女王の国 王都編 1
前話までの前置きが長くなりましたが、ようやく物語の本編です。
故郷への帰還するための魔法を研究していた主人公が、新たな発見を探して自ら旅をする物語。
つたない文章かつ超急展開ですが、よろしくお願いいたします。
さて、長い長い回想が終わり。ようやく話を神様に御呼ばれされた所に話が繋がる。
呼ばれは理由はまだ分からないが、僕がいまだ故郷に帰る気持ちに変わりはないこと宣言した。そんなこと神様なら直接確認しなくたって分かると思うが。
「あ!もしかして身体を男にしてくれるために、わざわざ呼んでくれたのですか!流石神様!ここまで頑張り続けた私へのお礼ですね!」
「いや、そんなことつもりまったくないぞ?」
神様がそう答えた瞬間、あたり一面が眩い光で埋め尽くされたかと思うと。それらが破裂し空間が揺れ轟音が駆け抜けていく。膨大な魔素その物を破裂させ魔素の大爆発をさせたのだ。
通常、人間では魔素を扱うことはできないが例外はある。魔王の事だが彼も完璧には使いこなせなかった、使えていれば最後であっさりやられたりしなかったろう。魔素を使いこなせるのは、それを管理できる魔族だ。魔族が圧倒的力がある理由でもある。
これをやった本人はもちろん僕なのだが、効果があったか分からない。なんせ声しか聞こえないからだ。
今ようやく100年前の告白事件の鬱憤を晴らせるんだ、遠慮はしない!全力でやらせてもらう。
「どうじゃ?少しは気が晴れたじゃろ?こんな魔法は地上で使えば国が吹っ飛ぶからの。ストレス発散じゃ。」
前言撤回だ、殺してやろう。
神様の余計な気遣いのせいでむしろストレスが溜まる。
その後、本気で魔法を繰り出しまくり。この身体が疲れ果て動かなくなった。
「あー・・・と、あれじゃな!ようここまで強くなったの!」
「あ?なんか言いました?」
流石にここまで攻撃してくるとは思いもよらなかったようで、少し遠慮がちに褒めて言葉を掛けてくれたのだが、ついつい威圧で返してしまった。別にそこまで怒るつもりは無かったのだが、始めたら止まらなくなってしまった。思いのほか自分の中にストレス溜まっていたんだろう。
「すみません、しっかり頭は冷えました。さっきはごめんなさい。」
「謝る必要は無い、儂もからかい過ぎた。実を言うとなお主を呼んだ理由は、ストレスを発散させる為でもあるが。今のお主がどれだけ強力な魔法が撃てるか確認したかったんじゃ。」
神様の思惑が何となくわかった。ストレスの発散とは言っているが、実際は力の測定をしたかったのだろう。魔王が起こした戦争の時に、全力を出してそこそこ大きな山があった所を平原にしたこともあったし。どれほど成長してるか見て見るために、僕のストレスを利用したようだ。
ちなみに先ほど使った魔法は、その戦争時よりもずっと強力になっていると自分でも思った。たぶん研究した魔法圧縮の効果が出ているのだろう。
「お主も気が付いておるだろうが、なるべく派手に使ってくれるなよ?ただでさえ面倒事を寄せるんじゃからな。」
古龍にも言ったが、好きで面倒事を呼び寄せているわけではない。
「神様、ご心配には及びません。私も以前の事で反省しています、ご安心ください。」
「お主がまた暴走しかねないからの。よいか?お主の力は既に古龍の力をはるかに超えておる、この世界では対等に戦える相手はおらん。使い方次第では万人を助けられるが、一つ間違えれば万人を滅ぼすことも出来る。それを忘れるでないぞ?」
神様がそう言い終えた瞬間、真っ白の空間から泊っている宿屋の部屋で目を覚ました。
今回は随分急に飛ばされ、別れの挨拶も無に戻されたな。基本神様は不干渉、僕は迷い込んできたから面倒を見て貰ってるけど本当ならありえないからな。こうやってわざわざ来たってことは、僕の力が忠告しなければいけない位にまで強くなったのだろう。
しかし困った。今起きたばかりで、外もすでに日が差しているのだが・・・全然寝ていない。
