~第5幕~
野神修也は母の手によって殺害され命を失った。その筈だった――
「ん?」
修也は目を覚ました。彼はいつも立ち寄る公園に寝転がっている。
ゆっくりと体を起こす。そこに修道服を着た壮年が立っていた。
『目を覚ましたか。野神修也よ』
「おじさん、誰だ? 日本語が話せるのか?」
『君らの言語は天の仕組みによって通訳され、私でも話せるようになっている』
「天の仕組み? ワケわからないね(笑) あれ? ボクって刺されて?」
『ああ、母親に刺されて死んだ』
「そうなのか……じゃあここは天国? 地獄か?」
『どちらでもないよ。強いて言うならば地獄の門とでも言っておこう』
「何だよ、ボクの舌でもちょん切ろうって言うのか?」
『まさか。ただチャンスを与えようとしているだけだ』
「チャンス?」
『そうだ。君は死神になるか? それとも諦めて新たな生の世界へ向かうか?』
「死神? 新たな生の世界?」
『そうだ。君が戦うと言うのならば、まさに君に相応しい力を与えよう。そしてその力を使って君と敵となる死神を殺すのだ。全部で15体、全ての敵を倒すことが出来たのなら何でも願いが叶えてやる』
「何だよ……何かテレビゲームでもするっていうの?」
『ああ、テレビゲームなんかよりもっとリアルでスリルのあるゲームさ』
「おいおい、おじさんさ、そのナリでその文言は胡散臭くてダサいぞ?」
『修也よ、あれをみろ』
「え?」
黒人牧師の指さした先に見覚えのある男たちが現れた。
「あいつらは!?」
『君を学校退学まで追い詰めた張本人だろう? まずは1つ君の願望を叶えてさしあげよう』
黒人牧師は右手をあげると修也を虐めていた3人の男達を指さした。そしてその右腕全体が幾千もの蜂に分解されて男達を襲った。
男達は見るも無残に蜂の大群に襲われて倒れ込んだ。
修也は唖然としてみていた。しかし思わず言葉が漏れた。
「カッコいい……!!」
修也の輝く瞳に黒人牧師も驚きを隠さずにいた。だがこれは彼の心を打った証拠だ。牧師は言葉を続ける。
『話を聞いてくれるか?』
「うん、聞くよ。面白そうだ……!」
野神修也は自身の復讐を自身の愛する虫が果たしてくれた事に快感を覚えているのではない。それよりも、もっと違う彼の願望を牧師は見抜いてしまった。そして『これはとんでもない存在を見つけてしまったな』とぼやくのだった。
修也が死神ゲームの世界に降り立った時、彼は彼を殺害した母親がそのまま自殺して死んだことを確認した。「チェッ、倍返しにしてやろうと思ったのに」と呟くと、彼は歩きながら考えた。
死神には雇用主が必要。その雇用主をまずは決めて登録しなくてはならないらしい。候補は2人いた。大深山か、晶子か。
「さて、この世界でどれだけのことができるかだね」
大深山はスーパーの店長、晶子は女子大生ながら豪邸で暮す令嬢だ。どちらを選ぶのか、彼は情ではなく戦略を以てして判断することにした。
そして彼が選んだのは多大な経済力を持つ晶子だった――
横浜拘置所すぐ近くの建物の屋上に修也は明神翔、小倉仁、菊池叶子の4人が揃い踏みした。修也は突撃時刻まで考え事をしていたようだ。
「しかしこんな目立つ所に居て誰も気がつかないなんてね、死神ってホントに便利な人種ね」
「俺達はいわば幽霊だ。人種なんてものではないぞ、三流占い師」
「何よ? ヤル気?」
「おいおい、お前達がお前達でドンパチを始めたら契約違反で消失することを忘れてないだろうな? まったく野神よ、お前が召喚したのだろ? ちゃんと責任持って飼いならせよ?」
「…………」
「おい、聞いているのか?」
修也はそっと微笑んで振り向いた。
「女子高生の召喚に失敗したロリコンおやじには言われたくないよね~」
「なんだと! 女子高生を呼んだのは、た、た、たま、たまたまだ!!」
「タマタマがしっかりしてなきゃあ、ここからの戦いはすぐ死んじゃうだろうよ。仁さん、叶子さん、ボクが使えないと判断したらすぐに契約書は破るからね? わかっているね?」
「わかっているわ」
「わかっているさ」
修也は大きく息を吸い込む、そして大きく息を吐いて掛け声をあげた。
「いざ出陣だぁ!!」
彼は満面の笑みを浮かべていた――
∀・)はい、野神修也・過去話の巻でした。そして現世に戻り「姉貴救出大作戦」の開始です(笑)ここからまたバトルで盛り上げていけたらと思うんで、宜しくです!しっかし本章は本当にノガミーなお話になりそうですね(笑)ノガミスキーな御方がいらっしゃいましたら、是非感想で声をあげてください(笑)彼に返事させます(笑)次号!!




