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15:無策の代償

 完全にミスった。白流魂奴は高度な知性を持ち合わせていないと決めつけていた。いや、実際にそうなのだと思う。だが、俺の目の前の存在に追従し、その行動パターンを変化させることを。俺は予測できなかった。バガイ山で、俺とレッドアビスはその動きを止めていた。


「──エイルっ」


「流石に強いね。この子達のエゴフィールドで常人には瞬きすらできないだろうに。言葉を発した……けれどもう終わりだよ。君を消す。僕はもう誰にも止められない」


「有利になったと思った途端に嬉しそうだな? お前、分かりやすいぜ。体は全く動かねえ、けど、俺は諦めが悪い」


 啖呵を切ったが俺はエイルの策略にハマり、味方と分断され白流魂達のエゴフィールドに俺の動きを超減衰され、ほぼ完全停止に近い。絶体絶命、けどまだ諦めちゃいない、俺の思考は意志は、まだ止まってないから──



──────



──4時間前、アルルスラント地下。


 俺とアグル、イグル、イルシィはイリーに呼び出され、地獄兵器製造ラインに来ていた。製造ラインは稼働していない。まぁこの前シオンと俺が暴れたせいで滅茶苦茶だしそれどころじゃないか……反省しないとな。


「お、来たか。これこれコレを君たちにって思ってさ」


 イリーの隣には肩で息をするシオンの姿があった。かなり疲れてるみたいだ。でもコレってなんだ。シートが被せてあってよく分からないが……イリがニヤニヤしながら勢いよくシートをずりおろした。


「これ……アルターエゴ、いや地獄兵器か!?」


 シートの中には水色と白のフレームのアルターエゴらしきロボットが3体あった。けど多分普通のアルターエゴじゃないんだろう。イリーがニヤニヤと嬉しそうだったし?


「ほう? レン、その顔、君はただのアルターエゴじゃないと気づいたみたいだね? そう! これはただのアルターエゴじゃない! アルターエゴ・アビス! アビスフレームだ!」


「アルターエゴ・アビス?」


 アルターエゴ・アビスってことはあくまでアルターエゴの一種ってことか?


「まぁ言ってしまえば地獄兵器とアルターエゴのハイブリッドだよ。性能は地獄兵器に劣るがアルターエゴと完全互換でパーツも使えるしなんと自己修復機能もアルターエゴと同様、いや少し性能が高い! 基本性能が高い、つまりアルターエゴの完全上位互換がついに完成したんだよ」


「なるほど、けど単純に性能が高いってだけじゃないんだろう? それならイリーがここまで喜ぶとは思えないし何か機能が追加されてんのか?」


「察しがいいね。そうこいつには特別な機能があるんだよ。その名もスプリット・エゴフィールド! 白流魂奴の能力に着想を得てね、なんとか再現できないかと色々試してみたんだ。それで結局再現はできなかったんだけど収穫があったんだ。人間の持つ感情を分解してそれを複数のアビスフレームで収束させ擬似的にエゴフィールドやエゴをブーストできるのさ」


「どういうこと? 感情を分解しちゃったら力は弱くなるんじゃないのか?」


「前に説明したろ? 通常感情に少しのズレでもあればそれらは衝突し減衰を引き起こす。だが感情を分解し同じ感情の、いわばかけらのようなものを収束させれば、衝突は起こらない。様々な入り混じった感情の中で、怒りとか悲しみとか闘争心とか殺意とかそういった感情の種類ごとに分解しそれぞれを収束させる。だから純粋エゴの力を連携することによって高めることができるのさ」


 なるほど、感情をジャンル分けしてそれぞれに収束してそれらをさらに束ねるってことだな。しかし、そうなるとエゴというかワガママさはあまり感じないし何となく無機物的だなと思う。


「そのスプリット・エゴフィールドとエゴフィールドは使い分けられる感じだろ? じゃないと単独行動の時は分解する分無駄にエネルギーロスしそうだし」


「もちろん両方あるし使い分けられるよ。けどエネルギーロスはほとんどないね。僕も思うのさ、きっとワガママさっていうのはアルターエゴにとって大事なことなんじゃないかって」