結局そのまま寝直したのだが、外の金属を叩くような音や職人の怒鳴り声が騒がしく深く眠りに就けないまま、お昼より少し前に起きた。
「女王の国」王城はもともとあった山を利用して作られており、まるで城が山に半分飲み込まれたような見た目をしている。
城の周りを貴族達が住まう区画になっている。一つ一つの屋敷はかなり大きい、しかし屋敷の外見が岩を切り出した素材をそのまま使っており、尚且つ不揃いで不格好に見える。全体的に岩の色そのままなので景観も美しいとわ言えないだえろう。
城下町はむしろ整えられている、建物も派手さはないが、石レンガを積み上げて作っており綺麗な作りだ。イメージしやすいのは半田赤レンガ建物だろうか。あくまでイメージ、赤レンガも使っていない。
建物は整っているが、きちんとした用途別の区画を整理していない為、あちらこちらから騒音が聞こえる。
初めて来た人はまず驚くだろう、王都がこれだけ騒がしいことに。理由はこの国の大きな収入源になっている産業が関わっている。
ここ山岳地方では様々な鉱石が採れる。金鉱、銀鉱、銅鉱、鉛鉱、鉄鉱などや。ここの山岳地方の特産物、魔鉱石など多岐にわたる。
その鉱石から冶金されたものを使い、武器や防具あるいは農業用の道具や日用品に至る様々な物に加工する鍛冶屋が非常に多い。鍛冶屋が王都の至る所にあるので、そこかしこから大きな音が聞こえてくるのだ。
さらに、そんな環境のせいか職人の声がデカい、音に負けないように大きな声で話す必要があるためか必要以上にデカい。
国の一大産業になっている鉱業、ここまでの規模になったのは「魔鉱石」の存在だ。
「魔鉱石」魔力を秘めた鉱石と言われる特殊な鉱物。もともとは只の鉄鉱なのだが、魔素溜まりの影響を受け魔素からにじみ出てきた魔力を取り込み長期間かけて変質した物。過去に魔素溜まりが出来、そこに鉄鉱があれば魔鉱石となる。
なので世界各地で採掘できる鉱石なのだが、そこそこの魔力しか内包してなかったり、品質がいまいちだったりするのがほとんど。しかし、この国の山岳地方で採掘されている魔鉱石はほとんどが一級品。
一級品は採掘される中でも品質が良く、内包している魔力が多い。
そして、その中でも特級品と呼ばれている魔鉱石がある。
この国でしか採掘されないブランド品、属性を秘めている魔鉱石。
魔鉱石の特徴の一つ、魔力を供給すると強度が増すというのがある。
何もしない状態だと、鉄を少し上回るくらいの強度しか無い物だが。魔力を供給することで、魔鉱石は他とは比べ物にならない位の強度になる。さらに、魔鉱石の中でも品質が良く、内包している魔力が多ければ多いいほど、魔力を供給した時により強くなる。
そしてもう一つの特徴が、属性を秘めていること。
魔鉱石のほとんどが魔力だけを秘めているが、稀に 火、水、風、土のどれかを秘めた魔法属性の鉱石が採掘される。見分け方は非常に簡単だ、普通のと比べると色が違う。火は赤い色、水は青い色、風は緑色、土は茶色。
この属性付魔鉱石は、魔力を通すと強度が上がるのは同じだ。さらに属性にあった術式を入れることで、追加効果を付与することが出来る。
一例を挙げるなら、炎を纏ったり、周囲に水を出現させたり、突風を生み出したり、地形を変化させたりなど様々な追加効果が付与できる。道具に加工する際に術式を刻み込む為、そこで求めている効果を調整することが出来る。この属性付魔鉱石は、同じ属性の魔法を使用すると威力や効果が上がる。その効果を求めて、魔法使いが自分の杖などの装飾品などに使ったりもする。
ちなみに通常の魔鉱石でも、術式を刻み込むことは出来るが ほとんどが発動しない。
まったく使えないわけではない、魔力を纏わせて切れ味を良くしたりする術や、防具や鎧などで重さを軽減する術など。簡単なもであれば発動する。
同じ魔力の塊なのになぜ使用できないのか、属性が付いていないからだと言われているが、解明されているわけではない。
この国でしか採掘できない特殊な魔鉱石。この国の顔であり、大きな国へと発展し今でも支えとなっている魔鉱石を、国の名前を取り「女王石」と名付け、ブランド化されてた。
