~第7幕~
真中はその戦いの直前にテッドから明日香が向かってくることを聞かされて、入念に戦闘準備を進めた。彼女の能力の事ですらも把握した。
しかし結果は明日香の圧勝だった。
これを機に彼女は死神としての本能に目覚めていく事となる――
後に決戦の場となる廃工場はすっかり明日香のアジトとなっていた。そしてそこに彼女の父親である正人を呼び出していた。
「こんな所で何をしていた?」
「戦っていたよ。願いを叶える為にね」
明日香はその道中で彼女の願いが彼女の蘇生であり、その蘇生が叶ったなら親孝行を本気でしたいというものだった。これには正人も感涙し、その場で彼からのお詫びも飛び出たほどだ。
勿論嘘だ。このゲームに勝っても彼女は生き返らない。
しかし親孝行し尽くした西園寺明日香は現実になる。その想いを胸に秘めて、彼女は正人に契約書へ「真中豪」の名を書いて貰うようにして彼を召喚した。
「これから見せるものは、お父さんにとって大嫌いな私の姿になると思うよ。でも、お父さんにも協力して欲しいと思う。私がこのゲームに勝ったならばね、本当にうんとお店の手伝いができるから」
「お、おう覚悟はしているさ」
そんなやりとりの中で召喚された真中は困惑した様子をみせた。
「何だよ? これは? 俺を殺した奴の言う事を聞けってか?」
「そうだ、聞いてくれたら、アンタの願いも少しなら叶えよう」
「けっ、くだらねぇ。俺はお前の顏をみるとむしゃくしゃする」
「す、すいません。娘が迷惑をおかけして……」
「お父さん、それじゃあ話が進まないって。謝ったらダメだろ?」
「え、じゃあ、どうすれば……」
明日香は真中に近づき、瞬時に彼の胸に爆弾をとりつけた
「おい、でけぇの、今からお前が契約破棄すると表明したら、その自慢の筋肉がまた木っ端みじんに吹き飛ぶと思え? いいな? わかったな?」
「なっ……卑怯な……」
「どうするぅ? どうするって言うんだ!!」
「クソ……すぐに判断できれば……」
気がつくと正人も真中に近寄っていた。
「男ならハッキリしやがれ!!! この野郎!!!」
正人の罵声は明日香のそれよりも迫力が勝っていた。思わず恐れおののいた真中は「わかった! 協力する! 協力すると表明する!!」と即答した。
こうして明日香の戦闘態勢は段々と整い始めていた。しかしその夜、思わぬ訪問者によって計算は狂うこととなる――
それは1匹の蠅だった。いくら叩いて殺しても、次から次へと明日香の耳元までやってきた。
「クソ! 何だ!? ココ、蝿なんかが湧くような工場だったか!?」
『レディなのに御言葉がはしたないね。西園寺明日香さん』
明日香が顔をあげると、黒と黄色の大きな蜘蛛が彼女の頭上深くまで迫ってきていた。
「死神か?」
『お互いが見えて、こうやって話が出来ている時点でね。悪いけどボクはもう貴女を見つけてしまった。雇用主を教えてくれたらスグに楽にしてあげるけど、それは嫌でしょ~?』
「何が目的なのか?」
『交渉しようよ~!』
こうして彼女は正人と連絡をとらずにその後の戦いを続ける事となった。
正人はテレビでどんどん物騒になっていく横浜を眺めていた。
だけど心配なのは娘だ。自分はどうなっても、娘だけは何とか無事であって欲しい。そう願って止まなかった。
「あなたっ!?」
由真子の悲鳴で気がついた。気が付けば彼は何かに胸を刺されていた。
「がっ!? これは!?」
由真子はすぐに救急車を呼ぼうとしたが、正人の「俺から離れろ! 今すぐ離れろ!」という叫びを耳にして、そのまま携帯電話を手放して、走り去った。
正人は明日香が敵に倒されたことを悟った。頬の傷に手を翳す。
娘と共に痛みを共有した傷をさすりながら「明日香、辛かったな……」と。
そして彼は大きな爆炎とともに爆散した――
∀・)西園寺明日香の過去話はこれにて終了。個人的にはこの話で「繋がったな」って感触があったのですが、皆さまはどうでしょう??あくあまで西園寺明日香に関してだけどね(笑)正人役は個人的に大杉連さんを希望(もうこの世にいらっしゃらないですけどね)。




