~第9幕~
晶子は柏木に連行されて横浜拘置所の裏口から外に出た。外にはハリアーが彼女たちを待ち構える。
「勘違いするな? 保釈ではないからな?」
「わっているわよ」
柏木はゆっくりと周囲を警戒しながら晶子を護送車へと誘導する。
しかしハリアーは突然の落雷によって木端微塵に破壊された。
2人の治安部隊隊員が発砲する。
「何だ!? どうした!?」
煙から一人の青年が出てきた。薄手のパーカーを着た金髪の男。
彼は口元を歪めていた。
「会いたかったよ、お姉ちゃん……」
柏木は勘で晶子を手放した。そして逃避を図ったが、遅かった。
「うわああぁああぁあぁあぁぁあああぁぁあああ!?」
柏木達は無数の蜂たちに襲われて呆気なく絶命した――
「修也、大丈夫だったの……!?」
「うん、ボクはこのとおり元気さ」
顔をあげた修也はいつものあっけらかんとした笑顔を魅せてくれた。そして姉弟はハグを交わす。
「明神は?」
「ああ、ちょっと離れた所にいるよ。大丈夫。今は敵じゃないから。とりあえずここを離れよう。彼と合流して立て直そう。まだボクたちが勝つ手段もきっとある筈だからね……!」
「感動の再会だなぁ!!」
「え?」
2人が振り向くと、そこに赤毛の手榴弾を持った女がいた。
「西園寺!?」
すぐに修也は構えたが相手は爆弾魔、死を覚悟するに他ならなかった。
「おらっ!! 姉弟とも仲良く逝け!!」
彼女が爆弾を投げようとしたその刹那、彼女の顔面は掴まれ、そのまま壁に叩きつけられた。彼女は1度目の自爆で何とか彼女の死を免れた。
「クソッ!! イテェことしやがって!!」
彼女が周囲を見渡すとすぐに白髪で長身の青年が見えた。明神翔だ。
「お前の相手は俺だ。死ぬか生きるか生きていてこその殺し合いだ」
「お~ランク2位のおっさんか。わざわざ死ぬ為にご苦労なモンだ」
「ああ、そうだな、1位は俺の筈なのに妙だと思っていた。お手並み拝見だな」
翔は背後に多色の大きな光球体を浮かばせた。
球体から大きな轟音とともに光線が放たれた。
しかし西園寺に命中する直前で光線は弾かれた。
彼女はその手に爆弾でなく日本刀を持っていた。
「その武器は……鈴木政宗の!?」
「ご名刀。私の新しい力さ! そしてっ!!」
彼女は大きな声をだして両手を地につけた。するとみるみる周囲が氷結していった。気がつけば翔の半身はおろか全身が氷づく。勝負は一瞬でついたかのように見えた――
しかし翔の氷塊はすぐに眩い光を放って爆散した。
「うわっ! まぶしっ!!何だよ? 自爆か!? 人のモノ真似するな!!」
西園寺が目を開けるとそこに5体の明神翔がいた。彼らはそれぞれ3色の光球体を背後に浮かばせた。
「楽に勝てると思うなよ、コギャル風情が」
「気持ち悪い趣味しやがって、体もろとも真っ白の骨にしてやる……!!」
明神翔と西園寺明日香の死闘はこうして始まった――
一方で野神晶子と修也は走って逃亡を図っていた。
しかし修也は晶子の頭上目がけて何かが来る直感を感じた。
「お姉ちゃん!! 危ない!!」
修也は晶子の背中を彼の身体もろとも前へ押し倒した。
襲ってきた飛行体はそのまま墜落したようだが、会話を交わしていた――
「まったくよ~お前の狙い方が下手過ぎて武器手放したじゃねぇか!」
「零ノスイングガ遅レタセイダロ!」
「じゃあ、せめて巧く着地しろ! 痛くて立つのも大変じゃねぇか!」
「痛イノハ私モ一緒ダ! 馬鹿!!」
「ねぇねぇ、貴方の探しているのってコレのこと?」
零が「あ、そうそう、ソレです」と顏をあげると鉄パイプを振り上げた晶子がそこにいた。
晶子が振り下ろした鉄パイプはエレナの鎌によりその攻撃を防がれた。
「零、逃ゲロ!!」
エレナの大声に反応して零は駆けだした。
「バーカ!! 逃げられると思うなぁ!!」
修也が両手を広げると両手に膨大な蟲の大群を集め、それを一斉に放った。
しかし蟲の大群はエレナの持する鎌の一振りによって消された。
鉄パイプを持った晶子はそのまま零を追いかけたようだ。
「冷静になれよ? ミ・アミーゴ」
「ハァ?」
「誰が来たかと思えば、お前が来てくれて嬉しいよ。ランク格下ちゃんよぉ!」
「タダノ虫ケラガ、処分シテクレテヤル!!」
エレナと修也は睨み合い、互いに巨大な翼を生成して空へと舞い上がった。こうして他局面での死闘の幕がそれぞれにあがったのであった――
∀・)追悼柏木……そして新たな決戦の火蓋が切っておとされました!!決戦開始です!!次号!!