さて、この国が騒がしい理由の話だったが。
先に申した通り、魔鉱石で有名で品質も良い。採掘量が多ければそれを加工する職人が増える、さらに道具を作る職人も集まってくる。そして、他に負けないように腕を磨き熟練してくると、腕の良い職人も生まれてくる。有名になれば、弟子になりたいと人が集まり教えを乞う。
そうなれば当然。師弟関係が出来、指導にも熱が入る。
「ばっかやろーーーー!!!そんな貧弱な叩き方してたら!!伸ばす前に鉄が冷えちまうだろ!!!もっとシッカリ叩かんか!!!」
「すっすんませーーーん!!!」
金属を加工する音にさらに熱い指導の声、宿の場所が悪かったのもあるが。これを毎日されていたら気が滅入ってしまう。初めて来た人は本当に驚くだろう、この騒がしさと・・・それに慣れて平然と暮らしている地元民に。国民性があまり細かいことを気にしないたちなんだろうと僕は結論付けている。
あまり眠れず、まだ目覚めていない頭で今日の予定を思案した。とにかくゆっくり寝たいのだが周りが静かになるのは夕方。空間魔法を使えば音をシャットアウト出来るのだが、使うべきではない。
空間魔法が使えるだけでも大事になる場合がある、普段から使っていては必ずぼろが出て面倒事が舞い込む。
そう、これが面倒事対策の一つ。
「常人の基準で考え、行動し全てを真似よ。自分のチートの方法なら解決できるの考えは捨てちまえ!」
いやいや、そんなことってもどうせバレる?そう思う方もいるだろう。そう現に僕もそれは何度か経験済みである。その失敗したと言う経験値が僕にはある。
さらに、あまたある「俺強いけど、それ隠して生活するぜ。」的なラノベ小説の主人公がやってしまった失敗談の知識もある。まったくもって完璧だ、隙は無い。
そんな訳だから魔法は却下、ご飯でも食べて眠気を飛ばそうと思い近くの出店が並んでいる通りへと足を向けた。
辿り着いた通りは丁度昼の時間帯だったため、かなりの人で埋め尽くされていた。
鍛冶屋の見習いや弟子たちが、安くて量が食べられる屋台に群がっていたり、顔なじみなのか気さくに挨拶しながら持ち帰り用の弁当を受け取っていたりしていた。
そこかしこから良い香りがして、眠気もどっかに行ったみたいで一気に空腹がやってきた。とりあえず、目の前屋台で売っている串焼き肉を買って食べよう。
その後、串焼き肉を食べながら美味しそうなものを見つけては、お持ち帰り用で包んでもらい両手一杯になったので、城下町中心近くにある大きな噴水のある広場で座りながらのんびり食べていた。
「この茸の炒め物も大変美味ですね。」
茸の美味しさを味わっていると。
高身長で服の上からでもしっかり鍛えてることが分かるくらい引き締まった身体、金髪の長髪をポニーテールでリボンで結わえた女性が。後ろから追って来ている騒がしい集団から逃げるように広場に駆け込んできた。
「お待ちになってください!」
「鬼ごっこは終わりにしましょう!」
「ぜぇ、ぜぇ、と、止まって~」
一人情けない声を出しているが、あれは衛兵達であろう。彼らの言葉遣いから察するに、追われているのは身分の高いお嬢様だろうと推測できる。
・・・ふむ、あの女性。幻術系の魔法広場に入った瞬間発動したな。なかなかの腕前あれは危険だ。関わらないよう目を伏せよう、知らんぷりをするまでだ。見ない見ない。
そうしている間に、騙されている鬼ごっこの集団はあっという間に広場を駆け抜けていった。集団が居ないのを確認した後、食事を再開しようと買っておいた飲み物を飲もうとしたのだが・・・無くなっている。
「ごめんなさい。水分が欲しくて勝手に頂いてしまいました。」
そう声が聞こえた瞬間、反射的に飛びのいてしまった。
「あら、随分と良い動きしますのね。」
彼女の眼光が鋭くなった。
僕の面倒事対策その一が、早くも失敗してしまった。えぇ、分かってましたよ。どうせこうなるんでしょうね。だが諦めない、全力で言い訳プラス話を逸らす作戦!