──────



「みんな聞いてくれ。状況が変わった。今すぐにでもバガイ山の白流魂奴を殲滅しなきゃいけなくなった」


 みんなイリーの応接室に呼ばれ集まっていた。そしてその最初の発言がこれだった。


「なっ、まだロクな対策も思い付いてないだろ!? 自殺行為だ」


 白流魂奴に無策で挑めば負けるのは分かりきってることだ。だがイリーは白流魂奴を殲滅しなければいけないと言った。ロクでもない状況に変わったってのは創造するまでもない。


「バガイ山が……このままでは大爆発を起こす。ただの爆発じゃない……魂を消滅させる風を起こす爆発、エーテル爆発だ。バガイ山は大量の精神感応物質がある。エイルと白流魂奴はそれらに自分たちのストレスの影響を与えて、爆発させるつもりだ。昔の大戦争の時、人々が大量のストレスを抱えたことがあった。そのときは別の山だったが。精神感応物質が大量のストレスに反応してエーテル爆発を起こしたんだ。その時のデータと似ているんだよ。精神感応物質の発している波動が……そっくりだ」


「魂を消滅させる? そんなヤベェことが……」


 突拍子もない。けどそもそもこんなオカルティックな状況に巻き込まれまれてきた現状。自分でも驚くほど素直に受け入れていた。


「なるほど、そういうことか。エイルはレンを狙ってる。ってことは最低でもこのアルルスラントは巻き込まれる規模……か。イリー被害はどれぐらいになると思う?」


 ゼルは状況を聞いても冷静だった。そしてどこか冷たいように感じた。


「地獄の人間の3分の2は死ぬだろうね。バガイ山は精神感応物質が大量にあるから。だから現状無策でも対応しにいかなきゃいけないんだ」


 誰も異論はなかった。みんな顔を見合わせて頷くと、出撃の準備を始めた。バガイ山に、白流魂奴とエイルを倒しに行くために。



──────



 バガイ山に行く準備はすぐに終わった。イルシィとワンズ兄弟はアビスフレームに乗っている。俺とゼルとシオンはそれぞれの機体に乗る。俺たちはバガイ山に向かい出撃した。ブースターを噴かし一直線、目的地にはすぐについた。白色に染まった山が見えた。


「なぁ策はあるか?」


 移動中にみんな考えていた。俺も考えていたが思い浮かばなかった。


「策はないです。けれどキーになりそうな白流魂奴の情報はあります」


 イグルが希望の持てる発言をする。それだけで少し心が落ち着く。


「白流魂奴はある一定以上の脅威にしか減衰を行いません。なので見た目上の脅威を騙せればあるいは。それと、奴らの減衰させる力には限界がある。そして、減衰にはかなりのエネルギーを消費する。それが俺の予想です」


「けど、エネルギー消費させてエゴフィールドを展開させなくする時間はなさそうだよな。っは、後手後手だな。けどやるしかねぇ──っ!?」


 バガイ山から麓の俺たちに白いビームが飛んでくる。俺たちのエゴフィールドで減衰されそれを避ける。白流魂奴の変身状態から発射された攻撃だ。その攻撃が山一面から降り注ぐ。途切れなく発射され続ける秒間2000は軽く超えるだろう銃撃。一箇所に集めっていてはいずれ誰かに命中するだろう。


「分散するしかないか! 俺とゼル、シオンはそれぞれ別の方向から攻める。イルシィとイグル、アウルはここで対応してくれ!」


 バガイ山を4方向から攻める。相変わらず策はない。だが、そうせざるを得ない。俺はブースターを噴かし、右方向にバガイ山を中心として旋回していった。



──────



 レンや、ゼル、シオンがそれぞれの攻撃方向へと移動していく。そんな中も白流魂奴達の射撃は続く。レン達が散ったことにより攻撃も分散しイルシィやアウル、イグルでも楽に避けることができるようになった。しかし──


