~第14幕~
零は言われるまま両手をあげて跪いた。
力也は零の額に銃口を当てる。
もはやここまで。最後の最後までエレナと戦い、エレナの力を最大まで引き出す作戦をたてて、それが功を奏したとすら思えた。念の為に召喚した真人のボディーガードも翔の分身を葬り去ることで無くしてしまった。ここまできて運に見捨てられるぐらいなら、負けたとしても何ら悔いはない。その筈だった。
零は零の破滅隊員をみて妙な既視感を感じた。
彼とアイコンタクトをとる。
そうか、まだこの戦いはここで終わってなかった。
そう思うと彼はまっすぐに力也の視線と向き合えた。
「この引き金を引けば、君の命は終わる。そしてこのゲームも同時に」
「そうらしいね。そしてアンタが明神翔さんの雇用主だったワケかぁ」
「ああ、私と彼は警察だ。勝つべくして勝つ運命だったということだ」
「そのナリ、どっからどうみても軍人だぞ?」
「ふふっ、お陰様で今は臨時の自衛隊員になっているよ。君が前代未聞の怪奇テロを起こすものだからな」
「俺がやったワケじゃないけどね……」
「長話は止めとしよう。君には色々と聞きたいことが沢山あるが、そんな暇もない。この隊の隊長は私だ。そしてこのゲームの勝者も私だ。ここにいる隊員は全員が私の事を理解し、私がこの手で君を葬ることを許可している。君に対し憎しみはないが、敬意は持とう。冥途の土産に何か言い残すことはあるか?」
「アンタの部隊っていうのは、そこの後ろの3人全員がそうなのか?」
「何?」
「アンタの部隊に鬼道院って隊員がいたのかと聞いている」
零の一言で引こうとしたトリガーが止まる。同時に首へ重たい衝撃が加わる。力也は背後にいた隊員から強襲を受けた。首に短刀を深く刺されたのだ――
「武藤ッ!!」
高沖が叫ぶ。武藤と言う隊員はその場からすぐに逃げ去ろうとしたが、遊佐からの発砲を何発も受けて、倒れ込んだ。同時に彼が深々と被っていた帽子がとれる。露わになったのは武藤という隊員の顔ではなく、鬼道院魔裟斗の顏であった――
「う、うがあああぁあぁああぁぁあああぁぁぁぁああ!?」
間もなく力也が呻き声をあげてのたうち回る。
高沖が「隊長!」と彼を介抱しようとするがままならない。高沖を跳ね返して倒れ込む。そして敢え無く絶命した。
するとあたりに謎の霧がたちこめてきた。あたふたする高沖や遊佐が消える。辺り一面が真っ白な世界。零の前にいるのは倒れながらも肩で息をする鬼道院だけだ。
「鬼道院さん」
「はぁ……はぁ……ここは何だ? 天国か? ははっ、ワケわからん」
「終わったよ、全部。まさか最後の最後でアンタに救われるなんてね」
「はは、そうだよ、俺もやるモンだろ? ごほっ!!」
「カッコよかった。本当にカッコよかったよ」
「そっか、カッコよかったか……俺、ずっとそんなことを言われたかったなぁ……。はぁ……はぁ……ヒーローになりたかった……何でもいいから……格好いい奴に……でも俺がなりたかったのは格好いいヒーローじゃなくてさ……」
「うん」
「ただ普通に生きて愛し愛される人間だった!」
「そうだったの……」
鬼道院はたくさんの血を吐きながらも大粒の涙を零して零に訴えた。
零は鬼道院の手を握る。そして彼もまた零の手を強く握り返した。
やがて彼も息を引き取った。そして立ち込める霧の底へと薄まり消えゆく。
零は鬼道院の消失を見とどけて立ち上がった。
そして離れた場所に見えるエレナの元へゆっくりと歩みだした――
∀・)最終決戦、遂に決着がつきました!!鬼道院あっぱれ!!次号ではちょっと過去に遡ります。




