~第8幕~
西園寺明日香は拳を振り下ろして、氷結した明神翔を葬った……筈だった。その直前で爆発をくらった。どうやら翔が自爆したらしい。
気が付けば明日香は全身火傷を負い、翔に胸座を掴まれていた。
「俺がコピー出来るのはお前の使える能力全てだ。ツメが甘かったな」
「かはっ……クソが……この程度で私が負けるなんて……思うなよ!」
明日香は3度目の自爆をした。これで彼女の手持ちのカードはなくなった。
しかし彼女が不利な状況は何も変わらなかった。
3度目の自爆を噛ました後、体勢を整えようとしたところで何者かが正面に現れた。そしてその者の斬撃によって彼女は致命傷を負った。
「お前が不利なことに何も変わりはない。俺の速度に翻弄されて倒されるだけなのだ。これでハッキリとわかっただろう?」
翔はギラギラと輝く日本刀を片手に悠然と倒れ込む明日香を見下ろした。
そして再び明日香の胸座を掴み、彼女を掲げた。
「はぁ……はぁ……そうか……私の負けなのか……」
彼女は既に何度か吐血をしたようだ。口周りから血が滴る。
「すぐに楽にしてやる。覚悟しろ」
「待てよ」
「何だ?」
「最後にちったぁ喋らせろや……」
「遺言か? 聞いてやらないでもないが、お前が死ぬ事に変わりはないぞ?」
「アンタ、生前は何をしていた? 何でそんな偉そうにできる? ごほっ!!」
「答える必要などない」
「そっか、ははは、じゃあ最後の言葉だ。耳の穴ほじくってよく聞け」
「何だ。早くしろ。コギャルが」
明日香は深く呼吸をする。そして準備を整えた。
「お前が正義を名乗った時、お前はその時点で誰かの悪だ」
明日香は微笑む。そして彼女の命を絶つ“4度目の自爆”を発動した。
その爆発後は巨大な冷気も放たれ、周囲の全てが凍結した。
翔も例外なく凍結した。彼による2度目の自爆が発動するまで時間を要した。翔の自爆が終わり、周囲はようやく落ち着きを払った。
「随分と派手に暴れたものだな」
光の出力が思ったほど発揮できない事を確認する。腰をあげるのにも相当な怠さを感じた。明日香の自爆能力は能力の低下だけでなく、心身の体力までも下げてしまうようだ。何とも扱いづらい力だ。それから彼女との戦闘によってダメージを深く受けた事実とも向き合わなくてはならなかった。
そういえば野神達と黒崎達はどうなったのだろうか?
彼は片足を引き摺るようにして周囲を詮索し始めた。ここで黒崎零もしくは野神晶子と遭遇できれば、このゲームを制することが決定づく。勿論死神との遭遇となれば、特に修也には安易に倒されてしまうワケだが……
この後、彼は晶子と出くわすこととなる。
それから自身の力を用いて自身の治癒に努めた。
最後の決戦、それは着実にそこまで迫っていた――
∀・)西園寺明日香、こうして散るの巻でした。第8巻なんですけど、こちらは全10話で終わるという短い章になります。主に明日香さんを描いた話になったワケですけども、次週は久しぶりに零&エレナの視点になります。来週も引き続きお付き合いをお願いします。
 




