~第16幕~
翔は劣勢でありながらも、自らのエネルギーを切らさないように戦い続けた。敵はそんな彼を煽り続ける。
「ドウシタ明神翔? 私ガ黙ラナイカラ、オマエガ黙テイルノカ?」
翔の分裂させた光体は薄いモノになっていた。また戦闘しているとは言え、そのほとんどがエレナの攻撃を避け続けるという実態だ。そしてエレナの攻勢は収まらない。
「コレヲミロ! 明神!」
1位……黒崎エレナ
2位……明神翔
「!?」
エレナが彼女の背後にでかでかとモニターをだす。思わず反応してしまった翔は声を漏らし、その隙に残り3体となった分身の1体を斬られた。
「残リ2匹、最後ニイイ残ス言葉ハアルカ?」
声をだす底力もない。声をだせば彼のエネルギーは消費されて彼のわずかな力が失われる。今はただひらすらエレナの攻撃を避け続けて、起死回生の時を待つのみだった。
そして翔の本体が1体となり、大多数のエレナに囲まれた時だった。
「ナニ!?」
周囲の明かりが点き始めた。停電が復旧したのだ。彼はその心身に力が満ち溢れていくのを感じた。
1位……明神翔
2位……黒崎エレナ
モニターも彼の勝利を映し出す。
そして眩い光を放ち続ける翔はエレナに向けて勝利宣言も言い放った。
「はっはっは!! 調子にのった影人形が!! 目に物を見せてやろう!!」
翔は片手に持ったビームサーベルを彼の身体の何百倍もの大きさに変えて、大きく振りかぶって振り下ろした――
エレナはまさに青天の霹靂で敗北を喫するところであった――
「うがぁああぁあああぁああぁああぁああぁあぁああああぁああぁあああぁああぁあああああぁぁぁあぁああぁあぁぁああああああぁあああああぁぁああああああぁああぁぁあああああああああぁぁぁぁあああぁあぁぁああぁあぁ!?」
翔は首に激痛を感じ両手で抑えた。彼の持った巨大なビームサーベルはどこかへ消えてしまった。今此処に居るのは悶え苦しむ明神翔と呆然とそれを眺めて立ち尽くすエレナだけだ――
「勝タノカ?」
そう彼女が呟くと辺りは白い霧に覆われ始めた――
気が付けばそこは真っ白な世界だった。
離れたところに零がいる。彼もエレナに気がついた。
ゆっくりと零が彼女へと歩み寄る。
彼女はもうこのゲームで戦っていた姿ではなくなっていた。
「零……」
「やったな。エレナ。とうとうこんなところまで来てしまったな」
零は姿形を変えたエレナへ優しく微笑み、彼女の頭を撫でた。
「今まで本当にごめん。本当にありがとう。愛しているよ」
そして彼が抱いたのは“ゴールデンレトリバーのエレナ”であった――
∀・)はい!!遂に明かされましたエレナの正体!!犬の姿じゃ満足に戦うことはできないし、会話もできないということで絵里奈のフォルムになっていたんですね。まぁ、この辺ものちのちにお話にでてくるんですけども。何はともあれ最終決戦の決着がつきました!ここからお話は零君とエレナの過去話にシフトしてゆきます――




