~第15幕~
時を少し遡ること、横浜拘置所近く。野神晶子は鉄パイプを持って、黒崎零はメスを持ち互いに衝突するように駆けだした。
「黒崎イイイィイィイィィイイイイィイイイイィイ!!!」
「オオオオオッ!! 野神イイイィイィイィィイイ!!!」
零は晶子の腹を目がけてダイブした。
しかし零の攻撃も晶子の攻撃も外れてしまったようだ。
「いや、上出来か」
外れたようにみえた零の攻撃は外れなかった。
「ぐっ……今何をしたの?」
晶子は腹を一瞬押さえていたが、すぐに離した。修也が修復させたのだろう。しかし零の目的は達成された。彼の手に持つメスには確かに彼女の血痕が滴り残っているのだ。と、零が微笑みかけた途端にメスは分散して消失した。
「小賢しい悪あがきでもしたつもり?」
晶子は落としてしまった鉄パイプを持って、零に向かって振り上げた。零は両手を掲げてガードに徹した。転んでしまった身体を起こすのに遅れをとったのだ。
そして野神晶子の体半分が爆散した――
しかしものの数秒で彼女の身体は蘇生される。だが彼女は困惑するばかりで体を動かすことに躊躇いと恐怖を覚えた。
零はすぐさまに起きあがって逃げだした。
「待て! 待ちなさい!」
再び鉄パイプを拾おうとして彼女は同じ現象に見舞われた。
もはや野神晶子はその場で釘付けとなって、しまいには座りこむようにして倒れ込んだ。逃げだしていた黒崎零は気がつけばこちらへと歩み寄っていた。晶子は自身の置かれた状況が敵に対して圧倒的不利になる状況になると確信し、座り歩きしながらも逃げだそうとした。しかしその中でまた臨死を体験した。
「先輩、俺達の勝ちだよ。アンタたちの負けだ」
時を遡ること、横浜中心街の一角。そのトイレの中。
黒崎零とエレナはとある死神の召喚と契約を図ろうとしていた。
「何だ? ここは? トイレ?」
召喚させたのは鬼道院に葬られた久保達也だった。
「お目覚めか、久保先生」
「誰だ!? 貴様は!?」
「私タチガ始末シタワケデモナイノニ、召喚デキタナ」
「いや、これでいい。これで1つの仮説が証明できる」
久保は思いだした。自身はヤクザのような男によって倒されたことを。
「おい! 人の質問に答えろ! お前らは何者だ!?」
「お前を殺した奴の仲間さ。その元締めと言っていい」
「何だと」
「お前を召喚したのはお前の力を見込んでのことだよ。もしも俺達に協力してくれるならば、お前の願いを叶えるよう協力してやってもいい。その交渉だ」
「ふざけるな! 僕の願いは僕がこのゲームを制覇してこそ成しえるものだ! 貴様なんかの配下に下って叶えてたまるものかぁ!!」
久保は彼の叫び声とともに消失した。
「交渉失敗ダナ」
「さてどうかな」
「?」
「アイツを倒したのは鬼道院だ。でもここにこうして召喚することはできた。で、思いだしてみろ。確かゲームは進行するにつれてルールが変わるのだろ?」
「ソウカ! 零、ソレハナイス案ダ!」
エレナは手に力を込めるが何も起きなかった。
「発動シナイ……」
「仲間にするしかなかったのか? 変な話だな。それならそもそも召喚する事すらできなかっただろうに」
「確カニオカシイ仕様ダナ」
「このゲームがどういうルールで成り立っているのか、俺にはそもそもわからないけど、ゲームには必ず製作した奴がいる。そいつの気分でルールは変わるものだと思おう。エレナ、俺の勘だけど1つお願いしたい」
「何ダ」
「これから絶えず鎌を持つ時以外は右手に力を込めろ。メスを持てるように」
「ソレ意味アルノカ?」
「やらないよりやるほうがマシだ。お願いできるか?」
零のまっすぐな瞳は日に日に力強さを増していた。
「ラジャ、イチカバチカモ醍醐味ダナ」
エレナはウインクして返した。
そして現在に至る。黒崎零は野神晶子の眼前に立ち、彼女を見下ろした――
∀・)はい、ざっとからくりのネタばらしでした(笑)なんとエレナたちは鬼道院が倒した久保達也を召喚していたんですね。そして失敗。だけど能力はエレナのものになる筈だったんですが……ここで死神ゲーム支配人たちの「ルール変更」のくだりに繋がるワケです。ちょっと分かりづらいところだったかもしれませんが、異能バトルモノとしてこの流れは我ながらに作ってて楽しいシナリオでした!いよいよ本章の結末も間近!来週もお楽しみに!




