~第6幕~
横浜拘置所で大量の害虫と毒物、それから謎の超音波によるテロが生じたとテレビが報道した。その報道よりもいちはやく知らせを聴いた『零の破滅』隊員達は治安部隊総本部から横浜拘置所へと行き先を変えた。
「へ~そこに行くのね」
「何か不満があるか?」
「いや別に~。だけど、そもそも今回の案件ってどれも可笑しいと思わない?」
「可笑しい?」
「俺は人間の仕業だと思えないね。アンタらがいかに戦闘のエキスパートかは知らないけど、俺だったら様子をみるな」
「どういうことだ?」
「俺の話を聞くなら車を停めろ。今すぐ」
力也は少し躊躇した。しかし即断した。
「おい!! 今すぐ停車しろ!!」
彼の大きな声は運転手の耳を突き刺した。
「我々の本意ではなくとも、白崎、お前は黒崎零捕縛のキーパーソンだ。そして俺がこの隊の隊長を務める。どんなに馬鹿馬鹿しい話であっても、お前の話をいい加減に聞くワケがない。話を聞こうじゃないか」
「そっか、じゃあ簡単に話そう。何だっけ? 害虫が? 毒物が? 超音波? そんなものを一個人が入手して突然公の機関を襲撃できるか?」
「いや、それでも……」
「まだ画像も送られてない。確かに彼の言う通り一個人ではこんな事ができるワケがないだろうな。その理屈は確かに認められる」
「ふふ、そこがわかればいいよ。何の正体もわからないのに、目標を定めずして戦闘に入るのはノータリンのすることだ。そして簡単に命を落としてしまうと俺はみたな。俺を殺したいのは自由だが、俺の勘が言っている。死ぬのはお前らだって同じだと」
「ではどうするのが良いと思う?」
「総本部とやらに行くのだろう? じゃあそこに連れて行けよ。そこでチームとしての纏まりを作るのが先決だ。そうじゃないのか? 隊長さん?」
白崎創の言う事はありきたりだが、的確だ。文句なくそう思えた。
「わかった。行き先を総本部へ変更しろ」
「いいのですかね? 隊長?」
「問題ない。私が責任を持つ」
「ふふっ、イイ隊長さんだね」
「しかし白崎、お前がさっき言ったことが何なのか気になるな」
「さっき言ったこと?」
「人間の仕業でない? だったら何の仕業だ?」
「ああ~それは勘で言った事さ。俺にもよくわからない。でも寝床についてさ、夢をみて起きて、それでもまだ夢のなかにいるような気持ちがするのよ。ほら、ここ最近の横浜の記事を読んでしまうと余計に。ま~俺が刑務所の地下深くでずっとプータロウしているからかもしれないけどな」
零の破滅一行は明神隊長の指示で治安部隊総本部へ行先を変えた。
そしてその時だった。
「横浜拘置所、爆破まで連発して起きました。これはもうまるで……」
「戦争だな」
「まさしく」
「本当に拘置所へは向かわなくていいのですか? 隊長」
「ああ、ここの重要参考人が死んで貰っても困る事だしな。なぁ、白崎よ」
「隊長さんがある程度は頭が使えるようで安心しているよ。お世話になるね」
羽藤はタブレットを持った手を震わせていた。
それはどこか戦地に行きたくない本音の表れなのかもしれない。
力也は総本部へ電話をかけ、総本部へ向かう事を伝えた。総本部はその旨を全面認める事とした――
∀・)零の破滅のターンでした。彼らが選んだ道は戦闘回避、果たしてその判断の先にあるものは。次号も引き続き宜しくです~!!




