~第12幕~
エレナは息を呑んだ。死の覚悟、それは一度経験したものだがやはり痛みとしては耐えがたいと思えて仕方なかった。
思い浮かぶは零への後悔、自身の無力さによる無念。
しかし目を開けてみると、そこにはのたうち回る野神修也の姿があった。
「ああああああああああああ!? 頭が!? 頭が痛い!!」
今がチャンスか? いや億じゃなく兆単位で蟲に分裂できる修也に致命傷を負わせる事など不可能に思えて仕方ない。だが今の彼は明らかに深いダメージを負っている。そうならば1つの答えが自然とでてくる。
「雇用主ダナ!」
エレナは翼を生やしてすぐに飛び立った。
「くそっ!! 待て!! どこにいく!?」
エレナが屋上を発って、ほんの数十秒単位か。修也は彼の治癒能力を用いて立ち上がる。だがどんなに辺りを見渡しても、エレナのかけらも眼に入らない。
「消えた?」
修也は考えた。飛行しながら戦った間もさほど彼女は速くもなかった筈だと。
「そうか、どこかに隠れているのね! ほら! 怒らないから出てきなさい! ほら! ボクはこのとおり今隙だらけだよ~!! あ、それ♪ あ、それ♪ ア、ソレソレソレ♪」
何もない静寂が野神修也を包む。
「クソッ! ボクは何をやっている! まともに考えろ! ボクがアイツなら…………雇用主? 雇用主か!」
修也も翼を生やしてエレナを追うことにした。
このほんの少しの時差が運命を変えることになるなど彼は思いもしなかっただろう――
明神翔と西園寺明日香が戦う地は異常な冷気と熱気に覆われていた。
明神翔が光の変化による分身術をとるのに対し、西園寺も氷塊による分身術を多用して爆弾を投げ続けた。しかし翔の分身はいくらでも増えて、彼が放つ光線による攻撃も止む気配がなかった。
「クソッ! キリがない! 本体をだしてこい!!」
「それはこちらの台詞だ。人の技を気持ち悪いと言って真似事か? 情けない死神の鏡だな」
「死神に情けないも立派もあるか! 勝ったほうが正義なの! ばーか!!」
「ああ、勝った方が正義だよな?」
西園寺の顔面間近に翔の顏が迫った。いつの間に彼女は彼に両肩を掴まれていた。
「近寄るな!!」
すぐに翔を突き放すと彼女は親指を噛み“2度目の自爆”をした。
しかし翔には何のダメージも入ってないように思えた。
そういえば気になっている事があった。さきほどから周囲に青い狐火が現れ浮いていた。そこから光線が放たれることもなければ、そこを経由して治癒を施しているようにも見えない。
「考えれば考えるほど無駄か」
彼女は日本刀を出現させて戦い方を変えるようにした。
「全くだ。思ったほどの相手にならなくて拍子抜けしている」
「お前……お、お前!?」
目の前に現れた明神翔は西園寺と同じ刀を持っていた。
そして彼の背後にはモニターのランクが映し出されていた。
1位 明神翔
2位 西園寺明日香
3位 野神修也
4位 黒崎エレナ
「2位だと!?」
「俺の作戦勝ちだ!!」
翔が刀を振り下ろし、彼女は刀を持って応戦した。
しかしその刀は翔から放たれる冷気によって凍結した。
西園寺は飛び上がって後ろへ下がった。
「俺の隠し武器は『ドッペルゲンガー』だ。その能力を真に作用させるまでに、時間を長らくかけなければいけない。様々な用件を満たしたうえでな。しかし長い格闘の末、俺の思惑にハマったようだ。俺をとっとと始末していれば、こんなに惨めな負けを味わうことはなかっただろうな」
「黙れ」
「何?」
「まだ闘いは終わってないだろうが!!」
「何だ!?」
西園寺が叫びあげると翔は周囲で動く分身も含めて一気に凍りきった。
「私の能力は怒り、怒りがあればそれが力となって能力にも活用される。この力は私のオリジナルだ! アンタ如きじゃ絶対パクる事のできない私の人生だ!!」
彼女は拳を強く握りしめて氷った翔の顔面目掛けて振り下ろした――
∀・)いや~熱いバトル展開されています(笑)遂に本当に修也くんに踊って頂きました(笑)これ実際の映像でみてみたいな~。すごくシュールなんだろうな(笑)次回ですがちょっとだけ時間が遡ると言っておきますね。ではでは。また次号!!
 




