~第7幕~
ゲーム支配人達は特殊なルールの適用をどうするか長らくに渡って議論をし続けていた。しかし水晶玉には戦場と化した横浜拘置所が映っている。
「もうこんな事で意見し合うのは時間の無駄ですよ、皆さん」
「しかし採用するかどうかで彼らの戦闘力は変わる。ランクだって変わる」
「じゃあ、こうしましょう。多数決で例のルール採用にするかしないかで」
「ゴンゾーラ氏も入れたら偶数になるわ。2対2で分かれたらどうするのよ?」
「………………」
「ゴンゾーラ様はこのようにゲーム開始から黙認をずっと続けているのです。彼のその姿勢を尊重するなら、ゴンゾーラ様は多数決には参加しないでしょう」
「卑怯な! 貴方らの推しの為に採用されないことが明白になるだけだわ! こんな民主的でない支配人の在り方、私は断固認めないわ!」
「必死過ぎるよ、マダム。じゃあこの採用でランクが大幅に変わってしまったならば、貴女が何かしら責任をとれると言うのか?」
「少なくともクリュウ・シスターズのように何かしらハンディをつけなくては折り合いがつきませんよ。それも認めないなんて我が儘すぎません?」
「私は譲れない。多数決にするならば、私が納得のいく多数決にしなさい!」
もう決戦が始まっている。とっとと観戦に集中したいのにメアリーは強腰を全く引こうともしない。一支配人の意見を何の信憑性もなくして採用するのは愚行の極みだ。いわばエゴの承認ということになる。しかしだ、ずっとこの悪い空気が充満し続けるのも限界ときている。
溜息をついたマヌ・マルゲは思い切って提案することにした。
「わかった。では条件をつける。このルール採用でランクが大幅に変わる事があれば、即採用を破棄とする。そしてルール採用の多数決を私抜きで執り行う。それでどうだろうか? ゴンゾーラ殿」
ずっと無表情かつ無言を貫いていたゴンゾーラが頷いた。
「ゴンゾーラ様……!?」
「とても理不尽な提案ね、でも背に腹は代えられない。わかったわ。これで私の意思が通らないならば、諦めもつく。これで廃案になるなら、これまでの議論で費やした時間の浪費をお詫びしてもいいわよ」
「ほう、やっとマダムもその気持ちになってくれたか。では採決をとるぞ。例のルール採用の件、賛成の者は挙手をしなされ」
メアリーはまたも「卑怯な」と言いかけそうになりながらも挙手した。そしてその言いかけた言葉は止まった。なんとゴンゾーラも挙手をしたのである。
「ゴンゾーラ殿……!?」
「これは参りましたねぇ」
「でも多数決で決まったわよ? さぁ、採用してくれないかしらね? これでランクが変わったら廃案になるのでしょう?」
マルゲ牧師はやれやれと言った顔をしながらも、ルール規定書を出現させて新たなるルールの書き込みをした。「ランク変動ナシなら適応」と条件をつけて。
1位:西園寺明日香
2位:明神翔
3位:野神修也
4位:黒崎エレナ
「なんと……昨日と全く変わらずだと!?」
「問題ないようね?」
「ははは、我々が神経質になり過ぎていたということでしょうね(笑)これは1本とられましたね、牧師」
「他3名は能力強化で評価も上々のままなのか。修也も2人召喚に成功したと言うのに……」
「私は何の文句もありません。まぁ、これで4体全てが力を強化したという事。マダムもこれで安心ですねぇ」
「ええ、こんなに苦労させられるなんて想像もしなかったわ」
「さぁ、気を取り直して決戦の鑑賞といきましょう♪」
零とエレナは街頭モニターが映すニュースより横浜拘置所の襲撃を知った。2人が立つ市街地は人の一人も見当たらない。おそらく警察も自衛隊も拘置所へと向かったのだろう。
「ランクガ落チテ4位ノママカ……ドウスル、零?」
「………………」
「ミオクルノモ1ツ、ムカウノモ1ツダ」
「このゲームは命懸けだったな?」
「エッ? アア、ソウダ」
「死ぬのも一緒ならば、生きるのも一緒だ。弱腰で戦う奴なんて最初から勝つ気がないのと一緒さ」
「ツマリ?」
「お前の翼で俺をそこまで運んでくれ。あそこには因縁ある先輩がいるからな。挨拶がてら殺し合いといこうじゃないか……!」
零の笑顔はどこか清々しくなっていた。
もはや死すら恐れない凛々しい表情、そんなものを彼女は初めて見たような気がした。そしてそれに応じないワケがなかった。
「承知シタ。シッカリ捕マレヨ?」
彼女は背中に巨大な翼を生やして羽ばたかせる。圧倒的な光景に零は笑ってみせた。そして彼女の背中にまたがり、彼らは渦中の横浜留置所へ向かう――
∀・)いや~我ながら濃い話になりました(笑)そして支配人達の会議、そこででた議論と結論はわかりやすいフラグにしちゃったかもしれません(笑)えっと、新しいルールの適用って何だと思いますか??わかった人は感想に遠慮なく書いちゃってください(笑)ではではいよいよ戦場へ!次号!
 