「私は一人で流浪の旅をしておりますので、多少は覚えがあります。飲み物は、背後を取られたのです私の失態ですから構いません。ですがわかりません、貴方は確か追われて広場を出て行ったはずですが。」
貴方が幻術系の魔法を使ったのは分かるけど、ここは知らないふりをするのがベストアンサー。
心得があるけど未熟アピールもした、さぁ!これでどうだ!
「女ってだけで危険度が上がるのに、さらに一人で流浪の旅してるの?それが本当なら、多少どころじゃなく相当な腕前の間違いでしょ、はぐらかそうとしても無駄よ。事実、私を認識してからの動きはどう見ても半人前ではないわ。そして質問の答え、私が魔法を発動した瞬間、貴方だけが目を閉じてそっぽ向いた。見なければ良かったと後悔するみたいに。」
グフッ!何だこの子、意外とよく見てるー!しかも僕も墓穴掘ってるー!そうだよねー、普通女一人は危ないからしないよねー。チクショウ! 何が「常人の基準で考え、行動し全てを真似よ。」だ!全然できてないよ!
しかも、最後のは言い当てられちゃった。本当に良く見てるな、何なのこの子!
「ふふっ、表情を崩さないのだけは褒めてあげますわ、お上手なのね表情隠すの。その仮面を剥がしたくなりますわ。」
ポーカーフェイスだけは得意なんだ。研究ばかりしてると表情筋を使わないからね、いつの間にか出来るようになってたんだよ。
「そんなに警戒しないでよ、別に何もしないわ。」
「それで、私になんの御用でしょうか?」
「その食べ物あなたのでしょ?走り過ぎてお腹が空いていたのですわ。沢山あるみたいだし、良かったら分けてくださいませんか?」
僕の負けだ、良いだろう。飯を食べ終わったら、さっさと離れてしまえばいいのだ。後は変な事を口走らないように極力喋らないようにしよう。
こんな時、僕みたいな奴向けの 「これ一冊読めば大丈夫、明日からあなたも立派な一般人!」みたいな参考書売ってないかなー。
あるはずもない本へ思いを巡らせていると。
「自己紹介していませんでしたわ、私はクリス。あの追いかけっこ見てたから分かるかもしれませんが、詮索はしないでくださいませ?」
先ほどの僕への質問しといて詮索するなと言うのか、まぁしないけど。絶対しない。
「それで?貴方、お名前は?」
名前か。
そうだ、名前考えてなかったな。昔は「イチラン」とか「フタバ」とか「ミツバ」とか適当に決めてたな。魔族の奴らには「小僧」とか「人間」とか「娘」とかだったから、それに慣れちゃってたな。
いいか、宿の宿泊名簿に書いた名前そのまま使おう、この旅の間は。
「ナナミです。」
単純に一から順に来てるから、今回はこれで行こう。安直すぎるかもしれないが覚えやすいから良し。
挨拶お済ませると、クリスは結構な勢いで買っていた屋台の食べ物を食べた、全くの遠慮無にだ。
そこそこの量を食べたはずなのだが、彼女はまだ食べ足りないらしく。私を連れまわし食堂巡りに付き合わされた。もちろんその道中では、クリスを探し回っている衛兵に見つかり。クリス一人で逃げればいいものを何故か僕を抱えて逃げ回る始末。
「クリスさん?降ろしてもらっていいですよ、私関係ないんで。」
「フフフ!ナナミは軽いですわ、まるで羽根のよう。だから大丈夫、気にしなくていいのですよ!」
私の願いはどうやら聞いてくれないらしい。
神様、それに古龍。やっぱり駄目だったよ、旅に出て早々これだ、やっぱり引き籠ってた方が良かったんだ。
日も暮れ始め、昼間の騒ぎが嘘のように静まり返り。一日の終わりを酒で〆る為に飲み屋が賑わいだす。
僕はクリスに連れられて、貴族区画の入り口にある城下町が一望できる場所に居た。一つ一つの住宅から少しずつ漏れ出す光が、より一層この景色を幻想的にさせる。
