 生きているに決まっているだろ?」

「新城、黒崎は生死を争うような死線に入っていたのだし、俺達の普通の感覚じゃないってことを理解してやれよ」

「まぁ、そういやそうだけどさ……」

「こんなところで連れてくるのもどうかなって思ったけど、俺の彼女がお前のことを知っているって言っていてさ。連れてきたよ。自慢したい訳じゃないぞ?」

「ああ、そうだよな……昔話だけど、小林さんのことは好きだったよ。だけど、チャンスがなくて損をしちゃったな。でも、河村はイイ奴だから、末長く仲良く付き合ってくれ」

「おい、お前、何キザな事を言っている?」

「ううん、大丈夫。卓史君から乗り換えたりしないよ(笑) でも、何だろうね……何だか私、黒崎君に命を救われた気がするの」

「おい、アンタまで何を言っている?」

「いや、だから新城、俺も佳奈美も零が居てくれたから、救われたっていう感覚みたいなのがあってさ……」

「それで今日会いに来た?」

「言うなれば」

「要するに2人のキューピットになったからって事だろ? この色男と色女!」

「いやぁ……だから自慢したい訳じゃなくてさ……」

「そうでなくても私達は黒崎君と幼馴染だよ。こうして再会できる事に喜びを感じたってイイじゃない! 新城君だってそうでしょう?」

「いや、まぁ、そうだけどさ……おい、お前、いつまで泣いているのよ?」

「いや、こうして食べるスパゲティがクソ美味いなって……」



 零はボリュームのあるスパゲティを啜りながら涙を流し続けていた。



 零の涙が枯れたとき、やっと零は自身の事を話し出た。



「北海道!?」

「ああ、姉ちゃんの知り合いがいるらしくて。そこで働きながら勉強する事にしたよ」

「何でそんな遠くまで?」

「みんなには分からないかもしれないけどさ、俺は今でも公的なモノと私的なモノに監視されている。公的なモノはまぁ刑務所のおまけみたいなものだが、私的なモノは俺をネタに儲けようっていう週刊誌みたいな輩さ。ほら、あそこ。グラサンつけて帽子被っているオッサン2人さ、ずっとこっちをチラチラ見ているだろう?」



 新城達が振り向くと、確かに零の言う怪しい男達が店の片隅にいた。彼らは新城達の視線に気が付くと、そそくさと新聞を読むフリをしてみせていた。

「黒崎君……」

「アイツらは俺が北海道に行ったって、追っかけてくるさ。だけどここに来てくれたみんなには迷惑をかけなくて済む。姉ちゃんがそこまで考えてくれた。そういうことだよ」



 涙に濡れていた零はもうそこにいなかった。しかしどこか疲れ切って灰色の瞳を覗かせているような気がした。今の零からは底知れない強さも感じるが、それ以上にそれを超える悲壮感があった――



∀・)零君、北海道へ旅発つ決意表明の巻でした。河村&佳奈美ちゃんが再登場したの巻でしたね。勿論ですが、河村君の従兄の探偵さんも生きてます(笑)でも、まだまだ茨の道が続く零くんの人生、どうなるのでしょうか。次号。

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