~第1幕~
拘置所での決闘が終わる頃、零の破滅一行はようやく横浜治安部隊2012総本部拠点に到着した。会議室に入るやいなや諸伏副隊長は開口一番に道中で生じた怪奇現象のことを力也に告げた。
「ここに来て1番話したいのは、横浜拘置所に黒崎零が現れたのかどうかではないぞ。この道中で車内にて何度も凍結しては解凍した明神隊長、貴方の身に一体何が起きているかと言うことだ!?」
白崎創もジロリと見ている。
翔が戦っているのだろう。それは分かる。しかし力也が今体感している事を事実として伝えても、誰も理解できなくて当たり前だ。ここに翔がいるならば、少しでも安心できるのだが……
「俺も分からない。でも何かに巻き込まれているのは確かだと思う」
そう絞り出して答えるのがやっとだった。
「プッ……プフフ…………アッハハハハーッ!!」
「何が可笑しい!!」
遊佐が笑い出した創の胸座を掴む。それを高沖が制止する。
「この状況、とても私たちの知りえる科学知識の領域では説明できませんね」
「羽藤君の言う通りだ。隊長自身が『分からない』と言われるのであれば、そう受けとめるに他ならない。しかしそんな存在に我々の部隊の隊長を任せていいものなのか、単に観察対象として保護されるべきなのか、考えものですな」
「でも俺が見る中では1番指揮者にむいているぞ?」
「黙れ、白崎」
「遊佐、落ち着け。俺達がチームを結成できる条件を忘れるな」
「そうだけど…………」
羽藤がタブレットに目を移す。そしてその目を丸くした。
「速報です。横浜拘置所、落ち着いたみたいです。かなりの炎上をしてしまったみたいですが、今は至る所が広く凍結しているとのこと。それから……野神晶子の大量の血痕が見つかったとも報告されています」
「野神晶子が死んだのか?」
「黒崎零の目撃証言も報告されています。おそらくは彼の襲撃によるものかと」
「面白くなってきたなぁ。俺は会いたいぜ」
力也は自分が招いた出来事で部隊の信頼を失いかけていることを危惧した。そこで何か隊長らしきことをしようと立ち上がった。
「総指揮官を呼ぼう。どのみち報告は避けられない」
一同は力也の一声に頷いた。
創だけは笑っていた。この男にはこの状況でも余裕があるのか。力也は彼と目と目を合わすと、その視線を床に落とした――
∀・)死神ゲームに翻弄される『零の滅亡』ですが、白崎創は違う。彼らがこれからどう零たちと対峙するのか、ご注目を。次号。