「今日は、私に付き合ってくださいましてありがとうございます。」
ぽつりとクリスは言ってきた。
僕としては、散々振り回された挙句。途中で睡魔が襲ってきて眠気と戦っていた記憶しかない。最後の最後でこの景色を見れたのは、どこか達成感に似た何かを感じた。
「だいぶお疲れの所を無理に付き合わせてしまったみたいで、本当にごめんなさいね。」
「この景色を見れただけでも満足です。それでは、私はこれで。」
早く宿に戻って寝てしまおう、そして明日の朝早くに買い物をしてさっさとこの国を出よう。これ以上面倒事はごめんだ。一度ハマると、どんどん抜け出すのが大変になるからな。
「よろしければ、このまま私の屋敷に来ませんか?宿に戻るよりは近いですし、食事も良い物が用意できますわ。無理をしてくださって付き合って頂いたんですもの、お礼がこの景色だけでは足りませんわ。」
今、確信した。僕はどうしてもこうなる運命で、逃れられないように定められている。
物は試しだ、宿に荷物があるからとか言ってみよう。うまく行けば僕はまだ大丈夫、逃れられる。
「それに、既に宿の方へは使用人に頼み荷物を屋敷に運ばせております。ご安心くださいませ。」
聞く前に言われた、先回りされていた。くそ!貴族じゃなかったら犯罪・・・いや貴族でも犯罪!
なんて強引なんだ!こうなったら本気で逃げるか?いやしかし、余計な波風は立たせたくない。くそぉ、憎い自分の運命力が憎すぎる!まるで蜘蛛の巣のように逃れられない、絡めとられて逃れられない。
「では、参りましょうか。」
貴族の屋敷が立ち並ぶ区画の中は、実際に歩いてみると迷路のように入り組んでいるように思えてくる。
実際にはただの錯覚なんだろうが、建物や塀などの不揃いな岩がそう見せているのだ。景観よりも防備を優先させ、敵に攻め込まれた時相手の進行を妨げ、地の利を生かし戦うために考えられたのであろう。この区画そのものが要塞化している。
そんな中をクリスは迷わずズンズン進んで行く、はぐれないようしっかり付いていく。はぐれたら最後、案内も無に目的地に到達する自信がない。
「もう間もなくですわ、あの角を曲がれば見えてきますわよ。」
クリスに言われてその角とやらを探すが、分からない。岩の凹凸とか天然の岩とかのせいで同化しているのか、本当に近くまで行かないと分からない。
そして、ようやく見えた入り口を見て。僕の表情はようやく動いた。
「フフフ、ようやく仮面が剥がせましたわ。改めて自己紹介いたします。女王の国、第一王女 クリスティーナ・ベルク。ようこそ、女王の国の王城へ」
ああ、なるほど。どうやら年貢の納め時らしい、まさか第一王女様だったとわ。この強引さどこかで引っかかっていたが、魔王戦争の時に絡んできたあの女王もそうだった。まったく子、孫までもこの性格か。
そしてハッキリ思い出した、あの女王はしつこかった。戦争中も、魔王を討伐し終わり、僕の魂が抜けてる期間にも、何度も見舞いと称して現れては、国に来いと口説きに来ていた。
嫌な予感がする。背筋に冷や汗が流れてるのが分かる。
「なぜ、ここに私を連れてきたのでしょうか。」
「そんなに怯えないでくださいませ。私のおばあ様、先代の女王になるのですが。そのおばあ様が先々代女王から、魔王戦争時代に「孤高の魔女」と呼ばれた魔法使いの事を、何度も聞いたそうなのです。危機が迫った時に突如として現れ助けられた、使う魔法が人間で到達できる限界を超えていた。そんなことを何度も、何度も。繰り返し教えられたそうなのです。そしてその話を私にも何度も、それはもう熱心に話してお下さいました。当時に魔道具で残した、写真なども見せてもらいながら。」
いや、普通に考えろ、寿命があるだろ!どう考えても僕には行きつかないだろ!
