PROLOGUE:TO THE MORNING WHEN THERE IS NOTHING
物心ついた時からどういう悲劇に見舞われたってさ、どっかの誰かが何かが救ってくれるものだと思っていた。そうやって生きてきた。
お前が死んでしまった時も映画みたいに泣けるワケもなくてさ。
知らない間に夢から覚めて、この後の進路とか将来の自分の姿とかうっすら考えて。そんなありふれた日常が少年院でも続いているようで。
このまま気がついたら大人になれるものなのかな? 奇跡なんてモノを知ることもないまま、現実って空虚と向き合い続けるのかな? みんなそうなのか?
何にもない朝に、何でもない朝に、俺は一体何を想うのだろう。
中学の友人が言っていたな。「どんなに貧しくたって、あの国に比べりゃマシだって思えば気持ちが楽になるよ」って。それでみんなが救われるぐらいなら、自殺して死んでしまう人なんて無くなるのだろうけど。
今はそんな事を話す人も近くにいない。
こんな空虚な毎日がいつまで続くのだろうか。もういっそのこと、このままロボットになればいいやなんて思ってみたりして。この生活に慣れたのかもな?
だけど、姉ちゃんが面会に来るたびにそんな自分が情けなくなって、苦しくなって。迷惑と心配ばかりをかけて「ごめん」ばかりを言って。
ここを出たら眩しい光が見えるのかな?
みんな、こんな俺の事を認めてくれるのかな?
だけど、俺は今でも夢をみる。
お前と戦っていた夢をみる。
色んな敵と戦う夢。名前も知らない敵との殺し合い。俺は犬のお前とタッグなんかを組んだりして。馬鹿馬鹿しいけど毎晩そんな夢をみている。
でも、誰も知らなくていい話だよな。俺とお前だけの御伽話。それでいいよ。だって馬鹿馬鹿しいもん。恥ずかしくて姉ちゃんにすら話せない。
だけどそんな俺だからお前に聞きたくなるのさ。
なぁ、エレナ。
俺はいま幸せだと言っていいのかな?