「……ダメだ……」


「アウル!? ダメって何が……」


「イグル、ダメだ。このままじゃ死ぬ。みんな死ぬ……」


 アウルの顔は青ざめ震えていた。


「アウル? なんでそんなことが分かる。まだわからないだろ! マスターと変わるって約束したんじゃないのかよ!!」


「ああ、約束したよ。オレも変わりたい……けど!! 分かるんだよ!! この雰囲気、前のマスターのときも父さんと母さんのときも感じたんだよ!! みんな、みんな死ぬ。逃げなきゃみんな死ぬんだよ! いや、違う、逃げてもみんな死ぬんだ!! エーテル爆発に巻き込まれて死ぬんだ!!」


 アウルは完全にパニックを起こしていた。異常な強迫観念が彼を追い詰めていた。


「アウルさん? でもまだそんな絶望的な状況じゃないでしょ? やれることをしないと! 生き残る可能性すら生まれないよ!」


 イルシィの言う通り、状況はそう絶望的ではなかった。確かに白流魂奴を攻撃する手段は見つけられていないが敵の攻撃は楽に避けられるレベルでまず誰もしなないだろうからだ。しかしアウルはパニックを起こしていた。


「あ、あ、うわああああああああああああああああああああ!!!!!!」


 アウルは叫び声を上げ、持ち場から離れ、逃げた。


「そんな! アウルさん!? 逃げ……ちゃった……」


「……っ。違う、きっと違う、逃げてなんかないんだ。あの時マスターと約束したアウルは前を向いてた。覚悟があったんだ。だから逃げたりなんかしない! きっと何か、理由があるんだ! もしかしたら策を思い付いたのかも!!」


 イグルは希望を見ていた。長年アウルと一緒にいて見ることのできなかった。アウルが前進するという希望。その希望をイグルは信じたかった。


「イグルさん……私はもう何も言いません。けど、イグルさんまで取り乱したら死んでしまいます」



──────



「これだけ、離れれば十分か……やっぱり白流魂奴の攻撃も奴らのエゴフィールド内に入っていなければ大したことはない。けど、どうやって白流魂奴を倒す?」


 俺は右旋回を終え、自分の攻撃地点に着いた。しかしやはり策もなければ攻めることはできない。ん──?


「通信が切れてる……? まさか、ジャミング? エイルの仕業か! クソ、イグルの言う話で可能性を感じたのは攻撃の見た目上の脅威を抑えることとやつらのエゴフィールドの限界を超えること……」


 エイルを退けたあの時のエゴバーストなら限界を超えることができるか? けどあの時はエイルへの怒りで無我夢中だったからできたことだ。こんなシチュエーションじゃ多分無理だ。となると見た目上の脅威を抑えることか……


「受けても問題なさそうな攻撃で致命打を与える……どうする。どうすれば……待てよ。そういや放水で奴らの減衰能力を使う脅威度を調べるとか言って……もしかして、速度? 速度なのか? なら速度の遅い攻撃なら!」


 レッドアビスのバックパックからアルターエゴ用の手榴弾を取り出しそれを投擲する。弧を描くようにゆっくりとしたスピードで投げた。


 ──ズガァ!!


「当たった!! ダメージを与えられた! 白流魂奴に効いた! けどやっぱ白流魂は大した知能は持ってないみたいだな。爆発にビビって逃げてる。このまま削りながら押し込めて一網打尽にしてやる」


 白流魂奴が逃げてできたバガイ山の余地に侵入する。手榴弾をできるだけ多くの白流魂奴に当たるように投げ続ける。面白いように白流魂奴達が爆発で溶けていく。


「──ありがとう。君がそこそこの頭の持ち主で、特別に優れているわけじゃなくて。これで安心できるよ」


「──!? お前は……エイル!!」


 上空からエイルの変身体が降りて来る。俺は間違えた。やつの言葉ど通りなら俺は……嵌められた。


「──ッ!!」


 マシンガンでエイルへ射撃する。エゴフィールドで強化すれば足止めぐらいは──


「──な……!?」


 俺は動かなくなっていた。体が動かない。それがどうしてかレッドアビスのモニターに理由は映された。白流魂奴たちが「地中から出てきた」俺を取り囲むように。こいつらは待っていたエゴフィールドを展開せずに俺がこの場所に来るのを……最初から!!


感想が滅茶苦茶ほしいので感想ください! お願いします!

モチベを保つために必要ですので!

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