「先々代女王はこう仰っていたそうです。『あの子は人間では到達できないところに行っている、人間の物差しで考えちゃだめ、不老の魔法を使って生きてる可能性もある。』それが口癖だったそうですわ。そんな先代女王の発案で、わが王都に来る旅人の顔を写真と見比べ、似ている女性が現れたら報告が来る仕組みが作られました。」
マジか・・・しつこ過ぎるぜ先代女王様。そこまで惚れ込んでくれたのは嬉しいけど、自分の代で終わらせてて欲しかった。こんな長々とこの制度を残してる国も国だがな。
しかも、不老不死だろうとあたりを付けてそれが見事ハマった。僕が来たことにより確定させてしまった、いや上手く誤魔化せば修正は出来そうだが。フラグを120パーセントの勢いで回収しているこの状況では、誤魔化せる自信が全くない。
「・・・はぁ、どこら辺で確信に至ったのですか?」
「貴方様が私の魔法を見破った時です。あの魔法は、魔法の国の腕の立つ魔法使いでも見分けるのが困難な上級魔法なんですよ?あっさり見破られた時点で確信しました。それに、写真とうり二つですもの。わざわざあんな子芝居しなくても良かったですわ。」
「なるほど、それは失態でした。次は変装して入国するようにしましょう。でも、普通生きてると思わないでしょう?100年近くも前の話でしょう?よく今まで続けられましたね。」
「先々代女王も、おばあ様は確信していたみたいです。 必ずまた現れると。何でも各国にわざわざ出向き、過去の歴史書を読み漁ったら。魔法の国の歴史書に、不老不死の秘術で情報を秘匿し行方をくらました大罪人の、女性研究員の事件が乗っていたそうで。そんな情報もあったので確信したそうですわ。でも、お母様はあまり信じていなかったみたいですが。」
あ~、そこからか。まさかそんな風に残っているとわ、まあ英雄の国には残ってなかったと言うこととが分かったから良しとしようか。魔法の国へ行く理由が増えたな。
とにかくなんだ、長く生きていることがバレちゃった感じかな。全く、先々代の女王様たいしたもんだ。その執念に、僕は完敗です。
「お二方に見せて上げたかったわ、今の貴方のその表情。 ここではゆっくりお話も出来ません、中へ参りましょう。お母様にも会って頂きたいですし。」
「いや、良いのですか?流石に信用できないでしょう?それなのに、女王様にお会いするのですか?!」
おいおいおい、どうなってるんだよ。こんなことなら寄り道せずに真っ直ぐ向かうべきだった。この王都まで来るのに精神をすり減らし、寝れると思ったら神様に呼ばれて忠告を受けて寝るタイミングを失い、ご飯でリフレッシュの予定がクリスに連れまわされ、トドメは衝撃の事実に女王登場。
よし、逃げよう。どうなるかなんてこの際どうでもいい、この国に来なければいいのだ。持ってきた荷物?大丈夫だ、中身なんか無くても良いやつだ。縦断計画も中止!始めから無かった!大丈夫、事実スタートしてなかった!
よし、そうと決まれば。善は急げ。とばかりに転移魔法を使用する寸前に。
「もし、ここで逃げるのでしたらすべての国にあなたの事を公表します。魔法の国なんて血眼になって貴方を探し回るでしょう。より生活しずらく、面倒事が増えてしまいますよ?」
「・・・はぁ、どうなっても知りませんよ?王女クリスティーナ様。」
「よろしい!さあ、こちらです。案内致しますわ!」
拝啓、神様 古龍様 魔族の皆
笑いたきゃ笑いやがれ!古龍なんで今頃、笑いすぎて息できなくて死にそうになってるかもな!ちきしょー!皆の思ってた通りになりやがった!俺のイベント回避対策が本領発揮する前にボロボロになるまで攻略されたよ
もういい!こうなったら主人公やってやる!意外と気合い入れてやり始めると、運命のベクトルが変わるかもしれない!よし、やるぞ!作戦変更だ!!
この決意をしたのだが、絡みついた運命の糸は僕をしっかり縛りに来るのであった。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
次話も作成しているのですが、急展開になりすぎてびっくりしてます。どうすれば良いのか、日常の一コマとか簡単に書ける人って凄い。いや小説書ける人凄い。